2024年のF1日本GPは4月5-7日…春開催への移行、その背景と生じる変化

2022年F1日本GP(鈴鹿)の模様。
2022年F1日本GP(鈴鹿)の模様。全 7 枚

7月5日、来季2024年のF1日本GP(鈴鹿サーキット)が4月5~7日の開催予定であることが公表された。秋開催が通例だったが、春開催へと移行。その背景と、生じる変化等について考える。


◆物流面における環境配慮でF1がカレンダー見直しを実施

F1は7月5日、FIAワールド・モータースポーツ・カウンシルの承認を受けた来季2024年シーズンの開催予定を発表した。そのなかで日本GPが通例の秋開催から春に移行することが公式に明らかなものとなり、同日、開催地である鈴鹿サーキットの運営会社「ホンダモビリティランド」からも同様の発表があった。

2024年F1日本GPの春開催移行は昨今、噂以上のレベルで語られてきていたが、移行の主目的はF1の環境問題への取り組み、それによってF1等々の持続可能性をさらに高めることにあった。ホンダモビリティランドの代表取締役社長・斎藤毅氏のコメントに、その旨が集約されている。

「F1から世界転戦にともなう物流における温室効果ガス排出量の削減を踏まえた高効率な開催スケジュールの提案があり、日本GPの開催日程に関して協議を進め、持続可能な未来づくりを目指す当社のサステナビリティ基本方針にも合致することから、2024年の日本GPを4月に開催することに合意いたしました」

発表された2024年のF1日本GP開催日程は4月5~7日。前戦は3月22~24日のオーストラリアGPで、次戦は4月19~21日の中国GP(5年ぶり復活予定)となる。また、アゼルバイジャンGPが今季の4月開催から来季は9月開催に移るなどの動きもみられている。

◆3月30日に東京でフォーミュラE、翌週に鈴鹿でF1

2024年F1日本GP開催の前週の土曜、3月30日にはフォーミュラEの東京初開催戦が予定されている。FIA世界選手権レースが2週末連続で日本で開催されることになり、互いの注目度を一層上げる効果が期待できそうだ(この“連戦化”は物流面の話とは関係しない。両者はまったく別個のシリーズ)。

もちろん観戦者の“懐事情”等々を考慮すると、日本での国際ビッグイベント開催はなるべく離れた時期の方がいい、ということもあるが、2024年に関してはF1が春移行、フォーミュラEが初開催とそれぞれ話題性アップの要素を独自に有しており、相乗効果もさらにアップさせることが期待できるのではないだろうか。

そもそも2022~2023年の状況でいえば、F1、WEC(世界耐久選手権)、WRC(世界ラリー選手権)の日本開催戦がすべて秋(9~11月)に集中している。これが2024年以降、春にF1とフォーミュラE、秋にWECとWRCという格好で分散・定着していくとするならば、大局的に見て理想的といえるかもしれない。

◆春開催移行で台風のリスクとはほぼ決別

日本でのF1開催といえば秋、という印象が圧倒的に強いわけだが、日本GPとパシフィックGPの年間2開催が実現していた1994~1995年当時、1994年にはTIサーキット英田(現・岡山国際サーキット)でのパシフィックGPが4月に開催されている(翌1995年のパシフィックGP=TIは阪神淡路大震災の影響で春開催の予定が秋に変更となり、日本GP=鈴鹿との連戦日程になった)。

日本GPの春開催移行は台風危機回避の面からも再三、議論(噂)になっていた。実際、鈴鹿でのF1日本GPは2019年に台風の影響で土曜の日程をキャンセルとする措置が採られるなど、気象面の影響を多々受けてきた経緯がある。3年ぶり開催の昨年(2022年)も決勝レースが雨で大混乱した。

春開催なら台風のリスクはほぼ皆無といえよう。ただ、日本(鈴鹿)のそもそもの気候を考えた場合、雨の可能性を確実に排除できるものではないだろう。気象学的なことはわからないが、大雨のリスクは秋でも春でもさして変わらないかもしれない?

それでも、台風が来る可能性がほとんどなくなるだけでも観戦者にとっての大きな懸念材料が消えることは確か。興行としてはプラスの開催時季変更といえそうだ。

◆チャンピオン争いという興味を欠く寂しさは…

しかしながら、興行の“興味”というところではマイナス面の危惧も存在する。鈴鹿での日本GPにはシーズン終盤の一戦としてのイメージが定着しており、そこには激化するチャンピオン争いを見られる可能性があること、その決着さえも鈴鹿で見られるかもしれないことが含まれており、春開催、つまりシーズン序盤への移行でこの点がマイナスに作用することは否めない。

鈴鹿でのF1日本GP開催は1987年が初回で、2006年までと2009~2019年、2022年という長い歴史が重なっているが、特に開催初期は劇的なチャンピオン争いの決着が鈴鹿で続き、それも当時のブーム過熱化の構成要素だった。アイルトン・セナとアラン・プロストの3年連続の激闘(1988~1990年)などは今も語り草だ。

近年は年間レース数が増加し、鈴鹿より後ろのレース数も増えたことにともなって、鈴鹿決着があるとすればタイトル争い独走のケースのみ、とはなっていたが、昨季2022年にマックス・フェルスタッペン(レッドブル)の2年連続王座が鈴鹿で決まるということがあったばかり。春開催移行による、この面での寂しさは消すことが難しそうだ。

そうした意味からも、日本人ドライバーの活躍という不変の重要興味事項が一層、大事になる。F1参戦3年目の今季、成績以上に評価を上げる走りを演じている角田裕毅(アルファタウリ)や、今季のFIA-F2でチャンピオン獲得の期待がかかるF1候補生・岩佐歩夢、F1で彼らへの応援ができる“状況”が続くことがますます肝要になるだろう。

◆チケット発売は今年12月頃の予定

発表された来季2024年のF1開催カレンダーは全24戦で、開幕戦バーレーンGPは2月29日~3月2日という日程。F1の基本的な開催曜日は金曜~日曜だが、このバーレーンGPと翌週のサウジアラビアGP(3月7~9日)に関してはラマダンを考慮した現地土曜決勝の日程となっている(今季の現地土曜決勝はラスベガスGPのみ。同GPは来季もその予定)。

4月5~7日の日本GPは第4戦の位置付けだ。鈴鹿サーキットは各種チケットの販売予定を2023年12月頃としている。

そして2024年最終戦アブダビGPの日程は12月6~8日。F1は悲願ともいえる史上初の年間24戦開催実現を目指す(今季2023年も当初は24戦の予定だったが、中国GPの中止で開幕前に23戦に減り、その後、5月のエミリア・ロマーニャGPが直前の自然災害の影響で中止に。現段階で実質全22戦と考えられている)。

カレンダーにはまだまだ“地域パッケージ化”が進んでいない面も感じられる。F1の社長兼最高経営責任者であるステファノ・ドメニカリ氏(元フェラーリF1チーム首脳)は「一度にすべての変更をすることはできないが、(各レースの)主催者とともに今後も正しい方向に進み続ける」とコメントしている。

なお、2023年のF1日本GPは9月22~24日に開催される。タイトル争いは今季もマックス・フェルスタッペンが独走中だ。昨季は鈴鹿後が4戦だったのに対し、今季は鈴鹿後の予定ラウンド数が6ある等の条件から昨季以上に難しいとは考えられるところだが、鈴鹿で王座を決められる可能性もあると思えるくらいの勢いと充実度を今のフェルスタッペンは有している。

2025年以降も日本でのF1開催が続くなら、それは春開催であり続けると考えるべきだろう。もし今年の鈴鹿でチャンピオンが決まるとすれば、それは当面日本では最後のF1チャンピオン決定の瞬間という貴重なものになる。

《遠藤俊幸》

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