【MVアグスタ エンデューロ・ベローチェ 海外試乗】3気筒逆回転クランクが誘う、官能のアドベンチャー体験…佐川健太郎

MVアグスタ エンデューロ・ヴェローチェ
MVアグスタ エンデューロ・ヴェローチェ全 44 枚

MVアグスタから本格派アドベンチャーモデル『ENDURO VELOCE(エンデューロ・ヴェローチェ)』が登場。イタリア・サルディーニア島で開催された国際メディア試乗会からレポートする。

◆何故アドベンチャーモデルなのか?

MVアグスタ エンデューロ・ヴェローチェMVアグスタ エンデューロ・ヴェローチェ

MVアグスタは“走る宝石”にも例えられる、イタリアの名門ブランドだ。かつては世界GPでも、タイトルを量産するなど活躍した。現在はクラフトマンシップ溢れる、超高級スポーツモデルで知られるMVが、何故アドベンチャーモデルなのか?と疑問に思う人も多いだろう。

そこで少し説明しておくと、MVは一時2輪事業から撤退していたが、90年代には同じイタリアの2輪ブランドだったカジバの傘下で復活。カジバ時代には、ロードレース以外にもパリ・ダカールラリーにも参戦し、イタリア人ライダーのエディ・オリオリが、2度の優勝をもたらすなどオフロード界でも存在感を示した。

時は流れて2023年のEICMA(ミラノショー)で、MVアグスタは往年のレジェンドの名を冠した『LXPオリオリ』を世界限定500台のプレミアムモデルとして発表。今回、そのスタンダード版モデルとして登場したのが「エンデューロ・ベローチェ」なのだ。

◆官能的サウンドが響き渡る、新設計3気筒エンジン

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デザインは、まさにオリオリ選手がダカールで駆った、「カジバ・エレファント900」がモチーフと言える。見た目は大柄だが、跨るとタンクがコンパクトでハンドルも近く224kgの車重も軽く感じる。シート高は、850mm/870mmの調整式で、このクラスとしては標準的と言える。

エンジンは「ブルターレR」や「F3」など、現行MVが採用する水冷並列3気筒・逆回転クランクタイプだが排気量は931ccに拡大。最高出力124ps/10,000rpmの高回転パワーと、3000rpmで最大トルクの85%を発揮する低中速トルクとを両立させた新設計エンジンだ。

出力特性は全域で力強くアグレッシブ。独特の鼓動感がある3気筒エンジンは、街中でもトルクがあって扱いやすく、高速道路では大型スクリーンと一体化したカウルが効果的に空気の壁を剥ぎ取ってくれるので、伏せてなくても快適だ。そして高回転パワーが弾けるワインディングでは、イタリア製スポーツカーのような官能的なサウンドが響き渡る。個人的にはこのサウンドが一番ぐっときた。

◆逆回転クランクの採用で車体姿勢が安定

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逆回転クランクの効果だが、説明によると加速ではフロントの浮き上がりが抑えられ、減速時は後輪が路面に押し付けられるため車体の姿勢が安定しているのがメリットだとか。実際の走りで明確に分かるわけではないが、コーナーへの進入や脱出でスロットルを閉じたり開けたりするときのピッチングモーションが穏やかに感じる。車体の動きは軽快だが、フロント21インチのどっしり感もあり、しなやかな前後サスによって車体の姿勢変化を作ることで、タイトなワインディングも気持ち良く曲がっていくことができた。

電子制御も最新だ。ライドモードは4種類(アーバン、ツーリング、オフロード、カスタムオールテレイン)で、トラコンレベルも8段階で選択できるほか、コーナリングABSとエンジンブレーキコントロール、急制動で後輪リフトを抑えるRLMも搭載。クルーズコントロールに加え、最大効率での発進加速を可能にするローンチコントロールやアップ&ダウン対応のクイックシフターも標準装備。さらには、装着タイヤがオンロード用かオフロード用かによってトラコンを自動調整するなど、今までにない最新機能が盛り込まれている。

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◆本気のアドベンチャー魂を見せつけるオフロード性能

オフロードにも挑戦した。高級品イメージのMVなのでまさかと思っていたが、けっこうガチな不整地へ。フラットダートは、前後210mmのストロークを持つザックス製サスペンションに任せて3気筒パワーでぶっ飛んでいく。ちょっとした段差が続く岩場もふわりといなすなど、予想していた以上のオフロード性能を発揮してくれた。

フルサイズの前後21/18インチホイールは伊達ではなかったのだ。さすがにタイヤはオプション指定の、BS製AX41(いわゆるブロックタイヤ)に履き替えられ、「カスタムオールテレイン」モードに最適化されていたとはいえ、本気のアドベンチャー魂を見せつけてくれた。

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開発者の話では、3気筒逆回転クランクのエンジン特性に加え、新たに開発したフレームが効いているようだ。スチールとアルミ鋳造を組み合わせたオーソドックスな形状だが、しなやかな剛性感で挙動が分かりやすく、MVがアドベンチャーバイクに求める上質で快適な走りを実現できたのだとか。オフロードでの乗り味にもMVらしいこだわりはしっかり織り込まれていた。日本での発売時期や未発表だが、価格も含めて期待したい。

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■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
ハンドリング:★★★★★
扱いやすさ:★★★★★
快適性:★★★★★
オススメ度:★★★★★

佐川健太郎|モーターサイクルジャーナリスト
早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。(株)モト・マニアックス代表。バイク動画ジャーナル『MOTOCOM』編集長。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

《佐川健太郎》

佐川健太郎

早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。メーカーやディーラーのアドバイザーも務める。(株)モト・マニアックス代表。「Yahoo!ニュース個人」オーサー。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

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