10月から始まった中古車価格の「総額表示」…ユーザーとして知っておくべきこととは?

10月から始まった中古車価格の総額表示…ユーザーとして知っておくべきこととは?
10月から始まった中古車価格の総額表示…ユーザーとして知っておくべきこととは?全 3 枚

100年に1度の大変革期と言われる自動車業界ではここ数年、法改正やルール変更が続いているが、中古車についても、この10月から大きな動きがあったことをご存じだろうか。「中古車価格の総額表示義務化」である。このルール変更について、ユーザーはどんなことに注意しなければいけないかを考えてみたい。

表示価格と手元に来る時の価格が違う…?

そもそも中古車の総額表示が義務化された背景には、中古車のプライスボードやインターネットに掲載されている車両表示価格に多額の諸経費を上乗せすることで、表示価格では購入できない、いわゆる“釣り広告”が横行していたことが挙げられる。

「フロアマットやバイザーは全て別売りと言われた」「表示価格は100万だったが、商談時に保証や整備の購入を強要され、100万では購入できなかった」など車両表示価格で購入できないという相談が、消費者庁や自動車公正取引協議会などに多く寄せられていたという。これらを受け、中古車小売市場の健全化を目指し、2023年10月から中古車価格は総額表示の義務化となった経緯があるのだ。

そもそも総額表示とは何か?

自動車公正取引協議会が示している今回の「支払総額の表示」 のポイントは大きく分けて以下の4つだ。

1.「車両価格」に「諸費用」を加えた価格を「支払総額」の名称を用いて表示すること

2.「支払総額」の内訳として、「車両価格」及び「諸費用の額」を表示すること

3. 価格には「保険料、税金、登録等に伴う費用が含まれている」旨を表示すること

4.「当該価格は、登録等の時期や地域等について一定の条件を付した価格である」旨を表示すること

1つ1つを細かく見ていきたい。

まず「車両価格」についての定義だが、店頭で車両を引き渡す場合の消費税を含めた現金価格で、展示時点で既に装着済の装備 (例:カーナビ、オーディオ、カスタムパーツ)等を含む価格を指す。  

続いてユーザーには分かりにくい「諸費用」についてだが、支払総額に含まれるものとそうではないものに分かれる。支払総額に含まれるものは、自賠責保険料、税金(法定費用)、登録等に伴う費用 (検査登録手続代行費用/車庫証明手続代行費用)である。その一方で、任意保険料や法定費用の中でも希望ナンバーの申請費用 やリサイクル料金、下取り車査定料、納車費用などは、ユーザーにより要否が異なるため、支払総額の諸費用には含まれない。また諸費用として不適切な費用(例:本来、車両価格に含まれるべき納車前の洗車、点検、オイル・バッテリー交換など軽整備の費用など)は中古車商品化のための費用として、支払総額の諸費用としては請求できないとされた。  

なお「定期点検整備」及び「保証」を付帯して販売する場合、その費用は「車両価格」に含めて表示しなければならないこととなった。その上で「定期点検整備」を実施する(かつ整備費用が 「車両価格」に含まれている)場合は「定期点検整備付き」と表示、一方で定期点検整備を実施しないで販売する場合は「定期点検整備なし」と表示 (要整備箇所がある場合は、その旨を表示)することとされた。

「保証」についても同様に「保証」を付ける(かつ保証費用が「車両価格」に含まれている)場合 は、「保証付き」と表示、「保証付き」の場合は「保証内容」及び「保証期間・走行距離数」 を明瞭に表示、逆に「保証」を付けないで販売する場合は、「保証なし」と明瞭に表示することとされた。

※画像出典:自動車公正取引協議会ホームページより

電子制御装置整備対象車か否かで中古車価格に大きな差が出る

今回の総額表示の義務化で気を付けたいのが、見た目は全く同じでも、ある時期を境に電子制御装置整備対象車となった車両の中古車だ。自動車公正取引協議会の資料によると、車検無しの車両を販売する場合は、車検を取得し、購入者名義に登録をする際の価格を表示することが必要とある。

車検において自分の愛車が電子制御装置整備対象車両か否かによって整備の対応・料金が大きく変わるということについて具体的に触れてみたい。

クルマの進化に伴う、整備の高度化に対応するため創設された「特定整備」の対象装置の保安基準の施行は、2020年4月からのため、それより前の装置については電子制御装置整備の対象外となっている。しかし、クルマの中には、モデル改良後(マイナーチェンジも含む)に、装置が保安基準対象装置となった車種もある。

具体的には、2020年1月のマイナーチェンジ以降に電子制御装置整備対象となった車種にトヨタのアルファードヴェルファイアがある。この場合、現在のルールでは、例えばフロントガラスのカメラの周りに小傷があった場合、純正のガラスに張り替え、エーミング(校正作業)を行い、記録簿への記載がマストとなる。

ただし、2020年1月のマイナーチェンジ前のアルファードやヴェルファイアであれば、ユーザーが金額を安く抑えるために、小傷をレジンで埋めるという対応も選択肢として検討が可能だ。純正ガラスへの交換やエーミング作業は、レジンで埋めるだけの作業と比較すると、大きな金額差が生じる。つまり、見た目はほぼ同じでも対象車と非対象車では、車検における作業内容や料金が全く違ってくるのだ。ユーザーはこのルール変更と、作業内容や料金の差の根拠が何かをまずは理解しておく必要がある。

話を元に戻すが、前述のようなケースを踏まえれば、見た目は同じでも電子制御装置整備対象車か否かで、当然中古車の価格にも差が出るというということも理解しておく必要があるのだ。

総額表示が義務化されたことで、ユーザーが考えなければいけないのは、自分の手元に来る際に金額がいくらになるのかということと同時に、自分の納得できる品質に上げて買うには、いくら掛かるのかということを理解することである。

例えば、タイヤの溝が減っていたり、タバコのニオイなどが車内に残っていたら、交換やクリーニングをするのが普通ではないだろうか。ユーザーも中古車購入の際は、中古車の価格の仕組みについてきちんと理解した上で、購入を検討すべきではないだろうか。

10月から始まった中古車価格の総額表示…ユーザーとして知っておくべきこととは?

《CAR LIFE編集部@松岡大輔》

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