富士スバルラインに登山電車、1兆5600億円の経済効果---山梨県が事業化に関する調査結果を公表

河口湖畔から見る富士山
河口湖畔から見る富士山全 5 枚

山梨県は9月20日、富士山登山鉄道構想の事業化検討に関する調査結果「富士山登山鉄道官民連携方策検討調査」を公表した。鉄道の敷設・運営に関するスキームは「上下分離」方式が適切、経済波及効果は累計1兆5600億円、雇用効果は延べ12万人と予想される。


◆富士山の保全と適切な利用

山梨県は、富士山の価値を守り、さらに高め、今後の日本の観光のあるべき姿を体現していくための試みとして「富士山登山鉄道構想」を策定。富士山では来訪者数の増加に伴い環境負荷が懸念されており、環境保全と適切な利用との調和が必要とされている。

構想では、これからの富士山五合目アクセス交通の在り方および登山鉄道の基本方針として、既存の有料道路の富士スバルライン上にLRT(次世代路面電車)を敷設する案を想定している。

調査では、登山鉄道構想の事業化に関する「前提条件の整理」「事業スキームの検討」「事業収支の分析」などについて、2023年度の国土交通省の補助金を受けて調査を実施した。調査事業者はデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社。

◆調査結果

●鉄道の敷設・運営に関するスキームは「上下分離」方式が適切

検討された鉄道の敷設・運営に関するスキームは、(1)鉄道・駅舎・車両・付帯設備のすべてを県が所有し、運営も県自らが行う「公設公営」、(2)施設・車両はすべて県が整備所有し、運営は民間が独立採算で行う「上下分離-A」、(3)鉄道・駅舎は県が、車両・付帯設備は民間が整備所有し、民間が独立採算で運営する「上下分離-B」、(4)施設も運営も民間が独立採算で行う「民設民営」の4方式。

調査の結果、「上下分離-B」が官民のリスク分担として最もバランスが取れていることがわかった。この方式だと40年間運用で、年間利用者数300万人、利用者単価1万円、設備投資額合計1566億円想定で、県も民間も採算ベースに乗る。リスクについては、利用者数が50%減少した場合でも、設備投資が50%増加した場合でも黒字を維持できるという。

収支は「上下分離-B」の場合、県が1848億円の黒字(うち設備投資856億円支出)、設備投資をのぞいた収支は年間24億8000万円の黒字。民間の収支は4207億円の黒字(うち設備投資716億円支出)、設備投資をのぞいた収支は年間87億3000万円の黒字となっている。また年間の営業費用は人件費12億円、修繕費7億6000万円、動力費2億1000万円、その他経費13億円として計算されている。

●経済波及効果は40年運用累計で1兆5600億円

鉄道・周辺事業一体での経済波及効果を試算したところ、40年運用の累計で直接効果が1兆0957億7200万円、間接効果が4663億5500万円で計約1兆5600億円となった。雇用効果については、40年運用で延べ12万0273人(年間3007人)となった。


《高木啓》

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