【ドゥカティ ハイパーモタード698モノ 試乗】Vツインから生まれた最強の単気筒!夢のようなマシンに感謝しかない…小川勤

サスペンションの長い本国仕様は、モタードらしい乗り味。日本仕様はもう少しロードバイクに近い乗り味になるはず。
サスペンションの長い本国仕様は、モタードらしい乗り味。日本仕様はもう少しロードバイクに近い乗り味になるはず。全 14 枚

シンプルなシングルエンジンは性能追求が難しく、近年は厳しくなっている環境規制への対応も大きな課題。そんな現代においても高性能シングルエンジンを開発するドゥカティには、他メーカーとは一線を画す面白さがある。ドゥカティの新たに作ったスーパークアドロモノは、超ショートストロークの659ccで、市販単気筒エンジン最強の77.7ps/9750rpmを発揮する。

◆ボアは市販単気筒エンジン最大φ116mm!超大径ピストンが1万250rpmまで回る!

1199&1299のVツインエンジンの後ろバンクを使ったエンジン。綺麗に回り、レブ特性も穏やかだ。1199&1299のVツインエンジンの後ろバンクを使ったエンジン。綺麗に回り、レブ特性も穏やかだ。

ビッグシングルエンジンは、いつの時代もマイナーな存在だ。さらにシンプルが故にパフォーマンスを追求する難しさがあるのだが、ドゥカティは果敢にチャレンジ。ドゥカティらしいアイデアと最新技術で、かつてないパフォーマンスを発揮するスーパークアドロモノを開発し、それを『ハイパーモタード698モノ』に搭載してきたのである。

スーパークアドロとはショートストローク、モノはシングルの意味。ボア×ストロークは116×62.4mmで排気量は659cc。バルブ開閉機構にはドゥカティならではのデスモドローミックを組み合わせ、カムシャフトやバルブ周り、さらにクランクシャフトやコンロッドは少し前のレーサーのような仕上げを見せる。

今回試乗したハイパーモタード698モノは本国仕様。日本仕様は専用のショートサスペンションを装着し、40mmシート高が下がる。今回試乗したハイパーモタード698モノは本国仕様。日本仕様は専用のショートサスペンションを装着し、40mmシート高が下がる。

スーパークアドロモノを搭載するハイパーモタード698モノは、同社のVツインエンジンを搭載する『モンスター』よりも販売価格が高い。モタードルックのスタイリングに高級感はないが、コストがかかっているのはエンジンの中身。このアプローチはとてもドゥカティらしい。既存にはないそのパッケージはまさに新しいスポーツバイクの可能性を感じさせてくれるものである。

このエンジンの誕生は、4年前の本社の技術会議でエンジニアの1人が「1299パニガーレに搭載するVツインエンジンであるスーパークアドロをベースに単気筒エンジンを作れば、市場で最高の単気筒エンジンが誕生するだろう」と発言したことがきっかけ。そして、その場にいた会議の参加者の全員がこのアイデアを気に入り、後日その可能性を研究し、開発がスタートしたのだという。

◆信じられないほど軽く、スムーズにエンジンの回転が上がっていく!

電子制御を駆使しながら、自分の好みのライフスタイルに当てはめていくのが楽しい。電子制御を駆使しながら、自分の好みのライフスタイルに当てはめていくのが楽しい。

「ドゥカティがデスモドローミックを採用したシングルエンジンを開発する」。昨年、その話を聞いた時は心が躍った。僕は元々シングルエンジン好きだったから、このエンジンへの期待はとても大きかった。

「やっとですね。やっと」。試乗会が開催された千葉県の茂原ツインサーキットに到着すると、ドゥカティジャパンのマッツ・リンドストレーム社長が笑顔で声をかけてくれた。一足先に「ハイパーモタード698モノ」に試乗したマッツ社長からは色々感想を聞いており、僕の期待はさらに高くなっていたからだ。

久しぶりに緊張しながらセルを押すと、小気味よいサウンドと共にスーパークアドロモノは目覚めた。ブリッピングするととても軽やか。小さなメーター内でバータイプのタコメーターが踊る。

オフロードバイクを思わせる小さなメーターから様々な情報を呼び出すことが可能。モードは4種類用意されている。オフロードバイクを思わせる小さなメーターから様々な情報を呼び出すことが可能。モードは4種類用意されている。

ライディングモードは「スポーツ」「ロード」「アーバン」「ウエット」があり、「スポーツ」をセレクト。ちなみに今回の試乗は本国仕様。日本仕様は前後サスペンションが40mm下がり、シート高は本国仕様の904mmから864mmになる。

スロットルを開けるとエンジンは躍動感に溢れていた。回転が上がるほどに鼓動が跳躍し、素晴らしい加速を披露。早々にシフトアップを促される。2速、3速に入れても加速感は衰えない。タコメーターが高回転に入ると、デスモドローミック特有の伸びの良さを見せる。「なんて素晴らしいエンジンなんだ」。走り出してすぐに感銘を受けた。

スーパークアドロモノは、昔ながらのビッグシングルにありがちな低速でのドコドコした感じはない。低中回転域に振動がなく、シングルとは思えないほどどこまでも軽やか。それでいて3000rpmで最大トルクの70%を発揮する。

◆モタードパッケージとスーパークアドロモノは相性抜群!

身長は165cm、体重は68kgの筆者(小川勤)がシート高904mmの本国仕様のハイパーモタードに跨った様子。身長は165cm、体重は68kgの筆者(小川勤)がシート高904mmの本国仕様のハイパーモタードに跨った様子。

スーパークアドロモノはコンパクトなトレリスフレームに懸架され、スイングアームはエンジンから生えるピボットレス。サスペンションはフロントがマルゾッキ製でリヤがザックス製。日本仕様はサスが40mm短くなるため、ハンドリングのインプレはかなり異なるが、スーパーモタードパッケージとスーパークアドロモノの相性は抜群だった。

僕の体格だと明らかに荷重ポイントが高く、エンジンとライダーの重心が離れているような感覚があるが、そのハンドリングはどこまでも軽快。フロントがステアする感覚がかなり素早く、バイクがどんどん曲がりたがる印象だ。サスペンションはよく動く設定。ヒラヒラと舞うように走り、切り返しでは簡単にフロントを持ち上げようとする。

フロントフォークはアルミインナーチューブを採用する軽量なマルゾッキ製。フロントフォークはアルミインナーチューブを採用する軽量なマルゾッキ製。

もちろん僕は進入スライドさせるモタード乗りはできないけれど、ロード乗りもしっかり許容。それは新しいロードスポーツの可能性を感じさせてくれるほど、魅力的な世界だった。

サーキットは程々にして一般道へ。「ロード」「アーバン」「ウエット」と切り替えながら走ると、「アーバン」「ウエット」は扱いやすさが光り、「ロード」は十分な速さを披露。公道ではシングルエンジンならではの軽さと細さがより顕著に恩恵として訪れ、その軽快感とスーパークアドロモノの躍動感は、様々なバイクライフに溶け込むことを予感させた。

ハイパーモタード698モノはスタンダードと派手なグラフィックとクイックシフトを標準装備するREVを用意。ハイパーモタード698モノはスタンダードと派手なグラフィックとクイックシフトを標準装備するREVを用意。

「ハイパーモタード698モノ」は今回試乗したスタンダードと、派手なグラフィックとクイックシフトを標準装備するREVの2機種を用意。スポーティなビッグシングルエンジン好きにとってはまさに夢のようなマシンの誕生である。

ドゥカティからの新たな提案であるスーパークアドロモノは、想像通りの完璧なパフォーマンスを見せてくれた。この素晴らしいエンジンを作ってくれたドゥカティに、いちシングルファンとして深く感謝したい。そして、足着き性に緊張することなく乗れる日本仕様の「ハイパーモタード698モノ」の登場を楽しみに待ちたい。

ドゥカティ ハイパーモタード698モノと筆者 小川勤ドゥカティ ハイパーモタード698モノと筆者 小川勤

小川勤|モーターサイクルジャーナリスト
1974年東京生まれ。1996年にエイ出版社に入社。2013年に同社発刊の2輪専門誌『ライダースクラブ』の編集長に就任し、様々なバイク誌の編集長を兼任。2020年に退社。以後、2輪メディア立ち上げに関わり、現在は『webミリオーレ』のディレクターを担当しつつ、フリーランスとして2輪媒体を中心に執筆を行っている。またレースも好きで、鈴鹿4耐、菅生6耐、もて耐などにも多く参戦。現在もサーキット走行会の先導を務める。

《小川勤》

モーターサイクルジャーナリスト 小川勤

モーターサイクルジャーナリスト。1974年東京生まれ。1996年にエイ出版社に入社。2013年に同社発刊の2輪専門誌『ライダースクラブ』の編集長に就任し、様々なバイク誌の編集長を兼任。2020年に退社。以後、2輪メディア立ち上げに関わり、現在は『webミリオーレ』のディレクターを担当しつつ、フリーランスとして2輪媒体を中心に執筆を行っている。またレースも好きで、鈴鹿4耐、菅生6耐、もて耐などにも多く参戦。現在もサーキット走行会の先導を務める。

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