[サウンドシステム設計論]高度な「パッシブシステム」を組んで1ランク上のサウンドを満喫!

「バイアンプ接続」に対応した「パッシブクロスオーバーネットワーク」を付属するスピーカーの一例(フォーカル・ES 165 KX2E)。
「バイアンプ接続」に対応した「パッシブクロスオーバーネットワーク」を付属するスピーカーの一例(フォーカル・ES 165 KX2E)。全 3 枚

愛車のサウンドシステムを進化させようとするときには、「どんなシステムを組むか」を思案することも楽しみどころとなる。当連載では、その選択肢の1つ1つを取り上げ、それぞれの利点や実践法を解説している。今回は、「高度なパッシブシステム」について説明する。

◆パワーアンプの後段で帯域分割が行われる「パッシブシステム」には、高度な形がある!?

最初に、「パッシブシステム」とは何かをおさらいしておこう。これはつまり、マルチウェイスピーカーを鳴らすとき、音楽信号の帯域分割をパワーアンプの後段にて行うシステムのことを指す。で、その場合の信号の帯域分割は、スピーカーに付属している「パッシブクロスオーバーネットワーク」にて実行されることとなる。

で、「パッシブシステム」には、高度なやり方が1つ存在している。それは、「バイアンプ接続」だ。

これと通常の「パッシブシステム」との違いは以下のとおりだ。通常の「パッシブシステム」ではパワーアンプの出力は「2ch分」が使われるのみだが、「バイアンプ接続」ではパワーアンプの「4ch分」の出力が使われる。この点が最大の違いだ。

もう少し詳しく説明しよう。まず「バイアンプ接続」を実行するには、市販スピーカーに付属している「パッシブクロスオーバーネットワーク」が「バイアンプ接続」に対応している必要がある。で、対応していないものは入力端子が1系統しか装備されていないが、対応しているものは入力端子が2系統備わっている。

つまり、ツイーター用の入力端子とミッドウーファー用の入力端子とをそれぞれ個別に持っている。なので、フロントスピーカー用の出力をミッドウーファー用の入力端子に接続し、リアスピーカー用の出力をツイーター用の入力端子へと接続する。この接続法が「バイアンプ接続」だ。

◆「バイアンプ接続」ではリアスピーカーは鳴らせなくなるが、音的な利点を獲得可能に!

というわけなので「バイアンプ接続」に対応している「パッシブクロスオーバーネットワーク」では、内部回路内で信号の分割は行われない。入力される段階ですでに2つに分かれているからだ。そのかわり「パッシブクロスオーバーネットワーク」の回路内では、ツイーター用の信号の中低音信号のカットと、ミッドウーファー用の信号の高音信号のカットがそれぞれ行われることとなる。

ところで「バイアンプ接続」を行う場合には、それまでできていたことが1つできなくなる。それは、「リアスピーカーを鳴らすこと」だ。リアスピーカー用の出力をツイーター用の信号として使うこととなるからだ。

ちなみに、フロント出力がミッドウーファー用の出力として使われることとなるのは、メインユニットがAV一体型ナビだった場合にフロントスピーカー用の信号にはナビ音声も含まれることとなるからだ。もしもこれをツイーター用の出力として使うと、ナビ音声は主には中音なのでナビ音声がほとんどカットされて聞こえなくなる。

で、このような「バイアンプ接続」をすることでどのようなメリットが得られるのかというと…。

それは主には2つある。1つは「スピーカーの駆動力が上がること」で、もう1つは「より詳細なサウンドチューニングを行えること」だ。

◆パワーアンプを贅沢に使えるようになることで、スピーカーをトルクフルに駆動可能に!

それぞれがどういうことなのかを説明していこう。まず「スピーカーの駆動力が上がる」のは、パワーアンプの2ch分の出力で計4つのスピーカーユニットを鳴らしていたのを、計4ch分の出力にて4つのスピーカーを鳴らせるようになるからだ。リアスピーカーは鳴らなくなるが、その出力もフロントスピーカーに使えることとなり、それが音にも良い結果をもたらすのだ。

そして「より詳細なチューニングが行える」というメリットは、使用するメインユニットに「タイムアライメント」という機能が搭載されているときに現れる。

「タイムアライメント」とは、近くにあるスピーカーの発音タイミングを遅らせられる機能だ。これを駆使するとすべてのスピーカーの音が同時に耳に届くようになる。しかし通常の「パッシブシステム」では、ツイーターとミッドウーファーとが別々の場所に取り付けられていてもそれらを「1つのスピーカー」として扱わざるを得ない。

しかし「バイアンプ接続」を実行すると、フロント出力にかける「タイムアライメント」をミッドウーファー専用として使えるようになりリアスピーカー用の「タイムアライメント」をツイーター専用として使えるようになる。結果、すべてのスピーカーから等距離の場所にいるかのような状況を擬似的に作り出せるようになる。かくしてステレオイメージの再現性がアップする。

今回は以上だ。次回は「外部パワーアンプを使ったパッシブシステム」について説明する。お楽しみに。

《太田祥三》

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