【マツダ CX-80】CX-60にはない“色”と全く同じ“内装”、「出し惜しみしない」マツダの高級車戦略

新色「メルティングカッパーメタリック」のマツダ CX-80
新色「メルティングカッパーメタリック」のマツダ CX-80全 24 枚

マツダは3列シートを備えたフラッグシップSUV『CX-80』の日本仕様を、2024年秋に発売予定だと発表した。後輪駆動プラットフォームや、パワートレインは先に発売された『CX-60』と共通ながら、エクステリアデザインでは差別化が図られた。そのひとつが「色」だ。一方で、あえて完全に共通化したものもある。それがインテリアデザインやCMF(色、素材、表面処理)。変えたもの、変えなかったもの、その理由についてマツダデザイン本部主査の玉谷聡さんに話を聞いた。

詳細画像:マツダ CX-80のボディカラーとインテリア


◆カラー戦略の「ピラミッド構造」

新色「メルティングカッパーメタリック」のマツダ CX-80新色「メルティングカッパーメタリック」のマツダ CX-80

ボディーカラーではCX-80のデビューに合わせて新色が登場した。それが「メルティングカッパーメタリック」だ。この説明の前に、マツダのカラーラインナップの考え方を明確にしておく必要がある。

マツダにはカラー戦略のピラミッドがある。最上段はブランドを象徴するブランドサポートカラー、いわゆる「匠塗り」のエリアだ。玉谷さんによると、「一括でカラーを作っていくので戦略的にやっていきます。まずブランドを象徴していくもの。ここは技術的にもデザイン表現としても匠塗りといえる表現をしています。もちろん技術的にもお金もかかっていますので対価をいただいてご提供しています」。

中段は新たな価値を創出していくニューバリューカラーで、時代性を反映させたり、クルマのキャラクターによって入れ替えていくもの。そして最後はベーシックな思考に応えるスタンダードカラーだ。玉谷さんは、「定番といわれるシルバー系や、ダークブルー系、黒などを押えていくところです。白もそこにあるんですが、匠塗りの中にロジウムホワイトもありますので、白も本当にベーシックなソリッドな白と、匠塗りのものとを両立していくよう戦略的に組み立てています」と述べた。

マツダ CX-80マツダ CX-80

そしてCX-80では上段のブランドサポートカラーにある匠塗の第4弾、「アーティザンレッドプレミアムメタリック」を採用。そして中段のニューバリューカラーにメルティングカッパーメタリックを取り入れた。

アーティザンレッドプレミアムメタリックはラージ商品群の専用色として開発した色で「これまでにない深みと上質感を表す色」とし、ラージ商品群の中でも、上質表現に特化させたCX-80と『CX-90』(北米向けのより大型な3列シート車)に採用されている。

匠塗り「アーティザンレッドプレミアムメタリック」のマツダ CX-80匠塗り「アーティザンレッドプレミアムメタリック」のマツダ CX-80

◆若手女性の発案で採用した「メルティングカッパーメタリック」

メルティングカッパーメタリックは、「銅を溶かした表面に少しサンドブラストをかけたような新しいニュアンスの色です」と玉谷さんは説明するが、この色には3つの特徴があるという。

1つ目は、アルミフレークが非常に細かいこと。これによって緻密感を表現しており、薄いベールが被っているように見えるのもこのアルミフレークの特徴だという。2つ目は、塗料の中に黒い顔料をわずかに混ぜ込んでいること。これにより落ち着いた深みを表現している。3つ目は、赤と黄色の顔料を絶妙にブレンドすることで、程よい嫌みのない彩度を保っているという。玉谷さんは「色気と上品さのあるこの色はスポーティーな演出も優雅な演出のどちらにも適したカラーです」と語る。

世の中の様々な要因からカラーにもトレンドがある。近年カッパー色も出始めていたことから、「マツダがカッパーを採用すると、どんなカッパーができるかという興味もあって開発を見ていましたが、良いものになりそうだという予感がしたので、継続して開発してもらったんです」という。

新色「メルティングカッパーメタリック」のマツダ CX-80新色「メルティングカッパーメタリック」のマツダ CX-80

このカラーは若手の女性による発案だったそうだ。「ここ10年ぐらいの魂動デザインの中だけでイメージすると出てこなかった色です。いろんなライフスタイルやサブカルチャーにも触れている若手の発想はすごく大事だと思うし、このカッパーが良いなと思ったのは、ニュアンスが他と違うということがあったから」と採用の理由を明かす。

そこから感じたのは、「いままでのブラウン系のイメージにスポッとはまってしまうような固定的なイメージではなく、中庸性、寛容性を持っている感じがしたんです」と玉谷さん。「ブラウンと違ってカッパーは凄く微妙です、色合いがちょっとでも赤っぽくなると生の銅のように感じますし、少しでも黄色い方に振れていくとすごく彩度の低いもの、仏壇チックに振れるなどイメージがどんどん変わる」という。それが、「すごく中庸なところで勝負できている、ちょっと落ち着いて見えるんですね」。その理由は、「ちょっと黒を混ぜて引き締めているから。空が映るとその青さが少しダーク系の黒と反応して不思議な締まり方をするんです。そういうところもすごくいい」と語る。

マツダ CX-80とデザイン本部主査の玉谷聡さんマツダ CX-80とデザイン本部主査の玉谷聡さん

実はこのカラーの開発時にはまだCX-80は完成しておらず、CX-60に塗って検証していった。それは、「面質にちゃんとマッチするのかということと、この大きいボディーサイドや、大きな車体にマッチするのかを見極めたかったから」。そこで高く評価されCX-80への採用が決まった。

これを裏返してみると、CX-60で採用しても大丈夫ということになる。実際、CX-80専用色というわけでなく、今後ニューバリューカラーとして、他車種でも採用のリクエストがあれば使える色にしたいという。

◆CX-60の時点で「出し惜しみをしなかった」

マツダ CX-80マツダ CX-80

エクステリアは、カラーを含めCX-60との差別化が図られたCX-80だが、インテリアのデザインはCMF(色、素材、表面処理)を含め全く共通だ。その理由について玉谷さんは、「マツダの企業規模と体力でラージ4車系を揃えるのは大変なことなんです。そこでアメリカ市場に合わせたものと、ヨーロッパと日本市場に合わせたラージ車系をきちんと出していくためには、戦略的に賢く作っていかないと、利益を出し切れず厳しい状況に陥ってしまいます。その経営効率性は計画されたものがありました」とその背景を説明する。

例えばCX-60“だけ”を見ると、多彩なインテリアのバリエーションがある。玉谷さんは、「フラッグシップとして通用するインテリアを用意して、CX-60で全部それを出しました。本当はCX-80用に出し惜しみをすることもできたのかもしれません。しかし、我々がラージで進出していく、最初の段階から(インテリアのバリエーションを)武器として使っていこうとしているのです」と話す。

マツダ CX-80マツダ CX-80

ただし今後としては、「完全な電駆化になるまでラージは我々のフラッグシップとして、そしてデザインの表現として長く生きていきますから、その中で、例えばCX-60とCX-80、CX-70とCX-90というラインナップの中で、スポーティー系と上質なというキャラクター分けをしていくとしたら、そこにインテリアのコーディネーションもいろいろ計画していきたいという思いがありますし、多分いろいろやっていくでしょうね」と正直な気持ちを語ってくれた。

出し惜しみせず、最初からすべてを見せてたラージ商品群のインテリアコーディネート。価格帯が高い車種だからこそ要望は強くなることだろう。マツダは細やかな年次改良でインテリアの刷新をおこなう例もある。今後の展開にも期待だ。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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