EV普及の鍵は中古EV市場が握る…日本総研がEV電池サーキュラーエコノミー市場8兆円と予測

日本総研は、EV電池のサーキュラーエコノミー市場が2050年までにおよそ8兆円規模まで拡大すると予測
日本総研は、EV電池のサーキュラーエコノミー市場が2050年までにおよそ8兆円規模まで拡大すると予測全 7 枚

日本でEVが普及しないのは、充電インフラや航続距離などが主因とする分析が多い。しかし、これは従来の自動車市場を基準としたもの。次世代自動車産業のバックグラウンドでもあるエネルギー産業、モビリティ事業、SDVや自動運転ビジネスなどを考えると、違った市場が見えてくる。

日本総合研究所(日本総研)は8月22日、国内サーキュラーエコノミーにおけるEV電池の市場予測について発表を行った。発表に際し、メディア向けのレクチャーも開催。日本総研 創発戦略センター シニアコンサルタント 籾山嵩氏が登壇した。


サーキュラーエコノミーと3Rとの違い

籾山氏によれば、現状、国内においてサーキュラーエコノミーの市場は小さいものの、今後2050年までにおよそ8兆円規模までの拡大が予想されるという。

2050年までの市場規模の推移

サーキュラーエコノミーは「資源消費を最小化し製品の使用価値を最大化」するものと定義し、その特徴と意義は、製造業など製品の供給側だけでなく利用者の取り組みによって新たな価値を創出する点にあるとする。類似の言葉に3Rやリサイクル社会がある。3R(リサイクル、リユース、リデュース)やリサイクル社会は、廃棄物を減らしたり資源を有効活用する取り組みであり、その責任は主に製造業にあるとする、いわば環境活動である。これに対してサーキュラーエコノミーは、廃棄物も含めて経済活動を循環させ付加価値を創出する経済活動だ。

つまり、サーキュラーエコノミーは、新しい市場創出や経済活性化の方法論であり、従来の環境活動とは一線を画すもの。とくに従来モデルは、製品の保守や再利用を製造メーカーやサプライヤーが主導する形だが、今後は利用者が主導する形が重要だともする。

従来型リサイクルとサーキュラーエコノミ―の違い

例えば自動車の3Rでは、鉄やプラスティックなどにリサイクル素材や再生品を使うことが多かった。リサイクル部品を新車に使ったり、別製品へのリサイクルも一部であったが、主にメーカーが社会的要請に応えるためと、資源消費を最小化してコストダウンを図るためのサイクルだった。サーキュラーエコノミーでは、メンテナンスやリース・再販売、リファービッシュ、リビルドのような形態も積極的に取り入れる。中古車も比較的短期での循環を考える。そのため、シェアリングやモビリティサービスなど自動車産業以外の市場とも連携して、新しいビジネスやイノベーションを加速する。SDVやOTAのようなトレンドとも整合するが、車両の利用時の価値を追求することで、CO2削減や社会コスト削減などの社会的価値を高める。

EV普及が遅れる日本ではバッテリーの数が足りない

自動車におけるサーキュラーエコノミーは、EVバッテリーをベースとしたサイクルが考えられる。EVのバッテリーは、定置型蓄電池としてのリユースに加え、都市鉱山としてコバルトなどレアアースのリサイクルが有力視されている。

そのためには「EV中古車市場の確立がポイントとなる」と籾山氏は言う。EVバッテリーを従来の3Rからサーキュラーエコノミーとして活用するにしても、まずリユースやリサイクルのためのEV市場の拡大とその中古車市場が起点となるからだ。

だが、当然課題もある。そもそもEV普及が遅れている日本ではリユースやリサイクルできるバッテリーの総量が足りない。中古EVの残価も低いため国内利用が進まず、国内の多くの中古EVは海外に流れている現実がある。リユースバッテリーの不足については、4Rエナジーの担当者も「中古バッテリーはあればあるだけ買い取りたい」と言うくらい、国内では供給不足となっている。そのため、EV市場が拡大しない悪循環さえ起きている。

ちなみに籾山氏らの調査によれば、中古EVの輸出台数は、2020年に7000台くらいだったものが21年から1万台を超えるようになり23年には2万台の中古EVが海外に輸出されている。輸出先でみるとロシアが37%とトップであり、ニュージーランド26%となっている。経済制裁の対象となっているロシアへの輸出は今後さらに厳しくなると予想される。中古車価格やバッテリーの再利用コスト、レアメタルの価格動向しだいでは、国内サーキュラーエコノミーに組み込むより中古EVの輸出産業としたほうがよいとなる可能性もあるが、いずれにせよ使えば資源となる中古EVが海外に輸出(富の海外流出)されてしまうことの影響は考える必要があるという。

中古EVの多くが海外に流出

EVバッテリーのサーキュラーエコノミーを構成する3つの市場

籾山氏は、EVバッテリーのサーキュラーエコノミー市場は、1)中古EV関連市場、2)リユースEV電池関連市場、3)EV電池リサイクル関連市場の3つで考えているという。


《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

+ 続きを読む

アクセスランキング

  1. ダイハツ『ラガー』30年ぶり復活か?…土曜ニュースランキング
  2. 新東名・NEOPASA浜松で「“航空祭”フェスティバルIV」開催! 6月13日から
  3. トヨタ『ライズ』がRAV4デザインに!? 次期型が驚きの進化、国内トップSUVの最新情報
  4. 乗り心地重視・ヘタリ永久保証、タナベから『デリカミニ』用カスタムスプリングが発売
  5. ファン付きウェアの「熱風問題」を解決! アールエスタイチ、バイク用冷却ウェアの技術を“プロの現場”へ
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. ジェイテクト、「製造業データ等のAI-Ready化に関する研究開発」に参画…図面やマニュアルなど非構造化データを構造化
  2. BYD、Huawei、Xpengが示す中国自動車産業の次なるステージとは…匠新[インタビュー]
  3. ダイフク、520億円の成長投資でマザー工場再開発とドイツ企業買収…2030年に売上高1兆円へ
  4. AIドライブレコーダーで道路損傷を自動検出、「道路巡回ソリューション」共同開発…電気興業とサイバーコア
  5. JFEスチール、スポット溶接安定化技術が国内自動車メーカーの部品に初採用…高強度鋼板の適用拡大に貢献
ランキングをもっと見る