空模様で言えば「モダン、時々クラシック」。SUVなのにマセラティ・グレカーレの冴えわたる世界とは

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マセラティ グレカーレ
マセラティ グレカーレ全 35 枚

◆マセラティ・グレカーレ、名門を名門たらしめる背景とは

今でこそSUVはあらゆる自動車メーカーが手がける車型となった。だが悪路走破性や4駆と結びついていた時代は、ワードローブで上質なスーツの中に一着だけ野暮ったいツイードのカントリージャケットが紛れ込んだのにも似て、決して24時間365日をカバーできるアイテムではなかった。だからこそハイエンドな自動車ブランドがSUVを登場させると、古典的なコードをどう踏まえ、どう現代的に解釈したか、そこに注目が集まる。

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マセラティ・グレカーレはこうした文脈で眺めると、一層、味わいを増すSUVだ。ひと昔前なら週末の装いだったスポーツジャケットが、男女を問わず平日のオフィス街でも着られるようなモードにまで洗練されたのは、いわゆるメゾン・ブランドに代表されるイタリアン・デザインの貢献度が大きい。

グレカーレも同じくだ。マセラティは1914年に創業を遡るレース・エンジニアリングの名門で、一貫して自前のエンジンとシャシーで戦前から1950年代、F1を含むグランプリやミッレミリアのような公道レースで勝利を重ねた。当時の公道レースといえば都市間レースで、まだラリーが競技化・選手権化される以前の時代だ。そうして鍛え上げたスポーツレーシングカー(多くはバルケッタ・ボディ)を元に、耐候性と積載性、つまりルーフとトランクを備え、豪奢な内装で仕立てたGTカーを市販してきた。多分にイタリア流の「GT(グランド・ツーリング)」の名門にして代名詞といえる自動車ブランドだ。

ちなみにマセラティの伝統通り、グレカーレも地中海地域の風に由来する。マルタ島の南辺りで低気圧が発生すると荒天をともなって吹きすさぶ、冷たい北東風のことだ。これは単なるウンチクや語呂合わせだけでもない。古くから航海者が旅の成否のために利するべきは、天候や風のような自然や物理の条件で、それは今日の自動車でも同じくなのだ。

◆クラシックなGTの伝統をさりげなく受け継ぐ外観

少し大袈裟にいえば、イタリア的な芸術と科学と情熱の産物のひとつで、GTのカタチをとったものがマセラティなのだ。まずはエクステリアから眺めてみよう。

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ヘッドライトより下寄りについた、おちょぼ口気味のグリル開口部は、今の車としていかにも控えめに見える。だがラジエーターグリルがライトと同じ高さまで聳えていたのは戦前からの高級車で、それこそ大きなエンジン(=大きな冷却キャパシティが要る)を積む証、ひいては権威的な車のデザイン・コードだった。

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対して1950年代のレーシングスポーツカーはボディ前端を低くして空力的であることの方が重要で、当時のマセラティでいえば300Sから450Sが相当する。これらを彷彿させるこの顔つきを、現行世代のマセラティはスーパースポーツであるMC20、グラントゥーリズモやグランカブリオ、そしてSUVのグレカーレまで、スマートに引き継いでいる。クラシックなだけではない。排気量より効率が重きをなし、空気は切り裂くよりも車体の中や下へ効果的にとり込むことがトレンドである現在、きわめてロジックなアプローチでもある。

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その証左に、グレカーレのドアハンドルはフラッシュサーフェス化され、手を挿し入れる開閉スイッチ式となっている。それでいてフロントフェンダー脇のトリプルエアベントや、リアコンビネーションランプには3200GT以来のブーメラン型モチーフが採用され、クラシックなディティールも前後横の3方向から確認できる。SUVとしてエレガントで流麗というは易しだが、じつは無駄に装飾的な要素がないにもかかわらず、さりげなくアイコニックな外観でもあるのだ。全長4845×全幅1950×全高1670mm(※)というボディは、決して小さくはないが、近頃増えてきた2m幅、1.79m高対応の駐車場なら、もてあます大きさでもない。※Modena外寸19インチホイール装着時

◆日々、美しいものに囲まれる歓びを想像すべき

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しかしグレカーレ、ひいてはマセラティの創り上げるGTの醍醐味は、イタリアらしいクラフトマンシップに貫かれた内装にある。ダッシュボードやセンターコンソール、シートを覆うナッパレザーとステッチの高品位な仕上がりと、見た目にも柔らかなタッチは、走らせる前からイタリアンGTの真骨頂を味わえる。それは静的質感だけでも、すでに乗り手や乗員を魅了するものなのだ。

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センターコンソールの収納ボックスはバタフライ開閉で、カーボンでもウッドでも素材そのものの触感を活かしている。またソナス・ファベールのスピーカーネットに用いられるアルミも相まって、調度品としての質感はきわめて高い。

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機能面でもグレカーレのインテリアは今日的なSUVとして特筆すべき点が多々ある。まずボディの大きさを感覚的に和らげるよりも走行中の感覚に資する点だが、ドライバーシートから前方を見渡すと、ヘッドライトからフェンダーがふたつの峰となっていて、車幅が望外に掴みやすい。

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一方で後席では、ヘッドスペースも足元もこのクラスのSUVとして屈指の広さを誇る。これは2900mmのロングホイールベースの成せる業で、4/2/2可倒式リアシートも手伝ってトランクスペース容量は、乗員の人数や荷物の形状に応じて、変化させられる。

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さらにダッシュボードには、12.3インチと8.8インチの上下2画面を組み合わせたセントラル・デジタル・ディスプレイが備わる。エアコンやシートヒーター、シートベンチレーションといった快適性に関わる機能は下側ディスプレイに、車両設定やインフォテイメントは上側に集められている。しかもドライバーが見やすいよう、手を伸ばすだけで触れやすいよう、エルゴノミーに基づいた仰角で備え付けられている。

これらはステアリング向こうの12.3インチのメーターパネルと合わせると、じつは計33インチ超もスクリーン面積がある。にもかかわらず鬼面人を驚かす体の大画面ぶりを感じさせないのは、ハイテクを適度にアナログ的直観でナチュラルに使わせるという、じつは高度に練られたデジタル・インターフェイスといえる。マセラティ伝統のダッシュボードクロックもスマート化されており、デジタル表示やストップウォッチ、方角表示に切り替えることも可能だ。

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さらにエンジンのON/OFFに始まり、ステアリングホイール上にはドライブモード選択や高速道路上で手を離すことなく設定できるADASコントロールボタン、マニュアル時にシフト操作を伝えるパドルなど、走りに関する操作コマンドはステアリング周りに集中している。このようにドライバーズカーとして走りに没頭できることと、車内で快適に過ごすことが、まったく矛盾せず内装の造りに貫かれている点に、GTならではの系譜をグレカーレに認めることができるはずだ。

◆甲乙つけがたい3種のパワートレインの個性

そして肝心の走りだが、グレカーレには3仕様のパワートレインが用意され、それぞれ300ps、330ps、530psと動的な印象も個性も異なる。

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そして肝心の走りだが、グレカーレには3つの異なる仕様のパワートレインが用意される。その中でもお勧めなのが現在新規オーダーが可能な「モデナ」「トロフェオ」の2種類となる。330ps版の「グレカーレ モデナ」は、2リッター直4エンジンに電動モノスクロールのターボチャージャーと、48VのBSG(ベルトスタータージェネレーター)+eブースターが組み合わされたMHEV(マイルドハイブリッド)だ。ゼロ発進する際には、まず電動モーター、続いて2000~4000rpmという低中回転域で最大トルク450Nmを解き放つエンジン特性により、加速感は力強い。出足の滑らかさに加え、電動モーターのアシストは高速道路の追越加速などでも効いてくるので、アクセルを踏み込んだ瞬間にもたつかない瞬発力は、2リッターと思えないほどだ。「グレカーレGT」と違い、中高回転域でのターボブースト圧の伸びがトップアップされており、4WDシステムも電子制御によるLSDを採るなど、よりパフォーマンス志向のモデルといえる。

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トップグレードの530㎰版、「グレカーレ トロフェオ」はパワーユニットに現行マセラティの頂点たる3リッターV6ツインターボの「ネットゥーノ」を搭載する。これは市販車でありながら、F1由来のハイメカニズムとして知られるプレチャンバー燃焼機構を備え、チューンこそ異なるがグラントゥーリズモやMC20に積まれるものと基本設計は同じく。最大トルクは620Nmに届く。

端的に言ってトロフェオは、GTやモデナとは別物のハイパフォーマンス・カーだ。それが走りにどう表れてくるかといえば、趣味性に近い部分かもしれないが、およそドライビングや旅を楽しみたいドライバーなら少なからず新しい景色が開けてくる。高回転まで踏み込んでもどっしりした巡航時のスタビリティ、剛性感に満ちた軽快なハンドリング、嫌なマスを微塵も感じさせない身のこなし、といったところだ。優雅に旅をするのに何をどこまで必要とするか?を問うてくる一台といえる。それこそV6ならではの、欲張りで矛盾に満ちた、移動することに余裕や余韻までもたらす、クラシックなGTの世界を体感できる。

そしてもっとも日常域を重視した仕様で、マセラティ内装の居心地や流麗な外観デザインといったラグジュアリーな面を楽しむのなら、300ps版で価格がもっとも手頃な「グレカーレGT」がいい。

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かように、グレカーレの3種類のグレードは、パワーユニットの出力やトルクといった数値スペックや価格帯の話だけではなく、それに応じたシャシー・セッティングやトリム、オプションによっても分かれている。グレカーレの真に魅力的な点は、SUVという入口から入ってもエントリーモデルからプレミアム、さらにハイエンドまで、乗り手の求めに応じてオーセンティックなGTの奥深さを、味あわせてくれるところだ。それこそ車が単なる移動ツールではなく、旅をするパートナーへ変わる体験といえる。

もちろんマセラティのディーラーでは、グレカーレについても残価保証型のオートローンを手厚く設定し、乗り手の希望や状況に応じて、ケース・バイ・ケースで最善のアドバイスや対応を行っている。旅や体験で得られるものとは、数値で計り知ることのできない何かだからこそ、直接に見て触って、経験してみることから始めるしかないのだ。

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マセラティ オリジナルギフトが当たる 応募フォームはこちら

《南陽一浩》

南陽一浩

南陽一浩|モータージャーナリスト 1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。

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