【BYD シール】低迷のセダン市場でも「十分戦える」、強みは充電性能と価格競争力

BYDのフラッグシップとして日本に導入されたEVセダンの「シール」
BYDのフラッグシップとして日本に導入されたEVセダンの「シール」全 16 枚

BYDは6月25日、EVセダン『シール(SEAL)』の販売を開始した。シールはBYDのフラッグシップモデルとして、ブランドの認知度とイメージ向上を図るとともに、「e-スポーツセダン」としてのポジションを確立することを目指す。


今回導入されるシールは、後輪駆動モデルとAWDモデルの2グレード。それぞれ希望小売価格・バッテリー容量・航続距離(WLTC申請中)は以下の通り。

・後輪駆動:528万円(税込)/82.56kWh/640km
・AWD:605万円(税込)/82.56kWh/575km

また導入記念キャンペーンとして、それぞれ33万円引きの495万円・572万円の特別価格が1000台限定(2グレード合計)で適用される。

経済産業省のCEV補助金は現在申請中ながら、『ATTO3』や『ドルフィン』と同じ35万円が適用されることになるだろう。そうすると実質460万円・537万円となる。これに加えて自治体によっては補助金が出るところがあり、例えば東京都では45万円が適用される。

◆低迷のセダン市場でも「十分戦える」、PHEV導入は

25日、シールのプレス発表会に登壇したBYD Auto Japanの東福寺厚樹 代表取締役社長は、「シールは、今後のBYDブランドを力強く牽引するフラッグシップモデルとして重要な戦略モデルであり、それにふさわしい性能、装備、さらに価格を十分意識して設定しました」と説明した。

そのコメントの通り、価格設定は意欲的なものとなった。ATTO3との価格差は45万円(導入記念キャンペーン価格)となり、性能や装備の差から考えるとバーゲンプライスと言えるだろう。

そのシールの販売目標について東福寺社長は、「目標はズバリ(導入記念キャンペーンの)1000台を早く売り切ること」と応えた。そして、「シールが出たらすぐに買いたいというお客様が約100人、試乗してから検討するという方も300人ほどいらっしゃいます」とすでに販売の手応えをつかんでいることを明かした。

いっぽう、今回のシールはセダンということで、日本市場では厳しい戦いが予想されるカテゴリでもある。このことについては、「世界的に見てセダンというスタイルは基本かつ王道のひとつであり、静粛性やトランクルームの使い勝手の良さなどセダンならではの特徴もあります。いいクルマであれば注目度も上がると期待していますし、その意味では十分戦える、戦闘力の高い商品を手に入れたと感じています」と期待を語った。

そして気になる今後の車両導入計画については、「1年に1車種以上の新型車を継続的に導入していく」とし、また現在中国で好調が伝えられるPHEVについては、「現在検討課題となっており、まだ具体的にお話しできる状態ではありません」と説明した。

BYDはこれまで、日本市場においてはEVに集中して市場を開拓していくと一貫して説明してきたが、今回はPHEVの導入を否定しない内容となっており、今後に含みを持たせた形となった。

◆チャデモ90kWで40kWh充電の凄み

シールの充電性能の高さについて、BYD Auto Japan マーケティング部部長の遠藤友昭氏は、時間を割いてアピールした。ATTO3・ドルフィンも、充電性能の高さは他のメーカーのEVと比較して優れていたが、シールはさらにその上を行くという。

「シールの車両側の充電性能は、これまでのBYDモデルの中で最も高い105kWです。チャデモ90kWの急速充電器で30分充電した結果、42kWhの充電ができました。30分間、80kW以上をほぼ一定でキープしていることがわかります。」

90kWの急速充電器で30分間充電すると、理論値は90kW × 0.5h = 45kWh となるが、それほど効率よく充電できるEVは存在しない。EVの車種にもよるが、理論値の7掛け前後だと思っておいた方が安心だ。それをシールは、9掛け以上で充電できたということになる。

急速充電時の充電量は、EVの使い勝手に大きく影響する。こういった部分の性能の高さは、さすが中国の厳しいEV市場を勝ち残ってきたメーカーだと感じるところだ。

そしてこの充電性能は、テスラとの比較においても注目すべきポイントになる。テスラは、スーパーチャージャーで充電する場合は充電能力が高いが、現在のところチャデモよりも割高になるケースが多く、またチャデモで充電する場合は10万円ほどするアダプターが必要で、最大出力は50kWに制限されることになる。

高速道路に設置されているチャデモ充電器でも充電能力が高いという点が、シールの差別化ポイントのひとつになるだろう。

そのほか遠藤部長は、充実した安全装備についてもアピールした。「運転支援システムはもちろん、幼児置き去り検知システムをはじめとした安全装備も満載しております。さらに日本独自の装備として、ペダルの踏み間違いを規制する誤発進抑制システムを追加。こうしたテクノロジーを搭載したシールは、欧州の安全性評価プログラムEuro NCAPで最高評価5つ星を獲得しております」

◆ATTO3、ドルフィンとは一線を画す仕立てと走り

シールAWDモデルに短時間ながら試乗する機会を得たので、簡単に印象を記しておきたい。

第一印象を一言でいうと「滑らか」。アクセルレスポンスや乗り心地、各種スイッチの感触、インテリアの質感、インフォテインメントの動作なども含め、高級車然としたタッチに統一されており、以前試乗したATTO3やドルフィンとは一線を画す仕上がりだ。


《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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