◆スーパーメテオ650をベースにしたクルーザーモデル『ショットガン650』
創立から120年以上の歴史を持つロイヤルエンフィールド。イギリス発祥のモーターサイクルブランドは今はインド企業の資本のもと活動し、生産も現地にておこなわれている。その数、年間90万台というとてつもない規模を誇っているのは意外や知られていない事実である。しかし知られていないのは、そのモノづくりの本質をしっかりと見極めて製品づくりがされているということである。

とくにここ10年で大きな革新が図られ、僕自身も2輪メーカーにおけるその立ち位置と本気度を知って衝撃を受けたのはここ最近の話で不勉強さを恥じたばかりである。現在は大きく分けて3種類のエンジンをラインナップ。もっとも大きな排気量は648ccの空冷ツインエンジンで、それをいくつかのバリエーションモデルに搭載している。今回国内発売される運びとなったショットガン650は、昨年リリースされたクルーザーモデル、スーパーメテオ650をベースとしたマシン。フレーム構造は基本的に共通で、ホイールはスーパーメテオのフロント19、リア16インチに対し、フロント18、リア17インチを装着する。
◆フラッグシップモデルに恥じない質感と存在感
650ccのマシンとしては大柄な車格であるが、同社としてはフラッグシップモデルともいえるわけで、それに恥じない質感や存在感を備えている。また、実車のほうが迫力があり、写真で見るよりもはるかにデザイン性が高いことがわかる。ライダーが乗車した際のパッケージでの美しさもしっかり考慮されているのも大きなポイントだろう。

ハンドル位置は適度に低め。シート高もそこまで低いわけではなく、足つき性が抜群に良いという印象はないものの、重心が低めで不安要素は少ない。見た目の印象から、クルーザー色の強いモデルかと想像していたが、ネイキッドモデル的ライディングポジションで違和感なく、スッと身体に馴染むものとなっている。
車重は240kgと650ccのモデルとしてはなかなかの重さを誇る。しかしカテゴリーを考えれば、それがマイナス要因にはなっていない。重すぎれば扱いが難しくなるし、軽すぎれば手応えのようなものが希薄になる。美味いバランスのうえに設定されているように感じられた。また、重量増につながった要因としては、コスト的なものも少なからずあるとは思われるが、徹底した頑強さを求めた結果でもあるだろう。なんだか乗っていても無類の頼もしさを感じさせるのがこのマシンのキャラクターにつながっており、そのうえで走行性能をしっかりと得ているのが感じられる。

◆しっかりと作りこまれたフィーリングが心地よい
ギアを1速にシフトし、発進。程よいトルク感に脳内がリラックスしていく。開けはじめのフィーリングが実によく作り込まれているのがポイントだ。エンジンマネージメント担当の方からその領域に相当の時間をかけて取り組んでいるとお話を伺ったが、それも頷ける。作り込んだと表現しているが、実際はこれが実に自然で人為的わざとらしさが皆無の単純に気持ちの良いエンジン性能なのである。

トルクをうまく利用して、早めにシフトアップ。耳に心地よい排気音とあいまってクルージングが気持ち良い。あまり飛ばさなくても楽しめる、このスピード域でのフィーリングをしっかりと作り込んでいるのがわかる。クラシックな見た目から、のんびり走らせることに的を絞ったテイスト系モデルかと思いきや、意外やしっかりと伸びのあるエンジンパフォーマンスを備えているのも嬉しい。ただトコトコとのんびり走らせるだけでなく、スポーティな一面も備えているのである。
ハンドリングは非常に素直で挙動は穏やかながら意外やスポーティにも走らせられる。前後に装着されるサスペンションはSHOWA製で、その動きも安っぽいものとはなっておらず、しっとりとした落ち着きと乗り心地の良さを備えている。ちょっと多めにバンクするとすぐにステップが接地してしまうため、激しいライディングはご法度ながら、剛性もしっかりと確保されており、その手応えが安心感につながっている。扱いやすいエンジンと相まって、その潜在能力は想像以上に高いと感じられた。

◆バイクの楽しさの本質を味わわせてくれる『ショットガン650』
また、ここからさらに自分仕様のショットガンに仕上げていける素材としての大きな可能性も秘めている。このモデル自体がカスタムシーンにインスパイアされて登場したという経緯もあって「簡単なステッカーチューンから大掛かりなモディファイまで自由なカスタマイズを楽しんでほしい」と本社スタッフは語る。それらを許容するベースモデルとしても、しかもこの水準のマシンをこの価格で買えるということもセンセーショナルなトピックであろう。
もちろんカッコだけでなく、走行性能。そしてその乗り味をしっかりと突き詰めたからこそ、その可能性に広がりを見せていることは確かだ。排気量の設定を含め、ライバルの動向を気にせず「ピュア・モーターサイクル」を追求したことで、オリジナリティ溢れるだけでなく、素晴らしい性能を得ている。日本の道路事情にも非常に高いマッチングをみせ、手に余ることなく、あらゆるシチュエーションを様々なレベルのライダーが楽しめるマシン。多くのブランドが忘れかけていた、バイクの楽しさの本質を味わわせてくれるマシンとなっていた。
