多様化するパワートレインと環境規制に対応、可搬型排ガス計測システム「VERIDRIVE」を堀場製作所が発表

可搬型排気ガス計測システム「VERIDRIVE」
可搬型排気ガス計測システム「VERIDRIVE」全 9 枚

堀場製作所が可搬型排ガス計測システムの新製品「VERIDRIVE(ベリドライブ)」を、12月17日に発表した。同製品の特長は、車載可能なコンパクトサイズながらラボ設置の検査装置並みの性能を持つこと。ラボ並みというのは、測定精度に加え、CO2やNOxの他アンモニア、亜酸化窒素、ホルムアルデヒドなどマルチガスセンサー機能を備えているからだ。

9種のガスの計測に対応

可搬できる排ガス測定装置とは?

車載可能な小型の排ガス計測システムそのものは珍しくないが、それがラボやテストベンチに据え置き型で設置される計測システムと共用できるものは少ない。

通常ラボなどに設置されるシステムは、さまざまな気体の測定ができるように装置自体も大型になりがちだ。ガス種ごとのチャンバーが必要だったり、チャンバー等を冷却する液体窒素が必要だったりする。測定するガスの湿度を調整する前処理や、ガスごとの校正といったメンテナンスも簡単ではない。

このような大掛かりなシステムは、ガス検査室やラボなどに設置し、単体試験なら、そこに検査対象のエンジンを運んでくることになる。車両としての試験ならば、テストベンチに据え置き型システムを設置するか、車載用計測器を車両の搭載して、テストベンチや路上で試験を行う。

ラボ用、車載用を問わず、1台のコンパクトな計測器で計測できれば、コストダウンや検査工程の短縮、効率化が可能になる。だが、先ほど述べたように車載サイズの計測器は検査精度や検査能力、ガス種対応に限りがある。

なぜラボ並みの計測精度と性能を持つポータブル計測器を実現できたのか

堀場製作所は、この課題に対応するためVERIDRIVEを開発した。性能とサイズを両立させたのは、IRLAM(アーラム、赤外レーザー吸収変調法/Infrared Laser Absorption Modulation)という独自の計測原理を採用したからだ。IRLAMは赤外線分光方式でガス成分、濃度を計測するが、従来との違いはスペクトラム分析に多用されるFFT(高速フーリエ変換)を使っていない点。

FFTの代わりに機械学習による画像分析の手法を利用している。これにより、たとえばFFT用の演算ハードウェア(信号処理プロセッサおよび周辺回路)が不要になり、除湿のような前処理をしなくても計測が可能になった。また、ガス種ごとの計測チャンバーや計測原理(赤外線以外に磁気、化学反応、水素炎イオンを利用した方法がある)を導入する必要もない。画像処理だけでラボ並みの精度で赤外線分光の測定が可能なのかについては、同社のラボ計測器との比較試験で高い相関係数(0.990以上)を示しているという。

従来製品で必要だった前処理を不要とし、燃料燃焼時に発生する水分の干渉影響を最小化した

また、余分な電子回路や測定装置を集約できたことで、従来車載用計測器*と比べて、サイズの小型化だけでなく低消費電力、低メンテナンスコストも実現した。消費電力を約 80%削減、定期的に交換が必要だった部品を約3割削減することで、環境配慮負荷の低減やコストカットに貢献する。システムがシンプルになったことと、機械学習の導入により高速なソフトウェア解析が可能になったため、本体の堅牢性、耐振動性、耐環境特性も向上した。走行中の計測でも振動や段差の影響を受けにくい。外気温はマイナス7度から45度まで正常に計測可能とし、路上や環境試験室での計測も問題ないとする。

低消費電力、低メンテナンスコストを実現

*同社従来製品 エンジン排ガス測定装置「MEXA-ONEシリーズ」 (ラボ設置型)との比較。使用方法や条件によって効果が異なる場合がある

VERIDRIVEのサイズは横幅48cm、高さ38cm、奥行き63cmで、重量は44kg。希望販売価格は4000万円(税抜)からとのことで、2029年までの累計販売台数は300台を目標とする。堀場製作所 ジュニアコーポレートオフィサー 兼 エネルギー・環境本部長 鶴見和也氏は、「現在ラボ用は全世界で80%ほどのシェアがあるが、車載用は50%ほど。VERIDRIVEを投入することにより、車載用のシェアを大きく前進させることを目的としている」と話す。

可搬型排気ガス計測システム「VERIDRIVE」

合成燃料の活用により内燃機関が残ることでの課題・ニーズ

長期的なカーボンニュートラル、脱炭素の動きに揺るぎはないが、ここにきて、自動車の場合EVだけで2050年までにカーボンニュートラルの達成は困難という見方がでている。達成可能かもしれないが、合成燃料や代替燃料、水素燃料電池と組み合わせれば、逆に2050年より前に達成できるという予測も存在する。


《中尾真二》

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