「熱気球ホンダグランプリ2024」一関・平泉バルーンフェスティバル、波乱のスタート

地上で係留を安定させることが困難なほどの強風。と言っても、観戦者にとっては旗がバタバタはためく程度。
地上で係留を安定させることが困難なほどの強風。と言っても、観戦者にとっては旗がバタバタはためく程度。全 16 枚

日本の熱気球競技タイトル戦「熱気球ホンダグランプリ2024」第2戦「一関・平泉バルーンフェスティバル2024」が、10月11日から一関市で開催されている。会期は13日までの3日間。

「熱気球ホンダグランプリ2024」一関・平泉バルーンフェスティバル

10月12日、2日目朝の競技は大会本部が置かれてる一関水辺プラザから一斉離陸の後、

(1)パイロットデクレアドゴール(パイロットが競技空域内に設定された多数のゴールポイントのうち任意のものを離陸前に指定し、マーカーを落とす)
(2)ジャッジデクレアドゴール(大会本部が指定した1点のゴールを狙ってマーカーを落とす)
(3)フライオン(飛行中に空域内に設定されたゴール候補から任意のものを選んでマーカーを落とす。狙うゴールは前の競技で落とすマーカーに記入しておく)
(3)ヘジテーションワルツ(あらかじめ設定された数か所のゴールのうち任意のものをその場で選び、マーカーを落とす)

の4タスクをこなすというものだった。

合計29チームが参加したこの協議は波乱含みの展開となった。午前6時に競技準備の赤旗が掲げられたが、朝の冷え込みでかかった霧がなかなか晴れず、離陸許可の緑旗が出ない。熱気球競技にはGPSマーカーで仮想マーキングする電子競技とターゲットを視認して直接リボンつきのマーカーを落とす有視界競技があるが、この日は有視界が主。霧がかかっていると地表が見えず、ターゲットを直接狙う有視界競技ができないのだ。

競技気球が地上に待機している中、オフィシャルバルーンの「黄金の國一関・平泉号」がビジターを乗せて離陸していった。ビジターフライトを行うだけでなく、大会本部から上空の風の様子を見てきてくれという任務も負っていた。一関平泉号は少し高度を上げた時点で霧に入り、その霧を透かして朝日を浴びる姿がおぼろに見えるだけになった。

◆波乱のスタート

続々と気球が立ち上がりはじめるが・・・。続々と気球が立ち上がりはじめるが・・・。

午前7時が近づいてきた頃、ようやく霧の切れ間が見えてきた。が、間の悪いことに今度は強い地表風が吹き始めた。熱気球は競技に使われる比較的小型のものでも全高が20m以上ある。当然風を受ける面積も大きく、大型ヨットのメインセイルより広いくらいだ。一方でエンベロープ(球皮)、人が乗るバスケット、搭載燃料を合わせた重量は500kg~600kgしかない。少しでも風が吹くと熱気球を立てることができないのだ。

といって、時間をあまり遅らせることもできない。熱気球競技が昼間ではなく朝、夕に行われるのは地表の気温が上空より低い逆転層が形成され、熱気球が苦手とする上昇気流が弱いのが理由である。が、日が上がってしばらくすると逆転層が解消されて上昇気流が発生し、競技には不向きな状態になってしまう。

もしかして午前の競技は中止かという雰囲気も漂い始めた午前7時30分前、ラッパの音が鳴り響き、離陸許可の緑旗が上がった。筆者はここ20年ほど断続的に熱気球ホンダグランプリをウォッチングしてきたが、これほどの強風の中でビジターを乗せたオフィシャルバルーンが2機飛び、競技も行われるというのは初めて見た。熱気球競技の世界では他のすべての要素を圧倒するくらい安全にプライオリティが置かれるもので、これまでの熱気球ホンダグランプリの運営もそのポリシーが貫かれてきた。今日の判断はまさにギリギリを見切ったものと言える。

ホンダのオフィシャルバルーンも展張開始。ホンダのオフィシャルバルーンも展張開始。

各チーム、熱気球に送風機で空気を送り込み、火入れを行ってエンベロープを展張する。続々と熱気球が立ち上がった…その光景はなかなかに壮絶だった。風に煽られた各チームの熱気球が風に煽られてランダムに揺れ、地上クルーも総出で押さえつけても地上で安定させることすら難しい。よく衝突せずにすむものだと感服しながら状況を見守る。

ほどなくして1機、また1機と飛び立ち始める。が、風を読み、作戦を練り、狙いすまして飛び立つというよりは、地上にこれ以上いても状況は悪化するばかりなので取りあえず上がって様子を見るという印象。チームの中には地上での係留が難しくなり、たまらず上がったように見受けられたところもあった。

一方で安全を優先させ、離陸を諦めるチームも続出した。ハイレベルなチームが飛び、下位のチームが諦めるという構図ではない。昨年の優勝チームも飛びさえすれば得られるであろう競技ポイントを丸ごと投げ捨てることをいとわず気球を畳んでリスクを回避した。風に抗うことができない熱気球競技ではベスト解は存在しない。あるのはどうすればより良いかを選ぶベター解があるだけである。飛んだチームは勇猛、飛ばなかったチームは賢明。そんな様相の2日目朝だった。

離陸を中止するという選択をしたチームは見たところ半数。厳しいコンディションだった。離陸を中止するという選択をしたチームは見たところ半数。厳しいコンディションだった。

◆ドラマが生まれる熱気球

熱気球ホンダグランプリはこの後、第3戦「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」(10月30日公式練習、10月31日~11月4日開催)、第4戦「渡良瀬バルーンレース」(12月13日~15日)と続く。佐賀インターナショナルバルーンフェスタは世界のトップパイロットも来日する世界戦、渡良瀬バルーンレースはローカルレースながら毎年タフな戦いが繰り広げられる興味深いレース。夜には熱気球火入れと打ち上げ花火のページェント「バルーンイリュージョン」も行われる。

レースごとにきっちりドラマが起こるというのが過去の筆者の観戦感。ぜひバルーニストたちのダイナミックな飛翔をライブで見ていただきたいと思う次第だ。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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