日本初公開! ソニー・ホンダのEV『アフィーラ』…川西社長「ガジェット好きが愛着を持てる高付加価値車に仕立て上げたい」

日本で初公開されたソニー・ホンダモビリティのスマートEV「AFEELA」のプロトタイプ第一号モデル
日本で初公開されたソニー・ホンダモビリティのスマートEV「AFEELA」のプロトタイプ第一号モデル全 20 枚

ソニー・ホンダモビリティ(SHM)が今年1月のCES2023で発表した次世代のEV『AFEELA(アフィーラ)』のプロトタイプが、10月17日、日本のメディア向けに公開された。10月25日から(一般公開は28日から)開催されるジャパンモビリティショー2023で披露され、いよいよ日本でのデビューが具体化する運びとなった。

◆車両は仕様もスペックもCES 2023に出展したものと同一

発表された車両は、SHMが25年内に米国での発売に向けて開発を進めている量産型EVのプロトタイプだ。車内外で表示される映像に若干のアップデートはされたというものの、車内外に装備した45個のカメラやセンサーも同じで、日本初公開に合わせて特別にアップデートされたものはない。車両自体は基本的にCES 2023に公開されたものと同じで、ドアハンドルも備えず、カメラによる認識やスマホによって自動開閉するのも同じだった。

この日、登壇したSHM 代表取締役社長兼COOの川西泉氏は、まずアフィーラのコンセプトである3つのテーマ「Autonomy(進化する自律性)」「Augmentation(身体・時空間の拡張)」「Affinity(人との協調、社会との共生)」からなる3つの“A”について説明した。

その内容は「Autonomyは将来のADASや将来の自動運転を含む技術走行を意味するもので、Augmentationは安心・安全の上に成り立つ移動体験における時間と空間の楽しみ方を変えていくこと。そして、Affinityは人とモビリティの関係性を表し、社会の中で新たなモビリティの価値を創出していくことにある」とした。これを形としたのが、このアフィーラのプロトタイプ第一号というわけだ。

そして、川西氏はこのプロトタイプについて「知性を持ったモビリティとして育てていき、ユーザーに寄り添う唯一無二の存在、愛着を持てるように新しいモビリティの可能性を追求していく」とし、その上で「自分の好みに合わせたアフィーラが作れる場所、表現できる場所、共創できる場所、これらをデジタルの世界で用意したい」と述べた。その軸となるのが、社外のディベロッパーやクリエイターが参加できる「アフィーラ共創プログラム(仮称)」である。

◆アプリの開発のオープン化を進め、ソフトによって進化するSDVを目指す

そのプログラムの狙いは2つあると川西氏は語る。「1つはクルマのグラフィックスやサウンドを作ることができるクリエーターやアーティストを巻き込むこと。もう1つはアプリケーションの開発で、これは自社内の知見にとどまらず、外部のエンジニアとも共創して新たなモビリティの可能性を追求していくこと」と説明。

つまり、アプリケーションの開発においてオープン化を進め、これにより「アフィーラをハードウェアあるいはソフトウェアの可能性を実感できるスペックに仕立てて行く」。これは新たなクルマのスタイルとして取り沙汰されているSDV(Software Defined Vehicle)そのものと言えるだろう。

アフィーラではその対象が明らかにされた。それはフロントグリルに備えられた「メディアバー」と呼ばれるディスプレイをはじめ、車内のダッシュボードに広がる「パノラミックスクリーン」のテーマ変更、走行時に擬似的なサウンドを響かせる「eモーターサウンド」の音源などがある。他にもナビアプリの地図上に独自の付加情報を重畳する機能や、アプリケーションやサービスを開発できる環境を用意するとした。

AFEELAのプロトタイプ第一号AFEELAのプロトタイプ第一号

なお、アプリケーションの動作環境は、ホンダが新型『アコード』でも採用したAndroid Automotive OSを採用することが明らかにされている。

また、川西氏はこの、「ユニークなサービスを実現するために、アフィーラの車両データや走行データのうち、開示できる情報はできるだけ多くセキュアに提供していく。その上でクラウドAPIを用意し、クラウド経由でサーバ間連携等も容易にする」と述べた。これは多くのディベロッパーやクリエイターが参加できるよう、随時情報をアップデートしていきやすくするためのものだ。

アプリケーションの配布方法について川西氏は「一つの例としてアプリストアのようなプラットフォームを用意することもあるだろう。ただ、確定的なことは言えないが、スマホのようなモバイルデバイスほど多彩な種類は求められないと思っている。その意味でモビリティではアプリケーションも限定的な使い方になっていくはずで、それはユーザーの利用状況を踏まえながら提供方法を考えていきたい」と、具体的な方法の説明は控えた。

ただ、当然、アプリを提供するからにはその収益性にも触れなければならない。川西氏は「最初はハードウェアの価値は高いわけで、そこをきちんと整理していくことが大事。まだアフィーラが発売されていない段階で具体的なことは言えないが、まずはクルマそのもののハードウェアとしての魅力を作ることが第一。ソフトウェアについてはそのハードウェアと組み合わせた時に見えてくる段階で具体的に提案していきたい」と説明した。

オープン化によって開発が可能になるアイテム(予定)オープン化によって開発が可能になるアイテム(予定)

◆情報をオープン化しても安心・安全はしっかり守っていく

一方、オープンにしていく中で安全性をどう担保していくのかもクルマにとっては極めて重要なポイントだ。これについて川西氏は、「情報をオープンにしていくことと、クルマを制御することは別の話。どちらも(オープンで対応)できればいいと思うが、安心・安全がまずは第一となるのは言うまでもない。その意味ですべてがオープンできるわけではない」とし、「セキュリティ上の問題も含め、守るべきところは守っていく」と説明した。

アフィーラのユーザーを“ガジェット好き”とするなら、いわゆる流行の生成AIの活用も考えられる。しかし、川西氏は「それは基本的に考えにくい」としながらも、「とはいえAIそのものをモビリティに活用することは数多いと思う。特にADASシステムやインフォテイメントなどでAIの活用には適しており、ユーザーの使い方をフィードバックする技術にもAIは介在する。その意味でアフィーラにはAIを積極的に活用していくつもりでいる」と述べた。

また、昨今の半導体不足への対応についても言及。「半導体は常に進化している中でSHMが独自に半導体を起こすとの案もある。これは一つのオプションとしてあり得る話で、その場合はそれをどこに使うかを検討していくところだ。ただ、半導体を統合化していくことと、あるいはADASを極めるかなどとは方向性が少し違う。その辺りをどうすべきかは判断の狭間にいるところだ。今後も慎重に対応を見極めていきたい」とした。

アフィーラの量産仕様は、2025年前半に先行受注を開始し、同年中に発売を予定。デリバリーは2026年春に北米から開始、日本へは2026年中を予定している。なおプロトタイプは、東京ビッグサイトで開催される「ジャパンモビリティショー2023」に出展(東4・5・6ホール内)して日本初公開される。一般公開日は10月28日~11月5日。

AFEELAのプロトタイプ第一号AFEELAのプロトタイプ第一号

《会田肇》

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