小野測器が「ベンチマーキングレポート」を販売開始…EV変革時代に高まる需要、知見活かし高精度な測定データ提供

新規ビジネス「ベンチマーキングレポート販売」とは

需要が高まった“データレポート”を効率的に販売

現在の対象はBYDのグローバルモデル

公開された測定環境「無響室」と「残響室」

小野測器の大越祐史社長(右)と安地隆浩 執行役員(左)
小野測器の大越祐史社長(右)と安地隆浩 執行役員(左)全 28 枚

デジタル計測器メーカーとして70年の歴史を持つ小野測器。自動車関連の測定環境には無くてはならない電子計測器を長年供給し続ける同社が、新たなビジネスとして「ベンチマーキングレポート販売」を開始。10月5日にはプレス向けの発表会が開催された。

◆新規ビジネス「ベンチマーキングレポート販売」とは

ベンチマークリポート(データでの販売だが紙出力してもらったので撮影)

1954年に設立した小野測器は鉄道、自動車、航空、工業製品など多岐にわたるジャンルに関わる電子計測器を製造・販売してきたメーカーだ。現在我々が乗っているクルマも、製造過程や開発過程で同社の測定器との接点があると言っても過言ではないだろう。

そんな小野測器が新たなビジネスとしてベンチマーキングレポート販売を開始した。具体的な内容はベンチマークとなる車両を小野測器が手に入れ、自社のデジタル計測機器や測定環境を使って正確で精度の高いデータを導き出しレポートとして販売するといった事業だ。

◆需要が高まった“データレポート”を効率的に販売

プレス向けの会見を行う 大越祐史社長

その背景にあるのは自動車産業の急速な変革だ。カーボンニュートラルが命題になる昨今、EV化をはじめとしたクルマのメカニズムの進化や変化が進み、開発を急ピッチで進める必要がある。ライバルメーカーやライバル車種の変化・進化も激しく、そのデータを各自動車関連メーカーが逐一自社で検証、蓄積していくのは難しくなりつつある。そこで小野測器がベンチマークとなるクルマを購入してレポート化して販売することで、これまで各メーカーごとに測定していたデータを、小野測器から購入することで効率化することができるという狙いがあるのだ。

さらにECUの制御なども複雑化している昨今、他社製品の調査は困難を極める場合も多い。その点、計測機器を長年開発してきた小野測器にはそのノウハウが膨大に蓄積されている。そんな強みを活かして正確なデータをスピーディに測定することができるのだ。

もちろん小野測器ではこれまでも完成車メーカーやパーツメーカーなどからの依頼を受けて個別にベンチマーキングを実施してきた実績がある。しかし新たな事業は小野測器が主体となってベンチマーキングを実施することで、測定からレポートまでの流れを自社で完結し複数のメーカーにレポートを販売することを可能にした。そのため完成車メーカやパーツメーカーにとっては低コストで高精度な測定データが手に入るのが大きなメリットと言える。

小野測器のベンチマーキングレポート

◆現在の対象はBYDのグローバルモデル

すでにBYDの『元PLUS(日本名 ATTO3)』のベンチマーキングリポートの販売を開始している同社、1.出力特性、パワーユニット効率、2.出力制限特性、3.駆動力特性、チップアウト特性、回生特性、4.走行抵抗、5.タイヤ転がり抵抗、6.モーター、インバーター振動、7.モーター、インバータ音、8.パワーユニットマウント振動、9.車室内騒音、10.伝達振動特性、11.サスペンション・タイヤ振動、12.警音器、13.電費、航続距離の13項目のレポートの販売を開始、さらに14.熱マネジメントも準備している。

ベンチマーキングする車両についても、2台目としてBYDの『SEAL(シール、海豹)』を各項目を測定中で順次レポートの販売を始める予定だ。ちなみにベンチマーキングを実施したBYDの車についてはBEVがまだ主力となっていない日本向け仕様ではなくグローバルな仕様のデータを求めるニーズが高いことから、中国本国の仕様を購入して測定しているのもこだわり。今後は年間3~4台のペースで、自動車業界が必要とする車種にターゲットを絞ってベンチマーキングを実施していく予定になっている。

BYD『元PLUS(ATTO3)』(左)と『SEAL(シール、海豹)』(右)

気になるリポートの内容だが、プレス発表会ではベンチマークリポートにはどのような項目が記されているのか部分的に説明された。


《土田康弘》

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