【プジョー 308SW ディーゼル 新型試乗】「電動化、電動化」とは言いますけれど…中村孝仁

プジョー 308SW GT BlueHDi
プジョー 308SW GT BlueHDi全 35 枚

どうも人は新しいものに対して身構えるというか、素直に受け入れない傾向が歳と共に加速する印象が強い。

きっと若い時はむしろ新しいものを積極的に取り入れていたように記憶するが、そうした傾向は歳と共に減退する。読者は今自動車業界で進んでいる電動化に対してどのような感想をお持ちか聞いてみたいところだが、どうも私の場合は守旧派のようだ。

電動車の素晴らしさは認めつつも、積極的にはなれてない。今回プジョー『308』のディーゼルモデルをお借りして、その気持ちが益々強くなってしまった。確かにうるさいし、電動車ほどのスムーズさは持ち合わせていない。でも抗しがたい魅力が内燃機関車にはあるような気がする。

◆「純」1.5リットル・ターボディーゼル

プジョー 308SW GT BlueHDiプジョー 308SW GT BlueHDi

ハッチバックのディーゼルは以前にも乗った。ステーションワゴンの「SW」は今回が初めてである。と言って特段違いがあるわけではない。1.5リットルのターボエンジンと8速ATの組み合わせはプジョーディーゼル全てのモデルに共通である。1.5リットルとしては中々優れた動力性能を持っていると思う。

最近のクルマではほぼ必ずと言って良いくらい付いてくるいわゆる走行モードの切り替え。御多分に漏れず308にもそれがあり、エコ、ノーマル、スポーツに切り替えられる。スポーツにすれば明らかに加速感が良くなり、まさにディーゼルでもビュンビュンと走るのだが、その分ギアが頑張ってしまって、常に回転の高い領域に持ち込もうとする。それにアクセルオフしても中々次のギアへステップしてくれないから、少し使ってみてすぐにノーマルに戻してしまうのが常。

エコも使ってみたものの、やはりどことなく体感的に力が抜けた印象で、これもまたすぐにノーマルに戻してしまう。それ以上にこのモード切替を積極的に使って走らせる人がそれほどいるのだろうかと疑問すら感じてしまう。きっと昔のように自動車を楽しんで走らせることがなくなった証拠かもしれない。

◆50年慣れ親しんだICEに郷愁を覚えてしまう

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今回は往復300km以上のドライブを楽しんでみた。勿論ほとんどが高速走行に終始する。そこで感じさせてくれたのがディーゼルの静粛性の高さである。確かに加速時などでは独特のサウンドを奏でるのだが一端巡航に入ってしまえば快適且つ非常に静かである。また、前車追い越しの際などの加速感にも力強さがあって実に好ましい。

これが電動車に乗るとその加速もスムーズさもさらに力強さと静粛性が増すのだが、勝手な思い込みでどうも一体感がない。まあ慣れの問題ではあると思うのだが、好みの問題から行けばどうも息をしている感の強いICE(内燃機関)車に好感を持ってしまう。

もしかすると、純粋にICEだけのクルマというのはここ数年で消えゆく運命にあるという印象は避けられない。電動化電動化というけれど、もう50年も慣れ親しんできたICEの自動車に郷愁を覚えてしまうようである。

何よりもこのプジョー『308SW』には3グレード用意され、ベースモデルの「アリュール」、上級モデルの「GT」、それにGTのハイブリッド仕様が存在し、ハイブリッドのみがガソリンとの組み合わせで、ICEのみはディーゼルだけの設定となっているが、同じGT同士でディーゼルとハイブリッドを比較した場合、実に価格的に100万円もの開きがある。車両本体価格のみで比較するとGTハイブリッドの576.6万円に対してディーゼルのGTは470.2万円だ。因みにアリュールは387万円である。

◆ICEのクルマに乗りたいと思ったら、今しかない

プジョー 308SW GT BlueHDiプジョー 308SW GT BlueHDi

一言で言って、私自身がどうも従前の自動車に対して郷愁を持っている感を、このクルマに乗ってひしひしと感じてしまった。でも、良いものは良いしこれから恐らくどんどん良くなるではあろうが、重たいバッテリーを腹下に積み込むことで、重心が下がって、安定感は増すとはいえ、軽快な走りとは決してならない。ディーゼルはガソリンに比べたら確かに重いのだが、それでもBEVの無理矢理軽快感を出したようなものではない。

ハイブリッドの場合どうしてもバッテリー搭載が必要になるので、ラゲッジスペースにしても元々スペアタイヤを積んでいたであろう床下スペースの半分にバッテリーが搭載されるから、少なからずスペースが阻害される。(まあ大した違いではないけれど)とりわけ車両重量はGT同士の比較で実に240kgもハイブリッドの方が重い。などなど、電動化がもたらすそれなりの弊害はあるのである。

この自動車の一大転換期、果たしてどんな結末になるか楽しみであるが、ICEのクルマに乗りたいと思ったら、今しかない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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