トップアナリストが見る自動車市場とサプライヤーの動向…大和証券 エクイティ調査部 坂牧史郎氏[インタビュー]

トップアナリストが見る自動車市場とサプライヤーの動向…大和証券 エクイティ調査部 坂牧史郎氏[インタビュー]
トップアナリストが見る自動車市場とサプライヤーの動向…大和証券 エクイティ調査部 坂牧史郎氏[インタビュー]全 1 枚

自動車業界の市場動向や技術動向に関するセミナーでは、業界内部の専門的な知見によって分析してもらうことが一般的だ。ときには、外部からの違った視点での評価も欠かせない。

12月21日開催のレスポンス オンラインセミナー「2030年に向けたサプライヤーの生き残り戦略~TOPアナリストが伝授~」では、大和証券株式会社 エクイティ調査部 担当部長 チーフアナリスト 坂牧史郎氏が、次の一手の参考になる講演を行うという。どんな話になるのか。

■アナリストの視点とは

――セミナーではジャーナリストとアナリストの視点の違いを最初に語るようですが、これはどういうことですか?

坂牧氏(以下同):証券会社では、個人の資金運用などの相談に乗っていますが、我々アナリストの仕事相手は、主に生命保険や信託銀行や年金などを集めて運用されるプロの機関投資家です。例えば、海外の投資家から、どの国のどんな株を買うべきか、といった相談を受けると、まずエコノミストが各国の経済状況を分析します。そこで日本の株が良いとなれば、ストラテジストが経済政策やどの業界が良いか、などの投資戦略に落とし込みます。そこで更に業界内でどの企業に投資すべきか、戦術を考えるわけですが、ここで、アナリストの業界、企業ごとの分析を参考にします。

たとえば、私はGMが破綻したころアメリカにいました。当時自動車業界の分析で、ジャーナリストは「こんな(燃費が悪い)車を作るからダメだ」「ビュイックもサターンもポンティアックもみんな同じじゃないか」という製品や機能を分析しがちでした。間違いではないですが、アナリストの場合は、さまざまな市場データからその原因を分析します。一般にOEMの利益は工場稼働率と連動しています。当時は、稼働率が下がると工場を縮小して利益を確保するという方法で、どんどん規模が縮小していきました。原因を分析すると「新車開発スピードが遅い」「やる気のないディーラー」「残価が低い」という結果がでました。

――なるほど。分析アプローチが製品アウトプットか、経済指標や統計データかという違いでしょうか。興味深いです。アナリストの視点で、現在のサプライヤー業界はどう捉えていますか。

詳しい話はセミナーで資料とともに説明したいと思いますが、簡単にいうとサプライヤーとOEMは、工場での利益≒売上総利益(粗利)は、生産台数と為替の影響を受けます。つまり円安ならばOEMの業績がアップし、サプライヤーの利益も上がるということです。

■工場稼働率と為替に依存する業績

――たしかにOEMの利益は為替に依存している現実はありますね。

円安はOEM、サプライヤーともに業績にプラスに働きます。ただし、全体としては、国内では日本円でOEMに納入するサプライヤーと、その部品を組み立てて、完成車をドルで売るOEMでは、OEMの方がより円安による利益を得やすい構造があります。また、サプライヤーの利益率がOEMより高い場合もありますが、長期的に見ると、為替の変動に比べ、OEMの方がやや利益率を高めてきている傾向があります。その一因は販管費にあるとみています。開発費や販管費などサプライヤー側の負担が継続的に増えている可能性があります。しかも、それが機動的に回収できないと経営を圧迫することになります。


《中尾真二》

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