【トヨタ ヴェルファイア 新型試乗】アルファードにはないターボ仕様を選ぶ価値…中村孝仁

トヨタ ヴェルファイア Zプレミア
トヨタ ヴェルファイア Zプレミア全 42 枚

かつてロールスロイスとベントレーが同じ傘の下にいた時代、ショーファードリブンのロールスに対して、ベントレーはドライバーズカーと認識されていた。

とはいえ、同じ形に同じエンジンで、実際に乗ってみても(乗ったことがあるのだ)その差は感じられないレベルである。まあ、元々の出自がそうなのだからこの二つのブランドがそもそも一緒だったことに問題があったのかもしれないが、トヨタ『アルファード』と『ヴェルファイア』についてはいささか様相が違う。

トヨタ ヴェルファイア(奥)とアルファード(手前)トヨタ ヴェルファイア(奥)とアルファード(手前)

先代までのヴェルファイアはまさしくロールス傘下におけるベントレーのような状況で、両車の性格の違いはほとんどなく、精々顔つきが違うことぐらいしか差を感じさせてくれなかった。

ところが今回はだいぶ話が違う。メーカーでも両車の性格分けを明確にする方向に動いたのか、グレード的には両方ともに「エクゼクティブラウンジ」は存在するものの、ガソリン仕様のモデルはアルファードが単に「Z」と呼ばれ、ヴェルファイアは「Zプレミア」と呼ばれる。その違いはアルファードが2.5リットルNAエンジンを搭載するのに対し、ヴェルファイアのそれは2.4リットルのターボエンジンを搭載するのである。だから少なくともガソリン仕様に関する限り性能がまるで違うのだ。

◆アルファードでは体感できない「カチッとした走り」

トヨタ ヴェルファイア Zプレミアトヨタ ヴェルファイア Zプレミア

とりわけトルクはアルファードの235Nmに対し、ヴェルファイアの方は430Nmを絞り出す。しかもその最大トルクは1700rpmから3600rpmの広い範囲で出し続けるのに対し、アルファードの方は4100rpmのピンポイントでしか最大トルクは得られない。そんなわけだから走りの性能は顕著に異なるわけで、特に街中で常用するであろう40km/h付近のスピード域からポンとアクセルを踏み込んだ時のいわゆるアクセルの付きというか、加速の仕方がまるで違うのである。

一般的に言ってタイヤはハイトが高くて扁平率の高い方が乗り心地は良いと相場は決まっているのだが、ヴェルファイアに装着されるのはすべて19インチと結構なサイズ。アルファードが17インチもしくは18インチとされるのとは明確な差別化がなされている。ただ、それで乗り心地がかなりスポイルされているかと言えば実はそんなことはなく、確かにしっかり感があってそれなりにコツコツという感じの入力はされるのだけど、全く気になるレベルではなかった。

トヨタ ヴェルファイア Zプレミアトヨタ ヴェルファイア Zプレミア

それ以上にカチッとした走りの印象が強く、こいつでスポーツドライビングをしようと本気で考えるユーザーはいないかもしれないが、アッシー君に徹するオトーサン(まあ、オカーサンかもしれないが)の僅かな自己満足は叶えてくれる。

何よりもここ一番で加速をしたい時の湧き上がるパワーはアルファードでは体感できないものだから、今回の差別化は十分に納得のできるものだった。それに聞くところによればボディの強化もアルファードよりも上で、それが前述した「カチッとした」という部分に繋がるのだと思う。

◆この性能はそれなりに痛みを伴う

トヨタ ヴェルファイア Zプレミアトヨタ ヴェルファイア Zプレミア

ただ、この性能はそれなりに痛みを伴う。それが燃費。今回は250kmほどと少し少なめの走行距離ではあったが、燃費は8.6km/リットルである。限りなく15km/リットルに近かったアルファードのエクゼクティブラウンジと比較するとやはりその差は大きい。しかもそれだけではなく、アルファードの場合、HEVもガソリン仕様もいずれもレギュラーガソリンで対応するのが、このターボガソリン仕様はハイオクを要求するから燃費の差プラス使用燃料の差が上乗せされることになる。オトーサンのささやかな要求はそんなわけで家計には痛い結果を招くということだ。

しかし、敢えて燃費と使用燃料に目をつぶって高性能版をチョイスする価値は十分にあって、およそミニバンらしからぬ優れた運動性能を示すことは今回の試乗でも最も嬉しい驚きであった。外観はぱっと見、少しお髭が濃くなった印象のフロントエンドを持つが、まあ少しバンカラ調のイメージでそれもまた良し。

お値段は36万2120円のオプションを含めても700万円に届かない691万2120円である。というわけでアルファードのエクゼクティブラウンジ(850万円から)よりはだいぶお安い。

トヨタ ヴェルファイア Zプレミアトヨタ ヴェルファイア Zプレミア

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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