中国の自動車のスマート化と車載センサーのグローバルトレンド…沖為工作室 CEO 沖本真也氏[インタビュー]

中国の自動車のスマート化と車載センサーのグローバルトレンド…沖為工作室 CEO 沖本真也氏[インタビュー]
中国の自動車のスマート化と車載センサーのグローバルトレンド…沖為工作室 CEO 沖本真也氏[インタビュー]全 5 枚

来たる6月2日、オンラインセミナー「車載エクステリア&インテリアセンサー最新グローバルトレンド・各社の最新動向」が開催される。

セミナーに登壇する沖為工作室合同会社 Founder CEOの沖本真也氏は、製造業界(自動車Tier1メーカー含む)や市場調査業界で培ったネットワークを生かし、自動運転、車載用バッテリー、5G(6G)、マイクロLEDなどの先端技術の市場分析をおこなっている。

セミナーでは、以下のテーマについて分析する予定だ。

1.車載エクステリアセンサー市場動向
(1)市場背景と上海モーターショー(Auto Shanghai 2023)サマリー
(2)センサシステム/センサーフュージョン開発トレンド
(3)カメラ、ミリ波、4Dイメージングレーダー
(4)車載LiDAR市場
 ①LiDAR製品の広がりや低コスト化の動向
 ②LiDAR車載採用例およびセンサーレイアウトなど

2.車載インテリアセンサー市場動向
(1)市場背景と上海モーターショー(Auto Shanghai 2023)サマリー
(2)ドライバー・モニタリング・システム (DMS)
(3)乗員モニタリング・システム(OMS)
(4)HVACシステム
(5)ヒューマンマシンインターフェース(HMI)システム

3.関連企業動向
・Valeo
・Denso
・Continental
・Cepton
・Luminar
・SenseTime
・Huawei
・Nvidia
・Texas Instrumentsなど

4.まとめ
(1)エクステリア&インテリアセンサーの在り方
(2)市場環境の今後の展望

セミナーに登壇する沖本氏に見どころを聞いた。セミナーの詳細はこちら。

■車載センサーはインテリア・エクステリアともに拡大

沖本氏はまず、車載センサーの多様化に言及した。運転支援機能の高度化によって車載センサーの市場が大きく拡大しており、エクステリアセンサーだけでなく、車内モニタリングやインフォテインメント用のインテリアセンサーも多様化が著しいと指摘する。

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「インテリアのセンサー技術は多様化し進化を遂げています。ドライバーモニタリングや乗員モニタリングなどが進展し、市場の成長が目立っています。

幼児の置き去り防止に対する意識も高まっており、欧州や米国、日本でもこれらが義務化される動きも見受けられます。センサーを利用したインテリジェント化が進められています。」

「エクステリアのセンサーについては、現在LiDARの搭載事例が増えています。初期のLiDARはメカニカルな構造が主流でしたが、数年前から全固体のフラッシュ型が増え、現在では半固体型が多く見られます。

半固体型は、小型のミラーを用いて動作するもので、中国市場では、この技術に関する開発がスタートアップ企業により進められており、車のセンシングを手がける企業だけでなく、DJIのスピンオフ企業Livoxなども参入しています。」

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「LiDARについては低コスト化にも言及する必要があります。初期のコストは1000ドル以上でしたが、最近ではファーウェイが200ドルのLiDARを発表するなど、価格が下がりつつあります。この結果、1台の車に1つしか取り付けられなかったLiDARを、今では2つや3つといった複数取り付けるのがトレンドになってきています。

NIOのET7では、Innovusionが開発した「Falcon」と呼ばれるLiDARが1つ搭載されています。また、理想自動車のET128にはHesaiのLiDARが1つ、小鵬自動車のG9にはRoboSenseのM1が2つ搭載されています。RoboSenseは価格競争に優れており、大量生産の際には価格を下げる傾向があります。ライジング自動車は、Luminarの「Iris」を使用しており、これも1つ搭載されています。」

「またLiDARの取り付け位置については、フロントウィンドウの上部が新たなトレンドとなりつつあります。これはルーフトップとも呼ばれる位置で、現在ではここに取り付けることが主流となりつつあります。」

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「LiDARの採用事例が急速に増えている中国では、半固体型が主流になっています。中国では混合固体とも呼ばれるものです。これは可動部を最小限に抑えたタイプで、小型のミラーやポリゴンミラーなどを使用します。

Luminarの製品もこの混合固体タイプに分類され、小型のミラー部品を使用しつつ、他の部分は固体となっています。固体と小型のメカニカル部分を組み合わせたものが混合固体で、現在の中国市場ではこういった製品が多く見られます。」

■上海モーターショーの最新事例

先月開催された上海モーターショーでも、センサーに関する提案が数多く見られた、中でも注目すべき展示を沖本氏は説明する。

「マレリはマイクロLEDを利用したヘッドランプの開発に取り組んでおり、この分野でLiDAR、ミリ波レーダー、カメラなどのセンサーをヘッドライトやテールランプに統合するソリューションを展開しています。マレリは様々なシステムの供給元としての地位を持ち、制御系も開発しているため、その能力は特筆すべきものです。」

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「さらに、マレリはXenomatiXと共にLiDARソリューションの分野で提携を進めています。また、マレリはデジタルコックピットも出展し、Qualcommの最新世代Snapdragonコックピットプラットフォームを基にした制御システムを開発していました。」

「次に、中国のSenseTimeについてです。彼らはAI技術を前面に押し出し、それを車内に導入したいという志向があります。SenseTimeはAIのバーチャルアシスタントのデモを行い、画像認識、AI音声認識、自然言語処理を統合したインテリジェントキャビンを提案しています。」

「さらに、ドライバーモニタリングシステム、乗員モニタリングシステム、キーレスエントリー機能もあります。また、彼らは車載ディスプレイに人間のアバターを表示する仮想コンパニオンのソリューションも提供しています。」

「また、Fusionrideが展開するのは4Dミリ波レーダーです。これは4Dイメージングレーダーとも呼ばれ、車載技術としてミリ波レーダーが広く採用されていますが、4Dミリ波レーダーはまだ分布が不連続であり、完全な物体形状を再現することができないため、すぐに普及するものではありません。それでも、新興技術として注目されています。彼らはまた、病院や介護施設向けの監視レーダーも展開しており、これは高齢者が入居する施設で利用されます。バイタルサインの監視が可能であり、この技術が車のドライバーモニタリングに応用可能であると紹介されています。」

「スペインの会社、アントリンも興味深い展示を行っていました。彼らはドライバーモニタリングシステムとキーレスアクセスシステムを提供しています。バイオメトリクスを利用して車内へのアクセスを可能にするキーレスアクセスシステムです。」

■エアコンの効率化がさらに進む

エアコンについては消費電力が高いため、これまでのように単純な制御だけでなく、AIを活用したきめ細かな効率化が進んでいると沖本氏は指摘する。

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「HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)の技術は、自動車の快適さや安全性、エネルギー効率に直接影響を与える重要な要素です。新世代のHVACシステムは、乗員の位置や動きを特定して、空調の出力を調整します。例えばテスラの特許は、乗員の顔の位置を追跡し、風が常に顔に当たるように調節するものです。」

「エネルギーマネジメントの観点からもHVACシステムの重要性が増しています。特に、バッテリーの温度管理は重要な課題となっています。バッテリーが過熱すると性能が低下し、寿命が縮まる可能性があるため、適切な冷却が必要です。逆に、外気温が低い時は、バッテリーを適切な温度に保つために加熱が必要となる場合もあります。」

■中国で自動車のスマート化が進む背景

ITやAI技術をセンサーと組み合わせて、新たなベネフィットを提案する試みが、特に中国を中心に活性化しているように見える。この状況について、中国の自動車産業の動向に詳しい沖本氏はこのように分析する。

「日本や欧米の自動車産業と中国のそれとでは、業界構造や競争環境、経済環境などに大きな違いがあります。日本や欧米では、長年にわたり事業を展開してきた自動車産業があり、その中で確立されたピラミッド型の産業構造が存在しますが、これらは一方で、新しい技術やアイデアを導入する際の障壁ともなり得るわけです。」

「特に、Tier1やTier2といったサプライチェーンの構造が固定化されていると、新規参入者やイノベーターが直接自動車メーカーと取引する機会が少なくなる可能性があります。」

「一方、中国では自動車産業が比較的新しく、産業構造がまだ固定化されていないため、新規参入者やイノベーターが自動車メーカーと直接、商談や交渉をする機会が多いように思います。

また、開発サイクルが短いことも影響しています。例えばBYDは2年のサイクルで開発を回しています。これは、新しい技術を次々に提案していかないと、競合メーカーが非常に多く、競争に勝ち残れないでしょうし、株価にも影響します。」

「なにしろ、中国政府や地方自治体の強力な支援がある一方で、成果を出すプレッシャーも強いです。結果が出ないと補助金を打ち切られたり、あるいは会社をたたむことにもなりかねません。例えばNIOは何度か倒産の危機を迎えながらも、政府や安徽省合肥市の支援でここまでやってきましたが、支援の条件としてかなり厳しい業績目標が課せられています。また現状は赤字体質から転換できず、いつどうなるか分かりません。もっとも彼らはテスラの上海工場誘致を優先したと解釈されている上海市から支援を打ち切られるということも過去に経験しており、逆境を乗り越えてきたタフさがあるのも特徴です。なんだかんだありつつ、安定した資本で事業を行える日米欧のメーカーとは競争環境が少し違います。そういう厳しい背景もあって、新しい技術やアイデアの導入を促進し、投資してくれる人たちの期待に応え、事業を継続させようとしているとも言えるでしょう。」

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セミナーでは、ここで言及した以外のテーマについても、沖本氏の知見を交えた分析を聴講することができる。セミナー詳細はこちらから。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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