【ホンダ アコード 新型】開発責任者が語る「フラッグシップセダンとしての使命」とは

ホンダ アコード 新型
ホンダ アコード 新型全 24 枚

ホンダは11代目となる新型『アコード』の日本向けモデルを先行公開した。予約受け付けは2023年12月より開始され、発売は2024年春を予定している。『レジェンド』なき今、フラッグシップセダンとして登場する新型アコードはいかにして生まれ、そして何を目指すのか。

新型アコードの開発責任者である本田技術研究所 四輪事業本部 四輪開発センター パワーユニット開発統括部 パワーユニット開発一部 パワーユニット開発管理課チーフエンジニアの横山尚希氏に、そのねらいを聞いた。

ホンダ アコード 新型ホンダ アコード 新型

◆ホンダの技術を結集したものを世に送り出すという使命

----:これまで横山さんはどんなクルマを担当してきたのですか。

横山尚希氏(以下敬称略):もともと出身がエンジン設計でしたので、先代『ステップワゴン』の1.5リットルターボのエンジン設計をやっていました。あのエンジンは出力も出しながらも低回転のインターセプトもしっかり出ていますので、いまでも非常に競争力があると思います。その後に先代のアコードのエンジンの設計開発責任者をやって、そこでも1.5リットルターボ(日本未発売)の総括をやっていました。

----:では今回のアコードが車種の開発責任者としては初めてのお仕事なのですね。

横山:そうですね。

----:しかもそれがアコードということですから、なかなかハードなお仕事だったかと思います。

横山:プレッシャーが確かに非常に大きかったですね。ホンダにとってアコードはすごく大事なクルマなんです。なので、絶対に失敗できないし、各機能を開発してくれているメンバーもアコードをめがけて新しい技術をいっぱい用意してきます。

新型アコードの開発責任者、横山尚希氏新型アコードの開発責任者、横山尚希氏

実はこの開発途中ではいろいろなトラブルがありました。いろんな新機能が合わさっていくわけですから、そのソフトウェアはすごく膨大になりますし、そのひとつひとつのユニットが繋がっていくわけです。何かひとつを変えると、次はこちらのユニットを変えて、その次はこっちのユニットと繋がっていく…そうすると開発時にはいろいろなソフトウェアの不具合が発生してしまうんです。それらをドロップ(採用しない)してしまえばすごく簡単でシンプルですし、できないことはドライに諦めるという方向もありました。

しかしアコードのためにみんなが技術を集めてきたものであり、日本ではフラッグシップになるわけですから、ホンダの全ての技術を結集したものを世に送り出さないとアコードがアコードにならないと考えて、その技術をきちんと世に出すこと、そこを使命感としてやっていました。

◆“相棒アコード”にふさわしい動力性能とは

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----:新しい技術の面、特にHMI(ヒューマンマシンインターフェース)や安全性はもちろんですが、パワートレイン系も刷新されています。新型アコードで一番やりたかったことは何だったんでしょう。

横山:今回のクルマの開発にあたって純粋にお話すると、素直にいいクルマを作りたいというのが思いでした。ではいいクルマってなんでしょう。僕らが考えたいいクルマとは、例えば次の目的地に向かっているときに気持ちがすっきりしたり、気持ちが整ったりして、次の仕事を始めるときに、さあやるぞと頑張れる、そんな力をもらえるようなクルマです。それを一部のお客様だけではなくて、みんなにそれを体感してもらいたい。これがやらなければいけないことだと思っていました。

ちょっと例えてみましょう。体操の平均台は10cmぐらいの幅しかないんですね。あそこで演技できる人は本当にプロフェッショナルで一般の人は当然できません。でもその幅がもっと広がれば、プロじゃなくてもその上で演技ができるでしょう。それはクルマも一緒だと思っています。マニアにしか運転できないクルマは確かに一部のお客様には響くかもしれません。しかし、例えばちょこっとぐらいミスしたって、“いいよいいよ俺がやっとくから”ってアコードがいってくれる。そんなクルマであることがいろんなお客様に対して感動を与えられるんじゃないかと思いながら作っていきました。

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----:そのあたりは先代アコードも近いようにも思います。リラックスして長距離を気持ちよく走らせたい。だからe:HEVのパワートレインがあり、サイズがあり、デザインになっていたと思います。それを今回のアコードではより進化させたというニュアンスなんでしょうか。

横山:そうですね。グランドコンセプトの“相棒アコード”にふさわしい動力性能でいうと、例えば先代では走り出しの時とかに少しモタついたりするシーンがありましたし、アクセル踏んでいった時にエンジンの回転数が高止まりでビーンとなったり、そういうようなところがお客様のフィーリングとしてはちょっとアンマッチに感じられていたんです。それをいかにお客様の気持ちに寄り添えるような制御にするのかということが、今回すごく注力したことですし、そのあたりは少し違っているでしょうね。

これまでは燃費を優先していたことで違和感を生んでいたりしたものを、少しお客様に寄り添ったものにしながら、当然(燃費が)ネガにならないように違う対策を入れていきました。また、既に『シビック』で採用していますが、リニアシフトも搭載しています。人の感覚はやっぱりサウンドとGが連動しないと気持ちよさが出ないんですよね。そういうところをしっかりとお客様が気持ちいいなと思ってもらえるような、そういう調和を今回はいろいろ入れています。

◆「走りに関しては一点の妥協もありません」

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----:その気持ちよさの実現について、具体的に教えていただけますか。

横山:まず、今回搭載している2リットルの直噴エンジンはシビックから採用してきたものです。このエンジンはトルクが先代に対して増しています。ホンダのe:HEVのシステムではロックアップ機能がありますが、高速クルーズしながら一番燃費のいいロックアップポイントで直結させています。しかし、エンジンのトルクが足りないと、それがすぐ抜けてしまっていたんです。そこで今回はエンジンのトルクが増えた結果、ロックアップポイントの幅が結構広がりましたので、抜けにくくなり、ロックアップのオンオフに関わる煩わしさもなくなっています。

----:そうするとかなり静粛性も上がりましたか。

横山:そうですね。特にロックアップ時のところでいうと、高速クルーズ時の静粛性も上がっていますし、車体自体も防音性能も結構力を入れましたの、静粛性は上がっていると思います。

----:ハンドリングについてはいかがですか。

横山:ステアリング関係もかなり力を入れました。例えばステアリングを切ったぶんだけ、舵角を入れたぶんだけちゃんと曲がるなど、そういったところは何か特殊な技術が入っているわけではありませんが、セッティングに時間をかけて熟成させています。走りに関しては一点の妥協もありません。

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----:最後に、ユーザーに向けて「新型アコードのここを見てほしい」というポイントを教えてください。

横山:やはり動的性能ですね。相棒アコードというグランドコンセプトなので、相棒であるがためには動力性能などでのお客様に寄り添う制御をはじめとした、お客様に寄り添う〇〇というのを相当に入れ込んできたクルマなんです。

(操作に関しても)いろんな機能が入ってくるとやりたいことを探っていくだけで大変になっちゃう時代が来ています。しかし例えばGoogle Build inもそうなんですけど、発話ひとつで温度を上げてとか、何々点けてとか、そういうことができるのはお客様としてもすごく使いやすいと思うんですよ。そういったところは動的性能を含めてお客様に寄り添うということを、本当に考えて作ったクルマなので、ぜひそのあたりを念頭に置いて乗っていただけるとありがたいと思います。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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