ZF クラインCEOが語る、成長著しいアジア・パシフィック戦略のカギとは

ZFグループのホルガー・クラインCEO
ZFグループのホルガー・クラインCEO全 14 枚

去る3月30日に日本で初めて開催されたフォーミュラE。直前にチーム「ABTクプラ」をサポートするZFのホルガー・クラインCEOが来日し、ZFジャパンの多田直純代表取締役社長とともに横浜で、報道関係者向けに今後の事業戦略について説明した。以前はアジア・パシフィック地域を担当していたクライン氏にとって、CEOに就任してから初来日となる。


◆アジア・パシフィック市場の売上は前年比13%増

クラインCEOによれば、ZFはティア1として世界3位の規模ながら、トラックを含む商用車では1位であり、2023年はあらゆるセグメントでその地位を強化できたという。結果、2023年のグローバル決算は好調そのもので、当初の目標450億ユーロ(約7兆3550億円)を上回る466億ユーロ(約7兆5958億円)の売上高を記録し、利益率を前年の4.7%から5.1%へと改善、14億ユーロ(約2282億円)のキャッシュフローを達成した。地域ごとの売上においてはアジア・パシフィック市場の成長が著しく、前年比+13%の112億6200万ユーロ(約1兆8357億円)と、グローバル全体のほぼ4分の1といえる24%を占めた。欧州市場と北米市場も前年比+10%と+6%の伸び率で、前者が全体の44%となる202億8900万ユーロ(約3兆2071億円)、後者が28%の131億2200万ユーロ(約2兆1389億円)であることを鑑みれば、アジア・パシフィックの売上が北米と肩を並べそうな勢いだ。

加えてクラインCEOは、売上高の伸びは技術革新によるものであり、引き続きキャッシュフローに占める研究開発投資の割合を堅持し、具体的には2023年の7.6%から2024年は7.8%(約1億920万ユーロ、313億円)へ微増させる。一方で売上の目標は450億ユーロ(約7兆3350億円)と据え置きつつも、利益率も4.9~5.4%へ微増、キャッシュフローは8億ユーロ(約1304億円)という、数値的には控えめでも、質で成長を狙う目標を掲げた。

というのもZFは2024年から直近の3年間、グローバルな自動車生産台数が、乗用車はピーク時より4~7%、6トン以上の商用車は7.5~13%ほど減少すると見込んでいる。この調整局面においても2輪から4輪車両、48トントラックまであらゆる分野で質の高い成長をするため、車両セグメントではドライブトレイン関連など先進的プロダクトのポートフォリオ化を進め、生産設備については顧客需要の変化に「フレックス生産」体制で柔軟に対応、あるいはローカルtoローカルにアプローチしていくという。

他の例として、クラインCEOは昨夏に発表した台湾フォックスコンとのジョイントベンチャーを挙げる。乗用車シャシーシステムに関する、組立をも含むジョイントベンチャー事業で50 :50出資となるが、そこで実現する売上の見込みを、数か月前の40億ユーロ(約6520億円)から50億ユーロ(約8150億円)へと、さりげなく上方修正した。それだけアジア・パシフィック市場の伸びを見込んでいるのだ。

ZFグループ 事業内容説明会

◆電動化やAI分野への投資を進め、技術革新と製品刷新へ

一方でクラインCEOは、昨今の市場で鈍化が見られるBEVに対するハイブリッドの伸長を「ハイブリッド技術のルネサンス」と形容する。北米だけでなく中国のようなBEVの成長が速かった市場でも、充電インフラなど様々な課題によってPHEVが伸びている現状だが、広義の電動化モビリティへとスムーズに移行していく過程と捉えているそうだ。いずれにしろBEVでもハイブリッドでも、より効率の高い電動化車軸や伝達装置を様々な車両セグメントに展開していく方針に変わりはなく、アメリカのサウスカロライナ工場に5億ユーロ(約815億円)を投じて拡張を進め、ドイツではSiCを用いた800Vのe-ドライブ生産のハブとなる工場を建設し、商用車に展開するという。

またパワートレイン以外の技術ポートフォリオにおいては、シャシー関連の2部門を集約。今後はヴィークルダイナミクスとステアリング&ブレーキ、ダンパー&スプリングのすべてを統合することで、バイワイヤ化を進めるとともに、「cubiX(キュービックス)」に代表される制御ソフトウェア開発を加速させるという。

ZFの新開発ソフトウェア「cubiX」の車載イメージ

《南陽一浩》

南陽一浩

南陽一浩|モータージャーナリスト 1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。

+ 続きを読む

アクセスランキング

  1. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  2. 最後のフォードエンジン搭載ケータハム、「セブン 310アンコール」発表
  3. 高機能ヘルメットスタンド、梅雨・湿気から解放する乾燥ファン搭載でMakuake登場
  4. 船上で水素を製造できる「エナジー・オブザーバー」が9年間の航海へ
  5. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
ランキングをもっと見る