日本からインドへ、技術と時間とお金の貢献余地【インド・新自動車大国の素顔】

インド(イメージ)
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日本の終戦記念日8月15日は、インドでは独立記念日。恒例の世界遺産Red Fortからの演説でモディ首相は、インド政府が大規模に整備を進める都市間急行列車をさらっと“Vande Bharat Bullet Train”と紹介した。

これまで専ら日本との新幹線プロジェクトを意味する“Bullet Train”は、当初計画から大幅に遅れている。最高時速が半分の160km/hだとしても、国鉄の在来線の利用だとしても、「夢の超特急」のイメージをうまく取り込んで“Make in India”の急行にさりげなく重ねる技術は、日本人にはなかなか真似できない。

◆日本の技術で渋滞問題を解決できるか

これと前後して、「日本のMODERATO技術は悪名高いベンガルールの渋滞を解消できるか?」という記事が目についた。一般社団法人交通工学研究会の交通工学用語集によれば、MODERATOとは「Management by Origin - Destination Related Adaptation for Traffic Optimizationの略。道路交通管制センターにおいて、信号制御パラメータを交通状況に応じて自動的に計算、決定して更新する日本におけるプログラム形成制御の名称」とのこと。記事ではより簡潔に一般化して、感応式信号制御システムATCS (Area Traffic Control System) と紹介されている。

出展:money control「Can Japanese tech ease Bengaluru’s notorious traffic snarls?」
(https://www.moneycontrol.com/news/business/will-japanese-tech-ease-bengalurus-notorious-traffic-snarls-11114211.html)

「最新式の交通信号技術である日本のMODERATO」が2023年9月末までに市内28の交差点に配備され、これによりMG Road、Hosur Road、Old Madras Roadといったいずれも都心に至る主要幹線道路3路線の渋滞緩和が期待される、というのが一義的な期待。ただ、「しかしながら、」と続けられる記事の大半は、DULT(Karnataka Directorate of Urban Land Transport、州都市陸運局) の主導による当該施策を必ずしも肯定的に伝えるばかりではなかった。

◆計画の遅れと交通事情の違いを疑問視

現在、市内で最も混雑する10か所が対象とされていない点を、実際の交差点名を挙げてまずは大きく問題視している。「日本政府の無償資金協力による本実証実験は、契約上、実装範囲が29か所の交差点に限定されていた。対象箇所はベンガルール交通警察と協議して最終決定したものだ」というDULT幹部の言葉を紹介しつつも、2014年の当初計画の発表から2021年7月まで具体的な動きに乏しく、何度目かの計画修正の後に定められた2022年10月の完了予定も既に大幅に超過している、と計画遅延を指摘している。


《大和 倫之》

大和 倫之

大和倫之|大和合同会社 代表 南インドを拠点に、日本の知恵や技術を「グローバル化」する事業・コンサルティングを展開。欧・米の戦略コンサル、日系大手4社の事業開発担当としての世界各地での多業種に渡る経験を踏まえ、シンガポールを経てベンガルール移住。大和合同会社は、インドと日本を中心に、国境を越えて文化を紡ぐイノベーションの実践機関。多業種で市場開拓の実務を率いた経験から「インドで試行錯誤するベースキャンプ」を提供。インドで事業を営む「外国人」として、政府・組織・個人への提言・助言をしている。

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