【ホンダ ヴェゼル PLaY 3500km試乗】新型のコンセプトを体現した「PLaY」は若者ニーズを捉えるか[前編]

ヴェゼル e:HEV PLaYのフロントビュー。旧型の第1世代と同じくクーペSUVを名乗るが、まるでイメージの異なるクルマになった。福岡・平野台にて。
ヴェゼル e:HEV PLaYのフロントビュー。旧型の第1世代と同じくクーペSUVを名乗るが、まるでイメージの異なるクルマになった。福岡・平野台にて。全 29 枚

ホンダのサブコンパクトクラスSUV『ヴェゼル』で3500kmあまりツーリングする機会があったので、インプレッションをお届けする。

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ヴェゼルの第1世代が登場したのはプラットフォームを共有する第3世代『フィット』発売後間もない2013年末。3ナンバーながら全長4.3m台という扱いやすい車体サイズ、客室と荷室が絶妙にバランスされたパッケージング、クーペSUV風ルックなどで顧客の支持を大いに集め、普通車のヒット商品不足に悩むホンダにとって貴重な稼ぎのネタとなった。

現行の第2世代にバトンタッチされたのは2021年。成功作のフルモデルチェンジは失敗できないというプレッシャーで保守的なスタンスになりがちだ。ヴェゼルはプラットフォームが旧作のキャリーオーバーということで余計そうなっても不思議でないところだったが、第2世代ヴェゼルの開発陣は第1世代と同様にクーペSUVを標榜しこそすれ、たたずまい、仕様、チューニング、空間設計等、ほぼすべての要素を果敢に変えてきた。

エクステリアは後方に向けてキックアップするようなプレスラインをやめて水平感を強調したものに。パワートレインもハイブリッドはDCT(デュアルクラッチ自動変速機)+1モーター式パラレルから2モーター式のシリーズパラレルへ、純ガソリンエンジンは比出力がリッター90ps近い高出力型の「L15B」から燃費重視型の「L15Z」に換装された。

ヴェゼル e:HEV PLaYのサイドビュー。最初にスタイリングを見た時は窓面積が小さすぎないかと思ったが、実際に乗ってみると視界、採光性ともむしろ優れていた。ヴェゼル e:HEV PLaYのサイドビュー。最初にスタイリングを見た時は窓面積が小さすぎないかと思ったが、実際に乗ってみると視界、採光性ともむしろ優れていた。

ロードテスト車はシリーズの中で唯一グラストップを装備する「e:HEV PLaY」。テストドライブは東京~鹿児島周遊で往路は中山道~中部山岳地帯~山陰ルート、復路は山陰から東海道に抜けるルートを取った。総走行距離は3550.5km。道路比率は市街地2、山岳路を含む郊外路6、高速2。エアコン常時AUTO。

論評に入る前にヴェゼルPlaYの長所と短所を5つずつ箇条書きにしてみる。

■長所
1. 前席と後席の間で主従関係が感じられない独特の空間デザインが心地良い。
2. 広大なグラストップと明るいトリムカラーの合わせ技で車内は開放感抜群。
3. 電気モーター駆動の滑らかさが前面に出た気持ち良いドライブフィール。
4. ボンネット前端の見切りが良く車両感覚がつかみやすい。
5. 標準装備のもので十分楽しめるオーディオシステム。

■短所
1. 乗り心地の滑らかさでは『フィットクロスター』に負ける。
2. 絶対的には十分に良いが、欲を言えばもう一息伸びてほしい燃費。
3. 加速力は旧型のDCTハイブリッドモデルから後退。
4. 荷室の形状は理想的なスクエア形状だった旧型からやや平べったいものに。
5. ホンダコネクトはメニューが貧弱で看板倒れの感。

◆第2世代ヴェゼルのコンセプトをまんま体現したグレード「PLaY」

山口・須佐の高山(こうやま)を行く。かつては神山と呼ばれた修験道の地だけに道は細い。ヴェゼルの車両感覚のつかみやすさは有り難かった。山口・須佐の高山(こうやま)を行く。かつては神山と呼ばれた修験道の地だけに道は細い。ヴェゼルの車両感覚のつかみやすさは有り難かった。

ではインプレッションに入っていこう。高効率パッケージングとクーペルックを併せ持つ小型SUVというキャラクターの第1世代から大きく路線変更した第2世代ヴェゼル。PLaYはその中でも若年層ユーザーの取り込みを狙った実験的な要素の強いグレードだが、実際にドライブしてみるとこれがなかなか気分爽快。若者云々は関係なく、PLaYこそが「AMP UP YOUR LIFE」、すなわち人生の気分をアゲアゲにするという第2世代ヴェゼルのコンセプトをまんま体現したグレードであるように思われた。ヴェゼルにはPLaYを含めてグレードが4つあるが、AWD(4輪駆動)必須というユーザーでなければ、個人的には断然PLaYをおススメしたいところである。

何がそんなに気分を爽快にさせたかというと、室内の開放感の高さだ。広大な面積のデュアルグラストップを備えており、採光性が非常に良い。メタルトップだと車内に差し込む光の多くは反射光。屋根からダイレクトに入る光は色温度がひと味違う。そしてその光を受けるインテリアトリムがこれまた光を反射する明るい色で、黒一色の内装と比べると圧迫感が格段に少ない。

昔はグラストップorオープントップ+明度の高い内装というクルマはそれほど珍しいものではなかった。が、ここ10年ほどで両者を併せ持つクルマは輸入車も含めて激減し、今日ではそういう組み合わせが可能なモデルのほとんどは高級車だ。が、クルマのユーザーは本当に皆、暗い室内を好んでいるのだろうか。住宅に関しては室内をできるだけ明るくしたいというのが基本ニーズで、建築技術の発達もあって窓面積を大きく取るのは普通のことになっているし、天窓もよく装備される。室内の壁紙に黒を選ぶ人もごく少数派だろう。

グラストップはPLaY専用装備。ヴェゼルの他グレードとまったく雰囲気の異なるクルマに。グラストップはPLaY専用装備。ヴェゼルの他グレードとまったく雰囲気の異なるクルマに。

クルマの場合、明るい内装だと汚れが目立つと考えるユーザーが多いのは事実で、クルマの内装に暗色が多い理由のひとつとなっている。が、近代的な住宅で育った若年層は汚れたらこまめに綺麗にすればいいというライフスタイルに慣れている。ここらでひとつ明るい内装を再提案してみようというのは、その成否は別にしてトライとしては悪くない。

もう一点、室内の空間設計として面白く思われたのは、前後席の序列感が希薄なことだ。通常、クルマは前席優先、後席優先のどちらかに偏るものだが、ヴェゼルPLaYはその偏りが非常に小さい。南九州エリアで4名乗車でのパーティドライブを試したが、前席と後席の分断がなく、常に4人が輪になっているように感じられたのが印象的だった。この“四民平等”感も無意味に序列をつけるのを嫌う若年層に好まれそうな特質と言える。

◆新世代の消費者ニーズを捉えるためのトライの第一歩

前席。明るい色のシート地やトリムを持つSUVが国産車、輸入車を問わず少なくなっている中、PLaYの内装はエキゾチックにすら感じられた。前席。明るい色のシート地やトリムを持つSUVが国産車、輸入車を問わず少なくなっている中、PLaYの内装はエキゾチックにすら感じられた。

これらはPLaY限定の特質だが、純粋なハードウェアも第1世代に比べて乗る人への優しさ重視に転換された。旧型の、とくに後期型はハンドリングに関して非凡なものを持っており、ワインディングも結構ビシビシ走れていたのだが、ロングドライブ耐性については正直、高くなかった。が、第2世代はロングドライブもバッチリで、東京~鹿児島のドライブを難なくこなせた。また、Aピラーの傾斜やドア開口部上端のディメンションが見直されたことにより、ルーフは低くなったにもかかわらず乗降性も向上した。

一方、スポーティフィールは第1世代から少なからず後退。加速はDCTハイブリッドに比べてかなり遅く、ハンドリングも第1世代の「RS」のようにステアリングの舵角とロール角がしっかり比例するような感じではなくなった。が、この点についても開発陣がどんなクルマもスポーティでなければならないという思い込みから逃れたととらえれば、前向きなチューニングと解し得る。注文があるとすれば、せっかくおっとり型の味にしたのだから滑走感をもう一息上げてほしいということくらいだ。

自動車業界が混迷の度合いを深める今日、自動車メーカーはどこも若年層の取り込みに躍起になっているが、どうすればいいかという回答はまったく見えていない。自動車メーカーにとって難しいのは、生まれた時から豊かな物質文明の中で育ってきた若年層には上級感、クラス感、過剰な高性能といった古典的な価値観がまったく響かないということだ。

ヴェゼル e:HEV PLaYのフロントエンド。ヴェゼル e:HEV PLaYのフロントエンド。

筆者は科学や音楽の仕事で大学生や20代の若年層と話をすることがよくあるが、ハッキリ言って彼らはこと消費に関しては昭和生まれとは比べものにならないくらい賢い。自動車に関心がある人であっても樹脂のダッシュボードに木目やカーボンのマテリアルを貼り付けて高級でございなどというハリボテ戦法にはまったく引っかからないし、スマホを手足の如く使いこなしているので自動車メーカーが浅知恵で作ったクローズドなコネクトサービスは不便なうえに非民主主義的だと思っている。

彼らが求める豊かさは物質的なものではなく、時間である。どこであれ、何をやるにせよ、過ごす時間が自分にとって素晴らしいものであるなら、それについては結構威勢よくお金を出す。そうでないものには冷淡だ。そして、その見極め能力に優れている。クラス、上質、高性能という区分けから離れて移動空間の価値を出そうとしたヴェゼルPLaYは、完全にはほど遠いにしても、雲を掴むような新世代の消費者ニーズを捉えるためのトライの第一歩としては大いに評価できると思う。ヴェゼルに限らずそういうトライを続けていれば、若年層に無理やり古典的価値観を植え付けるより有意義な道をそのうち見出せるかもしれない。

◆改良型プラットフォームの操縦性、乗り心地は

PLaYはFWDのみだが、最低地上高は十分にあるためちょっとしたラフロード程度なら何の気兼ねもなく走れる。PLaYはFWDのみだが、最低地上高は十分にあるためちょっとしたラフロード程度なら何の気兼ねもなく走れる。

項目別にもう少し深堀りしていこう。第2世代ヴェゼルのプラットフォームは第1世代の改良版。ホイールベースは第1世代と同じ2610mm、サスペンション形式も前ストラット、後トーションビームと変わらないが、後サスペンションのストローク拡張、前サスペンションもサイドフォースキャンセリングというショックアブゾーバーに摩擦増大の原因となる横方向の力が加わりにくいスプリングにするなど、ファインチューンを受けている。ボディももちろん強化されている。

その改良の効能だが、最もポジティブに感じられたのは乗り心地。ヒット作となった第1世代だが、乗り心地が悪いという弱点を抱えていた。デビュー間もない初期型でロングドライブを試したときはこれからチューニングを行うのかと思うような雑な乗り心地で、後期型も完全には解消されなかった。第2世代はそれと比べると雲泥の差で、十分に快適と言えるラインはしっかりクリアしているという感があった。

とくに良くなったのはサスペンションの細かい上下動が数ミリにとどまる良路での乗り心地で、大変滑らか。一番の得意の巻は新東名など建設年次の新しい高速道路のクルーズで、国産BセグメントSUVの中では滑らかさはトップ。舗装の老朽化が進んだコンディションでもひび割れのように段差が小さい破損に対してはそこそこ良い応答性を示した。

その滑らかさが崩れるのは舗装の補修による盛り上がり、ピッチが短く深めのアンジュレーション(路面のうねり)通過時など、ホイールの動きが速く、かつ振れ幅が大きくなるシーンで、ブルつき、バタつきが急に増える。振幅が小さい場合でもワインディングロードによく施されている減速舗装など、短い周期でダンダンダンと入力があるようなところではスッキリといなすところまでは行けていなかった。

良路で見事な低フリクションぶりを示すのに悪路でそれが崩れる原因として考えられるのは、このシャシーの能力に対してホイール+タイヤの重量が大きすぎるか、タイヤとのマッチングがイマイチであるか、あるいはその両方が影響しているかだ。

タイヤは225/50R18サイズのミシュラン「プライマシー4」。車重に対するグリップ力は十分以上。タイヤは225/50R18サイズのミシュラン「プライマシー4」。車重に対するグリップ力は十分以上。

ヴェゼルPLaYのタイヤは225/50R18サイズのミシュラン「プライマシー4」。プライマシーはサイドウォールがしなやかという評価の多いタイヤだが、筆者の試乗体験を振り返ると本当にそうか?と若干疑念を抱く。ひょっとするとケーシング剛性などで車種専用チューンが施されている可能性もあるが、コーナリング時のねじれ感覚からしても変形を抑えるほうを優先させているように感じられた。225/50R18+18インチアルミホイールのバネ下重量も結構なものなので、その影響も無視できない。

ただ、国産BセグメントSUVの競合モデルに比べて崩れが大きいというわけではない。スズキ『エスクード』は未試乗なのでわからないが、それ以外のライバルはもっと悪化する。筆者がこの点をあえて厳しく見るのは下位のクロスオーバーモデル『フィットクロスター』AWDの存在。フィットクロスターの滑走感は乗ってみると驚愕するほどで、微小入力から大入力までをサスペンションとボディでしっかり受け止めつつ、雑味になる振動を後に残さないという感じだった。

ホイールの重いヴェゼルをそれより良くするのは難しいかもしれないが、頑張って同等に持って行ってほしい。そうなれば乗り心地についてはケチのつけどころがなくなるだろう。現状でも第1世代のように大きな揺れを無理やりショックアブゾーバーで止めるような揺すられ感は解消しているので、ロングドライブで身体に違和感を覚えやすいといったことはもはやない。

山口・響灘の福徳稲荷神社にて記念撮影。山口・響灘の福徳稲荷神社にて記念撮影。

一方、ハンドリングは第1世代から少なからず後退した。比較対象は前出の後期型RSである。RSは山岳路におけるハンドリングについては非凡なものを持っており、コーナリングでステアリングを切り増していくと、横Gの増大にぴったり比例するようにロール角が深まっていくという印象だった。

第2世代も立派なタイヤを履いているので絶対的なコーナリングスピードはあるのだが、ステアリングインフォメーションとロールの体感のしやすさの両方があいまいで、結果的にナマクラに感じられるという印象だ。ただ、SUVでそんな攻めた走りをするというのは本来の使い方ではない。乗り心地向上のメリットのほうを取るのが正解ということなのだろう。

◆標準装備の「ホンダセンシング」、「ホンダコネクト」の使い勝手は

ヴェゼルは全車ステアリング介入ありのADAS(先進運転支援システム)「ホンダセンシング」を標準装備している。このシステムは一時期、センターライン乗り越えなどの誤認が多発するなどチューニングが乱れたことがあったが、ヴェゼルではその問題は解消しており、基本的には快適に使うことができた。

前車追従クルーズコントロールは十分によく機能した。前車の車速の変化に対するロバスト性は昔に比べると飛躍的に向上しており、神経質に車速がコロコロ変わるということはない。もちろん3段階切り替えの車間距離を一番短くしていると受ける影響が大きくなるので、基本的には中距離、燃費重視の場合は長距離に設定しておくのが吉だ。ちなみにホンダは『シビックハイブリッド』で隣のレーンからのクルマの割り込みなどを有効に検出する新システムを投入しており、近い将来ヴェゼルもアップデートされる可能性がある。

車線認識は複数車線がある高速道路やバイパスなどでは高い検出能力を発揮する。また車線維持のためのステアリング介入も強固で、わざと車線に近づいてみるとかなりしっかりした反力を伴って車を車線中央に戻した。ホンダセンシングに限った話ではないが、苦手分野はセンターラインにポールやワイヤーガードレールが設置されている対面通行区間で、往々にして失探する。道路の側もADASが機能しやすいような車線の引き方など、作りをアップデートすることが求められよう。

ホンダコネクトのディスプレイはノングレア処理が優秀。夕日を直接映し込んでもまだコントラストは失われていない。ホンダコネクトのディスプレイはノングレア処理が優秀。夕日を直接映し込んでもまだコントラストは失われていない。

ヴェゼルPLaYにはテレマティクス「ホンダコネクト」を使えるカーナビ機能つき液晶ディスプレイが標準装備されている。このディスプレイは画面サイズはそれほど大きいわけではないが、ノングレア処理が優秀で外光がいろいろな方向から差し込んでも反射で見えなくなるということがなかった。カーナビはとくに優秀というわけではないが、経路誘導、有料道路、無料道路の選択のしやすさ等々、ホンダ特有のユーザビリティは反映されていた。

ホンダコネクトは車内Wi-Fi、ナビタイムその他のベンダーと連携した各種アプリなどからなるコネクテッドカー第1世代のサービスであったが、今年3月でアプリセンターの運用を停止した。車内Wi-Fiは1GBあたり330円で利用可能。Spotifyのストリーミング再生で利用してみたところ、通信料は1時間あたり約14円であった。が、Wi-Fiサービスについても一部メーカーで廃止の動きが出ており、ホンダコネクトもいつまで続くかは不透明だ。

最近はスマホに通信量無制限プランなどが広がっており、自動車メーカー系のコネクトサービスは緊急通報などクルマ独特の分野を除き、押しなべて苦戦している。もともと移動体通信やインターネットサービスは人間の生活に完全密着しているスマホのほうが圧倒的に優位。自動車メーカーは自動運転の管制やエンターテインメントサービスなどでメガプラットフォーマーの下位に組み敷かれるのを嫌い、クルマを起点としたコネクティビティの普及に懸命だが、プラットフォーマーの膨大なビッグデータに浅知恵で対抗するのは不可能。せっかく装備したホンダコネクト対応モジュールが無駄にならないよう、サービス設計をやり直して早急に次のプランを提示していただきたいところだ。(後編に続く)

響灘の日没をバックに記念撮影。響灘の日没をバックに記念撮影。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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