「素材」から環境問題に挑戦する企業…人とくるまのテクノロジー展2024

河西工業ブース(人とくるまのテクノロジー展2024
河西工業ブース(人とくるまのテクノロジー展2024全 11 枚

人とくるまのテクノロジー展2024では、主催者テーマとして、「英知を集結しよう!カーボンニュートラル、その先の循環型社会へ」というものが掲げられた。自動車産業と環境問題は切っても切り離せないものであり、各社がカーボンニュートラルに向けて様々な取り組みを行っている。人とくるまのテクノロジー展2024でも出展企業の多くが自社の環境問題への取り組みを展示しており、注目を集めていた。本稿では、各企業から展示された様々な技術の中でも「素材」に注目して、変わりゆく自動車産業を見ていく。


リサイクルでCO₂を削減…河西工業

まず、注目したのが自動車内装部品の総合メーカーである河西工業の取り組みだ。内装部品の企業ということで自動車の天井部分の内張りである「ウレタン天井」を製造するときに、製品の外周部であたる端材がごみとして焼却処分されている問題に目をつけた。この端材は「ウレタン」「ガラス繊維」「PET繊維」などが張り合わされており、それらを分けてリサイクルすることは難しかった。そのため、各企業は焼却処分をしており、その量は業界全体で年間1万トン以上となっている。

だが河西工業は、この端材をまとめて粉砕し、「ウサペレ」として加工したものを樹脂に混ぜることで、リサイクル材として活用できるように開発を進めている。端材に含まれるガラス繊維は樹脂の強度を底上げし、ウレタンやPET繊維の成分は樹脂の使用量を減らすことができる。また、リサイクルPPにこれを15%加えた場合、材料製造時に二酸化炭素排出量を28%程度削減することができるという。

天井素材の端材を活用した内装素材「ウサペレ」

音制御開発においてもリサイクルの視点を取り入れた技術を開発。複数の素材を重ねて作っていた防音材を、1つの素材で間に空間を設けた防音材にすることで、リサイクルしやすくする取り組みも行っている。

また展示の中で目を引いたのが、樹脂にまるで皮のような加工がされたエンボストリムであった。大型成型技術の強みを生かし、自動車会社が望むデザインを表現することができるという。樹脂であってもまるで違うものであるかのように感じさせられた。

樹脂に革のような加工が施されたエンボストリム

バイオマスでサステナビリティへの挑戦…倉敷化工

次に注目した企業は、自動車用ゴム部品を製造している倉敷化工だ。防振ゴムメーカーとしてサステナビリティへの挑戦を掲げ、より多くの商品をバイオマス商品にすることを目標としている。現在開発中の技術として水溶性加硫接着剤が挙げられる。従来の加硫接着剤は有機溶剤を使用しているため、多くのCO₂や、蒸発し大気中で気体になるVOCなどを排出しやすかった。また中毒であったり、火災につながってしまうリスクも同時にあった。しかし、この水溶性加硫接着剤はVOCを削減し、その他の有機溶剤中毒や火災のリスクを低減させる効果が期待される。またカーボンフットプリントといわれる、商品のライフサイクル全体で排出された二酸化炭素の量を減らす効果がある。


《小國陽大》

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