道路の吹雪視程の判定をAIで自動化、約9割の精度に成功

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降雪や吹雪による視界の悪化は、交通事故や路上の車両滞留に繋がる恐れがある。視界の測定は障害の予防に有効だが、判定は人の目視に頼っており、問題があった。これをAIで自動化する実験において約9割の精度を達成、将来的には自動運転技術への応用も期待される。

◆見通しの悪化を自動判定する

気象用語で、大気の混濁の度合いを示し、水平方向に見通せる最大の距離のことを「視程」という。吹雪視程の判定をAIで自動化する実験を行なったのはSpectee(スペクティ)と日本気象協会。SpecteeはSNSや気象データ、カーナビ情報や道路カメラなどのデータから災害・リスク情報を解析し、被害状況の可視化や予測を行なっている会社だ。

実験では、道路上に設置されたカメラで得られた画像を基に、AI解析を用いた視程の判定において、人間による目視での読み取り結果との合致率が約90%という、高精度な判定に成功した。Specteeが6月1日に明らかにした。

◆人の目視による監視と判定には問題

現在まで道路の視程検知は、視程計の設置や、道路上に設置したカメラ画像を人が監視することによって行なっており、大雪や吹雪による視程障害が発生する中、道路管理者によるカメラ画像の目視に頼らざるを得ない。また、目視による判定は人によって評価(結果)が異なるという課題もある。

Specteeの取締役CDOでSpectee AI 研究所所長の岩井清彦氏は「少子高齢化が進み、人手不足が問題となるなか、AIによる業務効率化や労働力不足の解消は喫緊の課題だ」とコメント。日本気象協会北海道支社の丹治和博統括主幹は「降雪や吹雪による視程障害は局地性が強く、時間変動が激しい。道路管理者が視程障害の発生箇所を的確に把握し、適切な対応を行なうことは困難」と説明する。

こうしたことを背景に、スペクティと日本気象協会は2019年から協力、カメラ映像を活用して、AIによる視程判定の実証実験やサービス開発に取り組んできた。

視程検知のイメージ視程検知のイメージ

◆技術開発の結果

検証では、東北・北海道地方の7台のカメラから得られた画像をAIが解析し、視程を判定。日本気象協会の職員による目視での読み取り結果と照らし合わせた。この時の視程は、見通せる距離を50m未満、100m未満、200m未満、300m未満、300m以上と分けた「級別視程」を設定した。

2022年度冬期にAIによる視程判定の結果、人間による目視での読み取り結果との合致率が全体で88%と高精度に判定できるた。1階級の差を許容すれば合致率は99%の高精度となる。また、降雪時や吹雪時だけでなく、濃霧発生時も良好な精度で視程を検知できることが確認できた。

Specteeは、この技術を活用することで、広域的な道路の視程状況を短時間で把握することができ、より網羅的な状況把握や適切な注意喚起が可能になると考える。さらにSpecteeは今後、この技術を道路の安全や防災に関わる事業者に活用してもらい、自動運転技術への応用や吹雪視程予測への精度向上、吹雪による視程障害状況解析などへの貢献をめざす。

《高木啓》

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