10月15日から18日まで幕張メッセで開催された「シーテック2024(CEATEC 2024)」にTDKが出展。ブースには近未来のモビリティに採用されるであろう、TDKの持つ最新技術を凝縮した「PERMO」と呼ばれるコクピットが登場した。実際に乗り込んで次世代のコクピット体験をしてきた。
厚さ0.49mmの超薄型スピーカー
広いブースの前面には、目立つ形でポッド形状の体験型のコクピットが展示された。「PERMO(Personal Relaxation Mobilty)」と呼ばれ、自動運転の時代にコクピットに求められるさまざまな技術を盛り込んだモデルだ。中でもイチオシだったのがピエゾ素子を使ったスピーカー「PiezoListen(ピエゾリスン)」。ピエゾ素子=圧電タイプの薄型スピーカーで厚さはわずか0.49mmと超薄型なのが特徴だ。TDKはこのスピーカーの開発に際し、自動車のコクピットは“全面ガラス張り”“リビングのような作り”など、従来のクルマの概念とは異なる構造になることを念頭に置いている。従来のダイナミック型のスピーカーは設置のために大きなスペースが必要になることが、コクピット設計上の足かせになると考えたのだ。

その点、極薄のピエゾリスンはどんな部分にも設置できるのでコクピットの設計自由度が高まる。しかし従来、圧電素子型のスピーカーは低音が出にくいという弱点もあった。そこでTDKでは、パワーアンプの工夫などを通じて従来のスピーカーにかなり近づけた再生周波数帯域を実現。低音再生用のサブウーファーも同コクピットには設置され、実際に座って音を聴いてみるとかなり躍動的でバランスの良いサウンドに仕上がっていた。

その他にもこのコクピットにはノイズキャンセリング用のピエゾリスンも搭載。ロードノイズを逆位相で打ち消すデモも実施されノイズ除去の効果の高さを体感した。またスマホへのワイヤレス給電を可能にする装置もコクピットに設置(TDKではMPP規格とEPP規格を同時に利用可能な超薄型の充電装置も開発)。このように近未来のコクピットでの技術を実際に使って試せる状態でお披露目したPERMO。ブースでは常に待ち行列ができる人気デモ機となっていた。
AR/VR展示では網膜直接描画のデモを実施
TDKのブースでもうひとつの目玉となったのがAR/VRの展示だ。スマートグラスなどで映像を映し出す技術が急速に進化する中、TDKでは網膜直接描画(QDレーザとの共同開発)のデモを実施した。この技術が新しいのは“網膜に直接レーザーを照射”して描画する点だ。一般的には小さなモニターに映し出した映像を目で見るのだが、これではモニターにピントを合わせると周囲がぼけてしまう。それに対して網膜への直接描画だとそれが防げるのがメリットだ。