サプライヤーにとってのEV充電器市場のポイント【特集 EV充電インフラビジネス最前線】

シュナイダーが実験中の充電ステーション(ZeMobase)
シュナイダーが実験中の充電ステーション(ZeMobase)全 10 枚

EVの普及には充電インフラの整備が欠かせない。テスラのように車両と同時に独自の充電インフラを整備する例さえ存在する。あるいはNIOのように交換式バッテリーのEVを成功させている例もある。OEMがバッテリー工場を持ったり充電インフラも手掛ける現状において、サプライヤーの戦略になにか影響はあるのだろうか。

◆サプライヤーの注力分野:ソフトウェア、熱マネジメント、eアクスル

サプライヤーの中でも電装品を扱っているところなら関係は当然あるだろう。業界のEVシフトが進むなかティア1を筆頭に動きを見ておくことは重要だ。国内外の製造業関連トレードショーを見ると、オートモーティブ分野のここ1、2年のトレンドは、CASE/SDVに関連したセンサー関連技術やECUやHPC(High Performance Computing)技術、バッテリーの温度管理を含む熱マネジメント技術、そしてeアクスルだ。

9月にミュンヘンで開催されたIAAモビリティ2023では、ボッシュ、ZF、コンチネンタル、ヴァレオなどが軒並みこれらのSDV、バッテリー関連技術をメインに展示していた。とくにeアクスルでは3in1や6in1など、パワーコントローラー、インバーター、オンボードチャージャー、DC/DCコンバータなどをいかにコンパクトにするか。容積効率を上げるかの技術を競っていた。

しかし、DC急速充電器やAC普通充電器まで踏み込んだ展示を行うティア1は多くない。この点では、OEMが充電インフラまで事業領域として考えるようになったとはいえ、サプライヤーまで充電ビジネスや外部充電器まで手掛ける必要はなさそうに思える。しかし、ヴァレオはEUでは家庭用のコンセントにつながるEV充電ケーブルを販売している。そして、IAAモビリティの会場取材でも、ガレージなどに設置するAC普通充電器(ウォールボックス)について販売する可能性を否定しなかった。ちなみに、会場でインタビューしたヴァレオグループのジョフレ・ブコCTOによれば、DC急速充電器についても明確な否定はしなかった。

◆ヴァレオはEV充電ケーブルを作り始めた

欧州の主だったOEMは、自社ロゴの入ったAC普通充電器を車両とともに販売している。これらの供給元に、電気設備以外の自動車サプライヤーがなってもいいわけで、ヴァレオが充電ケーブルを作っていても不思議はない。とくに欧州の都市部路上に設置されている充電器は本体やポストだけ(街灯を利用した充電ポストもある)で、充電は自分のケーブルを差し込んで行うものがほとんどだ。充電ケーブルについてはサードパーティ市場が成立している。海外市場への進出を考えているサプライヤーなら、EV充電市場の製品やソリューションを考えてもよいだろう。

OEMに製品を供給しているサプライヤーなら強みもある。前述したヴァレオのブコCTOは、「オンボードチャージャーやインバーターの技術は、車載に限らず外部充電器にも応用できる技術だ」という。しかも「サプライヤーはOEMの要求品質に応える技術を持っている」と、充電器市場参入に自信さえ見せていた。

◆家電+自動車というポジションの可能性

ボッシュはオートモーティブ以外に家電事業も展開している。ボッシュのような立ち位置からAC普通充電器やケーブルを開発する可能性もある。残念ながらどちらの事業も、この領域に参入する動きは確認できていない。しかし、市場からのニーズはゼロではない。欧州では高騰する光熱費の対策として、オフグリッドやヒートポンプを推進する動きがある。


《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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