【ヤマハ MT-09 SP 試乗】同じ車名とは思えない!? 圧倒的な質感に驚いた…小川勤

ヤマハ MT-09 SP
ヤマハ MT-09 SP全 26 枚

◆ここまで質感の高いスポーツバイクは思いつかない

モデルチェンジしたばかりのヤマハ『MT-09 SP』に対面して驚いたのは、圧倒的な質感。頭の中でいろいろなバイクを思い浮かべるものの、900ccクラスのバイクでここまで質感の高いスポーツバイクは思いつかない……。

詳細画像:ヤマハ MT-09 SP

前モデルと車名は同じ、しかしデザインのまとまりやディテールのクオリティは飛躍的に向上している。これまで『YZF-R1』や『MT-10 SP』などに与えられていた質感を、MT-09 SPに当てはめているのだが、この進化はとてもヤマハらしい。

ヤマハ MT-09 SPヤマハ MT-09 SP

今シーズン、ヤマハはMT-09シリーズのラインアップを拡大。クラッチレバーとシフトペダルを廃し、シフト操作を手元で行う話題の「MT-09 Y-AMT」は136万4000円。MT-09のスタンダードモデルは125万4000円。ここで紹介するMT-09 SPは144万1000円と最も高価だが、この質感と装備を見るとそれは決して割高ではないと思う。ちなみに同エンジン搭載の『XSR900GP』は143万円。『XSR900』は114万円だ。

足まわりは機能を重視し、KYB製のフロントフォークやオーリンズ製のリヤサスペンション、さらにはブレンボ製のモノブロックキャリパーやラジアルマスターシリンダーを採用。しかし、ヤマハらしさを感じるのはタンクの形状やホイール、スイングアームの仕上げの美しさだ。他メーカーにはない意匠がライダーの心に響き、それが所有感に直結する。

リヤサスはオーリンズ製。油圧式のリモートプリロードアジャスターを装備。タンデム時や荷物搭載時に簡単に手で回せるのが良い。 リヤサスはオーリンズ製。油圧式のリモートプリロードアジャスターを装備。タンデム時や荷物搭載時に簡単に手で回せるのが良い。 ヘアラインが美しいアルミスイングアームを採用。3気筒のパワー&トルクを質の高いトラクションへの変換。    ヘアラインが美しいアルミスイングアームを採用。3気筒のパワー&トルクを質の高いトラクションへの変換。

燃料タンクの鋭いエッジは、光の当たり方で表情を変え、時にはまるで金属の地肌のように輝く。こんなタンクのエッジは見たことがない。アルミスイングアームのヘアラインは、ヤマハならではの繊細な仕上げ。そして、前モデルまで僕にはエキセントリックにしか映らなかったフロントマスクは、YZF-R1を思わせるヤマハらしさ得ており、とてもシャープ。タンクのエッジとの繋がりも良く、フロントからリヤにかけてのラインにスピード感を覚える。

エアクリーナーボックスカバーにAAG(アコースティック・アンプリファイア・グリル)と呼ばれる開口部を設け吸気音をライダーに届ける。ヤマハらしいディテールだ。 エアクリーナーボックスカバーにAAG(アコースティック・アンプリファイア・グリル)と呼ばれる開口部を設け吸気音をライダーに届ける。ヤマハらしいディテールだ。

◆熟成するヤマハ3気筒エンジン

国産唯一の並列3気筒エンジンの魅力は、フラットな特性と音だ。音には排気音と吸気音があり、MT-09 SPはその2つの音にも磨きをかけた。タンク上面にはアコースティック・アンプリファイア・グリルという、まるでスピーカーのようなディテールを配し、吸気音をライダーに届ける工夫を施す。

スマートキーをオンにしてブリッピングすると「ヴュッヴュッ、ヴュォー」と排気音と吸気音が重なった独特のサウンドが響く。並列3気筒は、並列2気筒と並列4気筒の中間とも言われるが、僕はフィーリング的にはどちらかというと4気筒に近いと思っている。

ちなみに通常の並列4気筒の爆発間隔は180度の等間隔だが、並列3気筒は240度の等間隔。3気筒は4気筒よりも爆発間隔が広いためトルク感が明確で、スロットルを開けた際のトラクションを得やすく感じるのだ。走り出すとその個性はすぐに感じられる。

熟成を重ね、さまざまなモデルに採用されるDOHC並列3気筒の888ccエンジン。国産唯一のパッケージで、ヤマハらしい気持ちよさと速さを約束。熟成を重ね、さまざまなモデルに採用されるDOHC並列3気筒の888ccエンジン。国産唯一のパッケージで、ヤマハらしい気持ちよさと速さを約束。

走行中も音が良く、それだけでスロットルを開けるのが楽しい。クラッチ操作レスでギヤチェンジが可能なクイックシフトを使い、矢継ぎ早にシフトアップ。低中速を繋ぐ走りが気持ちいい。郊外に出て少しエンジンの回転を上げ、伸びの良さも確認。音と加速が同期する。クイックシフターは節度が高く、バンク中でもシフトチェンジが可能。減速&加速ともに、トラクションが途切れない感じがスポーティだ。

このモデルからパワーモードもわかりやすく進化。これまでは「A」「B」といったアルファベットだったが、新型は「スポーツ」「ストリート「レイン」「カスタム1」「カスタム2」ときちんとシチュエーションを表示。実際の出力特性はそのシチュエーションを想定しており、カスタムは自分専用のモードに仕立てることが可能。

モードにより、PWR(パワーデリバリーモード)、TCS(トラクションコントロールシステム)、SCS(スライドコントロールシステム)、LIF(リフトコントロールシステム)、BC(ブレーキコントロール)のデフォルトの設定が切り替わる。

視認性の高い5インチ(先代は3.5インチ)TFTディスプレイ。好みやシチュエーションに合わせて、様々な画面を用意。PWR(パワーデリバリーモード)、TCS(トラクションコントロールシステム)、SCS(スライドコントロールシステム)、LIF(リフトコントロールシステム)、QS(クイックシフター)、BC(ブレーキコントロール)など、各テーマを呼び出して細かくセットアップすることも可能。視認性の高い5インチ(先代は3.5インチ)TFTディスプレイ。好みやシチュエーションに合わせて、様々な画面を用意。PWR(パワーデリバリーモード)、TCS(トラクションコントロールシステム)、SCS(スライドコントロールシステム)、LIF(リフトコントロールシステム)、QS(クイックシフター)、BC(ブレーキコントロール)など、各テーマを呼び出して細かくセットアップすることも可能。

ちなみに一般道で「スポーツ」を使うと、僕には少し過敏だった。「ストリート」が気楽だが、それでもスロットルを少し大きく開けるとかなり速い。3気筒の怒涛のレスポンスになれるまで、またはタイヤが冷えている時などは「レイン」を常用してもいいだろう。

高性能サスペンションはしなやかさとスポーツ性を両立。僕は少しバネが張っている感じがしたが、このあたりは前後ともフルジャスタブルのため、好みでアジャストすると良いと思う。ブレンボ製のキャリパーとラジアルマスターシリンダーは、流すような速度でもコントロール性が高い。

◆サーキットでも光る高いスポーツ性

ヤマハ MT-09 SPヤマハ MT-09 SP

「思っていたよりもスポーツに振ってきたなぁ」というのがハンドリングの感想。タンク上面を下げ、ハンドルを低くしたポジションも適度にスポーティ。シートが前下がりでないため、身体を前後に動かしやすいのも好印象。

また、サスペンションやブレーキの優れたレスポンスは、良いバイクに乗っている実感を高め、それが見た目の高級感とシンクロ。これまでのMT-09の印象はダークサイドでヤンチャ、そして敏感だったが、最新MT-09 SPの振る舞いはとてもジェントルだ。

ただ、試乗終盤に「スポーツ」モードに入れると、しっかりヤンチャな顔を見せてくれた。少し腰をずらして積極的に乗ると、硬めに感じていたサスペンションも釣り合ってくる。新しく採用されたブリジストンのS23のエッジ部分のグリップを引き出し、3気筒特有のトラクションの良さを試すと、軽量&コンパクトなミドルスポーツは、サーキットも楽しそうな振る舞いを見せてくれた。

MT-09 SPは、専用装備としてサーキット走行を想定したTRACK YRCモードも搭載。メーター上でラップタイムの計測も可能で、 TRACK1/2/3/4の各種設定で PWR/TCS/SCS/LIFなどを個別に呼び出し、好みに味付けにすることが可能。また、リヤブレーキのABSをオフにすることもできる。

「いつかは憧れのサーキットへ」。そんなストーリーまでをも用意してくれているのが、MT-09 SPなのだ。

小川勤氏とヤマハ MT-09 SP小川勤氏とヤマハ MT-09 SP

小川勤|モーターサイクルジャーナリスト
1974年東京生まれ。1996年にエイ出版社に入社。2013年に同社発刊の2輪専門誌『ライダースクラブ』の編集長に就任し、様々なバイク誌の編集長を兼任。2020年に退社。以後、2輪メディア立ち上げに関わり、現在は『webミリオーレ』のディレクターを担当しつつ、フリーランスとして2輪媒体を中心に執筆を行っている。またレースも好きで、鈴鹿4耐、菅生6耐、もて耐などにも多く参戦。現在もサーキット走行会の先導を務める。

《小川勤》

モーターサイクルジャーナリスト 小川勤

モーターサイクルジャーナリスト。1974年東京生まれ。1996年にエイ出版社に入社。2013年に同社発刊の2輪専門誌『ライダースクラブ』の編集長に就任し、様々なバイク誌の編集長を兼任。2020年に退社。以後、2輪メディア立ち上げに関わり、現在は『webミリオーレ』のディレクターを担当しつつ、フリーランスとして2輪媒体を中心に執筆を行っている。またレースも好きで、鈴鹿4耐、菅生6耐、もて耐などにも多く参戦。現在もサーキット走行会の先導を務める。

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