三菱『トライトン』でアジアラリー王者奪還へ、過酷な2400km「クルマと人を鍛え市販車の技術に」

AXCRに参戦する三菱『トライトン』のラリーカー
AXCRに参戦する三菱『トライトン』のラリーカー全 26 枚

三菱自動車は4日、技術支援する「チーム三菱ラリーアート」が、8月11日~17日にタイ南部~中部で開催される「アジアクロスカントリーラリー」(以下、AXCR)に新型『トライトン』の4台体制で参戦すると発表した。昨年の挑戦では3位に終わったが、新体制のもと優勝をめざす。

AXCRに参戦する三菱『トライトン』とチーム三菱ラリーアートAXCRに参戦する三菱『トライトン』とチーム三菱ラリーアート

新型トライトンは三菱として久々に国内導入されたピックアップトラックで、発表以来多くの反響を呼んだ。2月より販売を開始したが、6月末時点で2900台以上を受注、これは月販目標200台を大きく超える水準で推移していることを示す。5月末時点で1100台が届出(納車)されているという。全長5.3mを超える巨体でありながら、SUVのような軽快なハンドリング、ハイパワーなディーゼルエンジン、三菱ならではの4WD技術による走行性能の高さも人気の理由だ。

そんな新型トライトンで三菱はAXCR優勝をめざす。2022年にアジアなどで販売されていた従来型トライトンで初参戦した際には、参戦初年度で総合優勝。新型に切り替えた2023年での活躍も期待されたが惜しくも総合3位となっていた。

「チーム三菱ラリーアート」はタイのタントスポーツが運営、三菱からはダカールラリーで2連覇した実績をもつレジェンドドライバーの増岡浩氏が総監督として参画。開発部門のエンジニアが参戦車両の開発を行うとともに、競技期間中はチームに帯同してテクニカルサポートを行う。

AXCRに参戦する三菱『トライトン』のラリーカーAXCRに参戦する三菱『トライトン』のラリーカー

今年のドライバー/コドライバーの布陣は、2022年大会で総合優勝を果たしたチャヤポン・ヨーター(タイ)/ピーラポン・ソムバットウォン(タイ)、2023年大会で日本人ペア最上位の8位となった田口勝彦/保井隆宏を引き続き起用。経験豊富で三菱車を熟知するサクチャイ・ハーントラクーン(タイ)/ジュンポン・ドゥアンティップ(タイ)、さらに三菱開発部門のテストドライバーである小出一登、そのコドライバーにはAXCRで入賞経験のある千葉栄二を起用した。

前者3台は2024年仕様として開発された車両、小出ドライバーの車両は実績のある昨年2023年仕様での参戦となる。

ラリー仕様のトライトンは昨年の参戦結果を振り返り、高速ステージで大排気量の競合車に対抗できるよう動力性能を大幅に向上。トルク容量の大きい6速シーケンシャルの競技用トランスミッションを新たに採用し、耐久性と操作性を向上させた(昨年まではHパターンのMT)。またトレッドを9cm拡大するとともにリヤサスペンションをリーフスプリング式からコイルスプリングを用いた4リンクリジッド式に変更することで荒れた路面からの大きな衝撃を吸収し、凹凸の激しい路面での追従性を高めることで悪路走破性を大幅に向上させるなど、戦闘力をアップさせている。

チームは6月21日~27日にタイの中央、カオヤイ国立公園周辺のオフロードコースで本番を想定した高負荷の耐久テストを実施。今回の耐久テストでは、7 日間で約800km走り込み、加速性能を強化したエンジンや車体の信頼性・耐久性を確認しながら、2400kmもの距離を走破するAXCR本番に向けた調整を行った。

チーム三菱ラリーアート増岡総監督(右)と田口勝彦選手(左)チーム三菱ラリーアート増岡総監督(右)と田口勝彦選手(左)

「現役時代よりも忙しい」と話す増岡総監督は、今回の参戦に向けて意気込みを語る。

「昨年は発売直後の新型『トライトン』で2連覇に挑みましたが、ポテンシャルを十分に引き出すことができず3位入賞に終わりました。今年の『トライトン』は主に動力性能と悪路走破性を大幅に高め、4台体制に強化して王座奪還に挑みます。また今年は、これまで数十年にわたり、私と一緒に三菱車の開発に携わってきたテストドライバーである小出が参戦します。『過酷なモータースポーツ現場での経験をクルマづくりに活かす』という三菱自動車らしいクルマづくりの伝統を、次の世代にしっかりと受け継いでいきたいと考えています」

AXCRはアセアン最大規模のクロスカントリーラリーで、今年は29回目の開催。タイ・スラタニでのスタートからタイ国内をミャンマーとの国境に沿うように北上し、バンコクから130km西に位置するカンチャナブリでゴールを迎える。総走行距離は2400km、スペシャルステージと呼ばれる競技区間はその内 1000kmを超える見込みで、コースは山岳部、密林地帯、川渡りなど変化に富み、走破性と耐久性、さらに今年はスピードが問われる難コースが予想される。三菱はこの厳しい環境下でクルマを鍛え上げ、将来の市販車への技術フィードバックをめざす。

《レスポンス編集部》

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