【Road to the Star : Lap 1】“チーム”になるまでのはじまり、マツダ・ロードスターで共に挑む6人のドライバーに迫る

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左からHana Burton/三宅 陽大/吉田 恭将/加藤 達彦/石谷 豪志/山田 遼 選手
左からHana Burton/三宅 陽大/吉田 恭将/加藤 達彦/石谷 豪志/山田 遼 選手全 37 枚

ピットロードに6人の背中が並んだ。同じレーシングスーツ。同じチームロゴ。だが、その背中が背負っているものは、けっして同じではない。彼らはまだスターではない。

倶楽部MAZDA SPIRIT RACING チャレンジプログラム倶楽部MAZDA SPIRIT RACING チャレンジプログラム

それぞれが全く異なるルートからこの場所にたどり着き、これから1台のマツダ『ロードスター』を通してひとつの物語を走り始める。チームとしてスーパー耐久シリーズでチャンピオンを目指す。しかし、この物語は、単なる勝敗の記録ではない。若いドライバーたちが、未来に向かってそれぞれの“星”を探す旅でもある。これは、その最初の一歩だ。

Road to the Star.

Chapter 0:参加型モータースポーツの頂点、スーパー耐久シリーズとは…?

倶楽部MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER(#120)倶楽部MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER(#120)

スーパー耐久シリーズ(S耐)は、「参加型モータースポーツ」の頂点として、長年多くの人を魅了してきた。その面白さは、単純に速さの競争にとどまらない点にある。コンパクトカーからレース専用規格で作られた市販車(GT3)まで、性能の異なるマシンが同時に走り、クラス別に混走する。さらに、プロとアマチュアが同じ舞台に立てるという特性も持つ。

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そして何よりも見どころなのが、市販車に限りなく近い車両1台を、3時間、4時間、5時間、24時間、と走らせ続ける「耐久レース」という競技であることだ。そこでは、速さだけでは測れないものが問われる。数名のドライバーが、ひとつのチームとして同じ車両を操り、最後まで完走を目指す。“個"ではなく“チーム”として戦う競技だ。

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そのS耐で生まれた様々な取り組みの中の1つが「倶楽部MAZDA SPIRIT RACING チャレンジプログラム」だ。今回フォーカスするST-5Rクラスは、MAZDA SPIRIT RACINGの“リアル”と“バーチャル”からステップアップできるプログラムにおいて、その頂点に位置づけられる。モータースポーツを、より身近に、気軽に楽しめるものとすることを目指し、ドライバーも観客も一体となって“共に挑む”ことを何よりも大切に考えている。

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2026年度もまた、新たなメンバーでの参戦が始まった。平均年齢25歳。6人の若きドライバーたちが、同じチームの一員として1台のロードスターに乗り込み、レースを通して、自らの可能性を確かめていく。同じレーシングスーツに身を包み、同じチームロゴを背負う。だが、その内側にあるものは、それぞれ異なっている。

モータースポーツは、特別な誰かのものではない。この場所に立つ彼らもまた、最初は”ただのクルマ好き”の1人だった。

Chapter 1:まだ”ひとつ”ではない6人、それぞれの現在地

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3月3日から4日に富士スピードウェイで行われたテスト走行で、6人のドライバーが初めて”チーム”として、クルマも交えて同じ時間を共有した。それぞれが、異なるレースで結果を残してきたドライバーたち。中にはバーチャル(eモータースポーツ)からスタートして、リアルレースにも参戦するようになった、”二刀流”のドライバーもいる。

倶楽部MAZDA SPIRIT RACING 井上 恵一監督倶楽部MAZDA SPIRIT RACING 井上 恵一監督

「個々のスキルに対して、大きな不安はない」チーム代表の井上恵一(いのうえ・けいいち)監督はそう語る。「ドライバースキルとしては、全員特に問題ないと思っています。ですが、どこまで耐久レースに適応できるか。協調性も含めて、そのあたりはこれから見ていきたいですね」

S耐は、ひとりの速さだけでは成立しない。この日ピットに並んだ6人は、まだひとつのチームにはなりきれていなかった。まだ互いの距離を測り合うような空気。監督や副監督、そしてメカニックを含むチーム全体の中での自らの立ち位置を探るようなぎこちなさ。クルマとの関係も、まだ手探り。人にも、マシンにも、「はじめまして」という空気が流れていた。

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それでも印象的だったのは、各々が誰に言われるでもなく、自分のやるべきことを見つけようとしていた姿だった。

ステアリングを握って感覚を掴もうと集中する者。
走行データに目を落として考え込む者。
周囲の動きを観察しながら、次の一手を考える者。
とにかく皆に積極的に話しかけにいく者。

同じ“ドライバー”ながら、6人の異なる個性がすでにそこにあった。井上監督が見ているのは、その先だ。「個々の能力は高いので、それが“我”になるのではなく、“輪”になってもらえたらいいと思っています」

三宅 陽大(みやけ・はると)選手三宅 陽大(みやけ・はると)選手

その中で、ひときわ静かに存在感を放っていたのが、三宅陽大(みやけ・はると)選手だった。ピットの中で、言葉数は多くない。周囲にどんどん働きかけるタイプでもない。でも彼の視線には、最初から迷いがなかった。

「ロードスター・パーティレースで仲間とのレースの楽しさを知り、ロードスターで自らをドライバーとして育ててもらってきたからこそ、究極のレースとなるこのS耐の舞台に立っている」

三宅 陽大(みやけ・はると)選手三宅 陽大(みやけ・はると)選手

と語る彼は、“バーチャルからリアルへの道”を歩んだ1期生でもある。自分がどこへ向かっているのか。何を求めてこの場所に立っているのか。三宅選手の静けさは、周囲に流されるものではなく、自分の内側に軸を持っているからこそ生まれているように見えた。

山田 遼(やまだ・りょう)選手山田 遼(やまだ・りょう)選手

その一方で、チームの中には、別のかたちで存在感を放つドライバーもいる。周囲に目を配り、積極的に自らの意見を発信し、まだ形になりきっていない6人の関係性を、少しずつ繋いでいこうとする存在。山田遼(やまだ・りょう)選手だ。

山田 遼(やまだ・りょう)選手山田 遼(やまだ・りょう)選手

誰かに任命されたわけではない。それでも自然と、場の雰囲気(流れ)を整え、チームの中でリーダー的なポジションを担っているように見えた。彼は、フォーミュラやS耐へのスポット参戦などを通してレース経験も豊富なドライバーだ。でも何よりも、自身を“ロードスターフリーク”と呼ぶほどに、その魅力をこよなく愛する1人でもある。彼の仕事は、アマチュアドライバーのコーチング。その経験が、「クルマや人の状態を分かりやすく言語化して、相手に伝える」という彼のスキルを磨き上げてきたのかもしれない。

石谷 豪志(いしたに・つよし)選手石谷 豪志(いしたに・つよし)選手

とはいえ、最初からチームの中に入りこんでいたわけではないドライバーもいた。テスト走行の日、石谷豪志(いしたに・つよし)選手は、どこか皆と距離を置いているように見えた。自分の内側に意識を向け、クルマと向き合う時間を優先しているようだった。

幼少期からカートで腕を磨き、フォーミュラやツーリングカーを経験してきた彼にとって、走ることそのものに対する集中力は、すでに身体に染みついている。だからこそ、この場所でもまずは“自分の走り”を確かめることに意識が向いていたのかもしれない。

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だが、もてぎのレースウィークで、その印象は大きく変わる。笑顔が増え、チームメイトと楽しく談笑し、その場に溶け込んでいくような空気が生まれていた。彼に心境の変化があったのかを尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「まずはいろいろ知らないと、正しく自分の意見は言えないと思っていた」と。勝ちを目指す強い意志と、これまで積み重ねてきた経験。その両方を持つ彼が、チームの中でどのような存在になっていくのか。その変化は、これからの大きな見どころのひとつになりそうだ。

加藤 達彦(かとう・たつひこ)選手加藤 達彦(かとう・たつひこ)選手

その変化が意味を持つのは、チームの中に、変わらずに支える存在がいるからでもある。加藤達彦(かとう・たつひこ)選手は、誰よりも先に声をかけに来る。テストの日も、レースウィークでも、常に周囲に目を配りながら、自分にできることを自然に探していた。根っからのマツダ好きで、免許を取って最初に乗ったクルマがロードスターだという。昨シーズンもこのプログラムに参戦した経験者であり、このチームの中では余裕を感じさせる存在でもある。

加藤 達彦(かとう・たつひこ)選手加藤 達彦(かとう・たつひこ)選手

ひとつひとつのやりとりを丁寧に重ね、チームメイトとの関係を築いていく。監督やメカニッククルーに対しても、その姿勢は変わらない。チームの空気を静かに整えるようだ。ふとした瞬間に見せた、彼の応援に来ていた恋人に向けた柔らかな表情が印象に残った。普段は会社員として働きながら暮らす、普通の若者。その彼がハンドルを握った瞬間に、己を厳しく見つめる選手の顔つきへと変化する。さまざまな表情を持ちながら、穏やかな空気を保つ存在だ。

吉田 恭将(よしだ・やすまさ)選手吉田 恭将(よしだ・やすまさ)選手

その安定した空気を、さらに外へと広げていく存在もいる。吉田恭将(よしだ・やすまさ)選手は、常に笑顔で、誰かのそばにいる。人懐っこく、自然に周囲との距離を縮めていく。このチームの中で、いわゆる“ムードメーカー”と呼べる存在だ。だが、その本質は、単に彼の持つ明るさではない。レースに出ていない時間にも、「チームのために自分には何ができるか」を常に考え、行動に移している。その姿勢は、ロードスター・パーティレースで仲間とともに戦い、成長してきた経験の中で培われたものだ。

「今の僕のこの姿勢は、苦い経験があったからこそなので…(笑)」と彼は言った。その真意を聞いてみると、「メカニックの経験を通してわかったことは、中にはドライバーのことをよく思っていない人もいます。そのようなチームの状況では全員の想いが1つになっておらず、結果を残せないということを身をもって経験しました。今回は同じ失敗を繰り返さないように、自分がチームの雰囲気をよくするような存在になれるように意識しています」と語ってくれた。

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初戦はドライバーではなかったが、メカニックとしての経験を生かして、自らチームをサポートする側に回っていた。さらに、もてぎの現場でふと目に留まった光景がある。彼が、捨てられたペットボトルのラベルとキャップを外し、黙々と分別していた。誰に言われたわけでもない。誰かに見せるためでもない。皆とレースモニターを見ながら、あまりにも自然に、彼の手は動いていた。

その姿を見たとき、“チームで戦う”ということの意味が、ふと腑に落ちた気がした。表に立つ者だけでなく、見えないところで積み重ねられる行動が、このチームを形作っていく。吉田選手は、そのことを言葉ではなく、自らの行動で示していた。

Hana Burton(ハナ・バートン)選手Hana Burton(ハナ・バートン)選手

そうしたチームの中で、まったく異なる軸で走っているドライバーもいる。Hana Burton(ハナ・バートン)選手は、誰よりも“うまく走ること”にこだわっていた。その視線は、自分の走りへと厳しく向けられている。左手のシフト操作に苦戦しながらも、何度も周囲に教えを求め、ひとつひとつを確かめるように吸収していく。その姿は、単なる努力という言葉では収まらない。ドライバー選考通過後、なんとレース車両と同じND型のロードスターをすぐに購入した

Burton選手が自らレース参戦に合わせて購入したロードスター、いかにストイックに挑んでいるのかがわかるBurton選手が自らレース参戦に合わせて購入したロードスター、いかにストイックに挑んでいるのかがわかる

「早くクルマに慣れて、少しでも多く練習したいと思って購入した」と彼女は笑うが、それはそう簡単にできることではない。レースは、速く走れてこそ意味がある。その考えを、彼女は迷いなく持っている。だからこそ、自らにできることを確実に行動に移す。移動時間や食事中でさえも、常にデータと向き合い、自分の走りを振り返り、修正し、次に繋げる。その繰り返しを淡々と続けていた。

このチームの中で唯一の女性ドライバー。だからこそ、周囲からかけられる言葉もまた、少し違っていたのかもしれない。「すごいよ」「頑張ってるよ」の言葉に対して、彼女は静かに首を振った。

Hana Burton(ハナ・バートン)選手Hana Burton(ハナ・バートン)選手

「それは、期待されていないことと同じだ。もし彼らが私と同じタイムで走っていたら、もっと厳しい言葉が飛んできていたはずだ」と。その言葉には、悔しさと同時に、誰よりも高い基準で自分を見ている強さがあった。チームの中で、最もストイックに“速さ”と向き合っている存在。それが、Hana Burton選手だった。

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こうしたさまざまな色を持つ6人は、まだ、ひとつにはなりきれていない。ようやくクルマへの理解が深まりかけてきたそれぞれが、自分の走りを見つめている段階だ。だがその中で少しずつ、「チームとしてどうあるべきか」を意識し始めている気配もあった。

Chapter 2:開幕戦のもてぎで見えた、チームとしてのはじまり

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そして迎えた3月21日の開幕戦、第1戦 もてぎ スーパー耐久。穏やかなコンディションの中で、レースはスタートした。MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER(#120)は、特に大きなトラブルに見舞われることなく、4人のドライバー(加藤・山田・石谷・Burton)によって、最後まで走り切った。

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無線のトラブルやドライバー交代に手こずったシーンがあったものの、派手な展開があったわけではない。だが、耐久レースにおいて「クルマを壊さずに走り切る」ということは、それだけでひとつの価値を持つ。昨年は、初戦早々にマシントラブルでリタイアしたことを考えると、なおさら胸を撫で下ろせる展開だった。

倶楽部MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER(#120)倶楽部MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER(#120)

開始後2時間に差し掛かる頃、序盤からの攻めのペースで走る#120クラストップに立つ場面もあった。新しいメンバー6名を含めた新生120号車チームが持つ可能性を、十分に見せてくれる展開がしばらく続いた。最終的にはクラス5位、98周という結果に落ち着いたが、このあとに待っているレースへの期待を高めてくれたことに間違いはない。

限られた時間の中でクルマを理解し、それぞれが自分の役割を考え、実行に移しながら、次のドライバーへと繋いでいく。その積み重ねが、このチームを少しずつ前に進めていた。しかし同時に、見えてきた課題もある。

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どうすればもっと速く走れるようになるか。
ドライバー同士の意思疎通。
チームとしての戦い方。

テストの段階では見えなかった小さなズレが、レースという現場の中で少しずつ浮き彫りになっていた。それでも、そのズレは決してネガティブなものではない。むしろ、個々がしっかりと自分の軸を持っているからこそ生まれるものだ。そして、その違いをどう重ねていくのか。そこに、このチームのこれからがかかっている。テストの日に感じた、あのまだどこかぎこちない距離感は、この時すでに少しだけ変わり始めていた。

倶楽部 MAZDA SPIRIT RACINGチャレンジプログラム倶楽部 MAZDA SPIRIT RACINGチャレンジプログラム

言葉にしなくても、肩にそっと添えた手だけで伝わること。
自然に交わされる視線や動き。
誰に何をどう伝えるか。自分の意見をどこまで言うのか。

曖昧だったものが少しずつ見えはじめ、それぞれの立ち位置も、わずかに輪郭が見えはじめている。このレースを通して、6人の中にひとつの変化が生まれ始めていた。それまで「自分のために走る」ことに集中していた意識が、わずかに「チームのためにどう動くか」へと移り始めていたように思う。

倶楽部MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER(#120)倶楽部MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER(#120)

結果だけを見れば、まだまだ道半ばだ。マツダでこのプログラムの主担当である廣田賢興(ひろた・けんこう)副監督は、レース後のミーティングで「僕たちならもっとやれる」と声をかけていた。それは選手たちのレースウィークの頑張りを見ると、少しでも上位で終われるようにサポートできることがあったのでないかという、廣田さん自身の心のうちを吐き出していたようにも感じられた。

倶楽部MAZDA SPIRIT RACING 廣田 賢興 副監督倶楽部MAZDA SPIRIT RACING 廣田 賢興 副監督

だが、シーズンは始まったばかり。初戦で得たものは、数字だけでは測れない。それぞれが、自分の中に持ち帰った手応えと課題。その両方を抱えたまま、次のステージへと進んでいく。

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Road to the Star。その最初の一歩は、確かにここに刻まれた。まだバラバラだった6人が、「チームとして戦う」という感覚に触れ始めた、その瞬間でもあった。次に待つのはシーズンの山場であり6月5日から7日に開催される、第3戦 富士 24時間レースだ。6人がこの時間の中で何を重ね、どこまで“ひとつ”になれるのか。そしてどんな星を掴むのか。物語は、つづいていく。

MAZDA「スーパー耐久シリーズへの道」とは《詳細はこちら》

《上之園真以》

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