次の100年に向けたセンチュリーを考えて…新型の開発責任者にインタビュー

トヨタ センチュリー
トヨタ センチュリー全 8 枚

【トヨタ センチュリー 新型】トヨタは同社の最高級車でショーファーカーの代名詞ともいえる『センチュリー』に新たなボディタイプを追加した。これまであった4ドアセダンは『センチュリーセダン』として継続販売し、新型車はセンチュリーと呼ばれる。トヨタではSUVとは呼ばない(呼びたくない)新型車がなぜ登場したのか、開発責任者に話を聞いた。

左から順にトヨタセンチュリー開発責任者の田中義和氏、トヨタ取締役・執行役員デザイン領域統括部長のサイモン・ハンフリーズ氏、トヨタ執行役員・副社長の中嶋裕樹氏左から順にトヨタセンチュリー開発責任者の田中義和氏、トヨタ取締役・執行役員デザイン領域統括部長のサイモン・ハンフリーズ氏、トヨタ執行役員・副社長の中嶋裕樹氏

◆なぜセンチュリーに新たなバリエーションが?

---:ストレートにお尋ねします。今回の発表会では散々聞かれたことでしょうが、なぜセンチュリーでこの形が必要だったのでしょうか。

トヨタMid-size Vehicle Company MS製品企画副部長ZS主査の田中義和さん(以下敬称略):やはりセンチュリーは、日本を代表するショーファーカーで、これまでもすごく大切な歴史がありますし、我々にとっては大事なクルマです。

トヨタ センチュリートヨタ センチュリー

我々が想定しているお客様はグローバルリーダーのような方々で、例えばトヨタの現会長のモリゾーさん、豊田章男のような方です。そういった方々からするとセタンのセンチュリーは、自分のお父さん世代のクルマだというお考えの方もいらっしゃるんですね。ではそういった方々は何をショーファーカーとして乗っているかというと、新しい『アルファード』などのミニバンの方がすごく多い。これはトヨタが次世代リーダーの方々の新たなニーズに応えながら、新しいショーファーカーのカテゴリーを作ったんです。

しかし、ショーファーカーは後ろにお乗りのお客様を映し出す鏡みたいなところがあります。その方がどんな方を見せる部分ですね。またその方々が乗り降りの時、例えばお出迎えの時とかお見送りの時とかに、その方をより優雅にお見せする、より品良くお見せする。そういう要素はすごくショーファーカーでは重要なんですね。それらを両立させたクルマを作りたいと考えました。

トヨタ センチュリートヨタ センチュリー

ですからこのセンチュリーでは乗り降りするときに背筋を伸ばしたまま、非常に美しく乗降していただけるという大きな特徴があるのです。

そして、まさに「センチュリーに新しい価値を与えてくれ」と、当時の社長(現会長の豊田章男氏)からのリクエストがありまして、我々はそれに対処して作ったのがこの形になったのです。

◆次の100年に向けたセンチュリー

---:それはセンチュリーでなければダメだったのでしょうか。

田中:これもまた難しいところなのですが、やはりセンチュリーというクルマは歴史もあり、トヨタにとってはすごく大事なクルマです。ですからこれからもセンチュリーをグローバルリーダーの方に選んでいただけるクルマにしたい。それはセダンをなくすという意味ではなくて、次の100年のためのセンチュリーをどうやっていくか。次の100年のためのセンチュリーですね。ですから、“センチュリーfor the next CENTURY”。次の100年を考えたときにセンチュリーがどうあるべきか。そういうところを考えるとやはり名前もセンチュリーである必要があったのです。

---:因みにSUVと呼んで欲しくないと聞きましたが。

田中:本当に我々はSUVを作るつもりで開発したわけではないんです。ショーファーカーの新たなニーズを追求した結果なんですね。アルファードやミニバンが出た当初は、あのクルマがショーファーカーになるということを、15年くらい前に想像された方っていらっしゃらなかったと思うんです。しかしいま、一旦アルファードに乗ったらもう他のクルマには乗れないという方も多くいらっしゃるくらいです。でも一方で正式な場所に行く、それこそ明治神宮などのオフィシャルな場所に行くときには乗れないといわれることもあるようです。実際に我々のお客様に伺いますと、そういったオフィシャルな場面においてはセンチュリーセダンにお乗りになる方やドイツのクルマで向かわれる。そういう意味において、現在のショーファーカーに求められる新たな要素である、まさにミニバンのような機能と広さを満たしながら、センチュリーと呼べる品格を持てるクルマ。そしてお客様をより輝かせて、より品位を高められるようなクルマを作りたいという思いなのです。

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◆センチュリーという個性

---:いまトヨタには『クラウン』というクルマがあります。これはトヨタの中のそれぞれのボディタイプのトップにこの名前を使っていくということが発表されています。そうするとこのクルマはどう位置づけられるのでしょう。

田中:そういう意味においては、このクルマは別格だと思うんです。トヨタにおける唯一無二のクルマですから。それはクラウンでもレクサスでもなく、やはりセンチュリーなんです。センチュリーという一つの価値、世界観なんです。そう思っていただけたら、非常にありがたいです。ですから、実はこのクルマにはどこにもトヨタというバッジがない。トヨタブランドでもレクサスブランドでもないんです。あえていうならばセンチュリーというしかないんです。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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