【スズキ GSX-S125 試乗】誰もが「細ッ!」と驚くはず、気負わず乗れる“走りの指南役”…伊丹孝裕

スズキ GSX-S125
スズキ GSX-S125全 24 枚

日本市場へ投入されて以来、着々とエントリーユーザーのすそ野を広げてきたモデルが、スズキの『GSX-S125』(42万200円)だ。気負わず走り出せる、その軽やかな乗り味を紹介しよう。

◆スリムだが、高い操作性

スズキ GSX-S125スズキ GSX-S125

GSX-S125の初代モデルは、2017年にラインナップされた。これまで大きな変更はないものの、2022年モデルで新たな排ガス規制への対応を完了。この時、133kgだった車重が135kgになり、最高出力と最大トルクの発生回転数が、それぞれ500rpm引き上げられた。

車重が増したとはいえ、わずか135kgである。シートにお尻を降ろした瞬間、おそらく誰もが「細ッ!」と驚く車体のスリムさも手伝い、自転車感覚とまでは言わないが、余計なプレッシャーはまったくない。引き起こしも押し引きも余裕でこなせ、785mmのシート高もまた、抜群の安心感を提供してくれる。

幅広のアップハンドルを備えているため、上体や腕に過度な力はまったく入らず、操作に対してヒラヒラスイスイと反応する。車体の挙動を隅々まで意識でき、姿勢が少々乱れようとも、路面コンディションが悪化しようとも、いかようにもコントロールできる。そんな乗り手優位の関係が心地いい。

その軽さゆえにタイヤの接地感が希薄だったり、操作が乱暴になったりするきらいがあるものの、難癖といえば難癖である。単に軽い、単にスリムなモデルは他にもあるが、GSX-S125の美点は、その先にちゃんとスポーツ性もあり、チャレンジを受け入れてくれる適度な刺激が残されている点にある。

◆軽快、爽快な体験を

スズキ GSX-S125 試乗スズキ GSX-S125 試乗

その筆頭がエンジンの特性だ。124ccの水冷4サイクルDOHC4バルブ単気筒は、15ps/10500rpmの最高出力と、1.1kg・m/8500rpmの最大トルクを発揮する。数値自体は、このクラスの平均的なものながら、ボア×ストロークが62.0mm×41.2mmに設定され、他の同排気量エンジンに比べるとかなりビッグボア、あるいはショートストロークになっている。

レスポンスの鋭さやパンチの効いた爆発フィーリングで知られるKTMの『125DUKE』でさえ、それは58.0mm×47.2mmにとどまり、GSX-S125はスズキ自ら「オーバースクエアデザイン」と謳う通り、特異な部類と言っていい。

実際、他メーカーの125ccモデルと同一条件で乗ると、低回転域でのフレキシビリティよりも中高回転域まで回した時の快活さが優先されている。発進トルクが頼りないというほどではないものの、やや回転を上げ気味にしてスパッとクラッチをつなぎ、そのまま低ギアで引っ張った方が、より「らしさ」を堪能できるキャラクターだ。

スズキ GSX-S125スズキ GSX-S125

タコメーターのバーグラフが、7000rpmあたりまで上昇すると、俄然力強さを増し、しかし怖さは抱かない程度の加速力で、車体をグイグイ押し進めていく。文字通り、そこにはスロットルを開け切る楽しみがあり、とりわけワインディングでの爽快感は格別だ。

ただし、そこであまり調子に乗ってはいけない。既述の通り、車体の軽さとスリムさゆえ、ついつい操作が乱暴になってしまう場面があるのだが、低速域では許されても、スロットル開度が大きくなる高速域でリスクに直結する。

右手は開きつつも、ブレーキやシフトチェンジ、体重移動といった操作のあれこれは、車体に余計な負担を掛けないようにゆっくり丁寧に行う必要があり、それができないとコーナリングの軌跡はギクシャクした不安定なものになるはずだ。その意味で、スポーツライディングの基本を教えてくれる、よき指南役がGSX-S125というモデルである。

スズキ GSX-S125と伊丹考裕氏スズキ GSX-S125と伊丹考裕氏

■5つ星評価
パワーソース ★★★★
ハンドリング ★★★
扱いやすさ ★★★★
快適性 ★★★★
オススメ度 ★★★★

伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト
1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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