レトロだけど最先端!ヤマハ『XSR900GP』は、あの頃を懐かしむだけの存在じゃない…ジャパンモビリティショー2023

ヤマハ XSR900GP(ジャパンモビリティショー2023)
ヤマハ XSR900GP(ジャパンモビリティショー2023)全 74 枚

ヤマハ発動機は、東京ビッグサイトで開幕した「ジャパンモビリティショー2023」(一般公開:2023年10月28日~11月5日)において、新型モデル『XSR900GP』を発表。かつてのレーサーレプリカを彷彿とさせる、アラフィフ世代直撃のスタイリングを紹介しよう。

◆プロトタイプほぼそのままの形でサプライズ発表

ヤマハ XSR900GP(ジャパンモビリティショー2023)ヤマハ XSR900GP(ジャパンモビリティショー2023)

それはまったくのサプライズだった。ショーの開幕を2週間後に控えた10月11日、ヤマハは、そのブース概要をプレスリリースとして配信。ワールドプレミアが6機種あることはアナウンスされていたものの、その中にXSR900GPの名はなく、匂わせ的な文言も見られなかった。

そんな中、ショーのプレスデーが始まる前日、10月25日に配信されたリリースにおいて、同モデルが欧州で発売予定であることを突如発表。その流れでいけば、イタリアで開催されるEICMA(国際モーターサイクルエキシビジョン)で公開……となるのが普通だが、それに先駆け、ここ日本で初披露されることになったのだ。

ヤマハ XSR900 DB40 Prototypeヤマハ XSR900 DB40 Prototype

もっとも、その存在は、完全に隠されていたわけではない。7月にイギリスで開催された恒例のモータースポーツイベント「グッドウッドフェスティバルオブスピード」では、『XSR900 DB40 Prototype』と呼ばれたモデルがデモランを披露。ただし、その場限りのワンオフモデルなのか、カスタムスタイルの提案なのか、あるいは市販を想定しているのかは判然としなかった。

車名の通り、実際それはプロトタイプ然としたものに見えたわけが、驚くべきことに今回、ほとんどそのままのデザインで姿を現した。狙いは極めてわかりやすい。80年代のレーサーレプリカを思わせるディティールとカラーリングが与えられ、アラフィフ世代が狙い撃ちされることになったのだ。

◆お手軽レプリカではない、専用開発の数々

ケニー・ロバーツが駆った1983年型の「YZR500(OW70)」ケニー・ロバーツが駆った1983年型の「YZR500(OW70)」

展示方法もまったく奇をてらわず、清々しいほど直球だ。XSR900GPの隣には、往年の名ライダー、ケニー・ロバーツが駆った1983年型の「YZR500(OW70)」が並べられ、近似性をアピール。ロゴはなくとも、誰もがかつてのレースシーンを彩ったマルボロのスポンサーカラーを思い出したに違いない。

もちろん、外装を赤/白に塗っただけのお手軽仕様ではない。ビス留めされた別体式のナックルガード、ネック部分から伸ばされた2本の丸棒ステー、そのステーとアッパーカウルを繋ぐためのベータピン、サイドカバーの脱着を容易にするDリング状のクイックファスナーなどは、80年代当時のレーシングマシン、もしくはそのレプリカに倣ったディティールであり、いずれも単なる装飾ではなく、機能パーツとしての役割を担っている。

メインフレーム、スイングアーム、エンジンといった主要コンポーネントこそ、ネイキッドの『XSR900』と共有する。とはいえ、車体各部の剛性チューニングが異なる他、前後サスペンションは専用に開発。一見、XSR900からの流用に見えるエアクリーナーボックスカバー、シート、サイドカバー、シートフレーム等もこのモデルのために、新しく設計されたものだという。

ヤマハ XSR900GP(ジャパンモビリティショー2023)ヤマハ XSR900GP(ジャパンモビリティショー2023)

このモデルは、単に「若かりしあの頃」を懐かしむための存在ではない。メーターには5インチのフルカラーTFTディスプレイが備えられ、スーパースポーツと同レベルの電子デバイスを装備。また、クルーズコントロールによる快適性や、アプリを介したエンターテイメント性の充実など、最新モデルとしてのユーティリティにも抜かりはない。

ライディングポジションは、セパレートハンドル化された分、XSR900よりは当然スポーティ(=前傾姿勢になる)ではあるが、『YZF-R7』よりはかなり安楽といったところだろうか。したがって、体格やスキルに対する敷居は見た目より低く、幅広いユーザーに支持されそうだ。日本における発売は、2024年夏以降とのことなので、お楽しみに。

◆ホイールの数にこだわらないヤマハの最先端と未来

自律走行するヤマハ『モトロイド2』でのデモンストレーション(ジャパンモビリティショー2023)自律走行するヤマハ『モトロイド2』でのデモンストレーション(ジャパンモビリティショー2023)

さて、今回のヤマハは、ショーのテーマとして「“生きる”を、感じる」を掲げている。人々の可能性を広げるため、モビリティの存在を際立たせ、機能を拡張していくことを宣言。そのためのプロトタイプ車両や研究開発中の様子を数多く公開した。

ワールドプレミアとして、3輪のオープンEV『トライセラ』、自律走行する『モトロイド2』、転倒や疲労を軽減し、車体の安定化を支援する『ELOVE』、スポーティな電動ミニバイク『E-FV』、電動MTBの『Y-00Z MTB』、両輪駆動によって高い走破性を発揮するeバイク『Y-01W AWD』の展示を実施。また、フロント2輪のLMW構造を採用したオフロードアドベンチャー『TMW』や水素エンジンを搭載した4輪バギー『YXZ1000R』など、ホイールの数にこだわることなく、様々なカテゴリーに挑戦している企業姿勢を見せてくれた。

ヤマハ発動機 日高祥博社長(左)とヤマハ 中田卓也社長(右)ヤマハ発動機 日高祥博社長(左)とヤマハ 中田卓也社長(右)

また、プレスカンファレンスでは、ヤマハ発動機の日高祥博社長のみならず、音響機器を扱うヤマハの中田卓也社長も登壇し、バイクも楽器も鍛錬を要する素晴らしい娯楽であること、また、人が心豊かに生きていくための必需品に成り得ることをアピール。それらがどんな時も寄り添えるパートナーになれるよう、両社が協力していくことを宣言した。

会場では楽器のヤマハがプロデュースした、モーターショー史上類を見ないという音響空間の中で、ヤマハモビリティの最先端と未来を感じることができる。

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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