リース車両の整備・メンテナンス委託管理に特化した“業態変革”…ナルネットコミュニケーションズ 鈴木隆志社長に聞く

取材にご協力頂いた、株式会社ナルネットコミュニケーションズの鈴木隆志代表取締役社長
取材にご協力頂いた、株式会社ナルネットコミュニケーションズの鈴木隆志代表取締役社長全 5 枚

リース車両のメンテナンス管理事業を行う株式会社ナルネットコミュニケーションズ(愛知県春日井市/鈴木隆志代表取締役社長、以下「ナルネット」)が、自動車アフターマーケット業界で目覚ましい躍進的な動きをみせている。同社事業の根幹を支えるのは、リース車両の整備・メンテナンス業務を担う提携整備工場ネットワークであり、2024年12月時点で全国12,123ヶ所を網羅しているという。

ナルネットは、2023年8月に伊藤忠商事株式会社と伊藤忠エネクス株式会社が共同で設立するMobility & Maintenance Japan株式会社による資本参加に合意。その流れの中で2024年8月に株式会社WECARS(東京都千代田区/田中慎二郎代表取締役社長)の顧客車両の整備・サービスにおいて協業開始の基本取引契約を締結。9月には株式会社IDOM CaaS Technology(東京都渋谷区/山畑直樹代表取締役社長、以下「ICT」)とも業務提携を締結。ICTが展開するカーリースおよびレンタカーのサービス(ノレル/ノレルGO)に対し、ナルネットは車両管理サービスと整備メンテナンスネットワークを提供すると発表した。

さらに12月上旬には、トヨタ自動車が2025年2月から新たに立ち上げる予定の「トヨタメンテナンスセンター」運用における同社法人リース車両メンテナンスの受託管理においてナルネットが業務提携するとの報道記事が出たことで、より一層、ナルネットへの注目度が高まっている。

そこで、ナルネットの沿革、主な事業内容、提携整備工場ネットワークの成り立ちや現状、WECARSやIDOM(ICT)との協業・業務提携を踏まえた事業戦略について、同社の鈴木隆志代表取締役社長に話を聞いた。

取材にご協力頂いた、株式会社ナルネットコミュニケーションズの鈴木隆志代表取締役社長

リース車両の整備・メンテナンス委託管理に特化したBPO事業

同社創業者の出口満氏が、1963年に自身の叔父が経営する自動車整備会社(株式会社上田自動車/愛知県春日井市)への入社をキッカケに、自動車リース事業に将来性を感じて同社にて法人向けの自動車リース事業を開始。その経験を活かして出口氏は1978年に日本オートリース株式会社の名で、独立系の自動車リース会社を設立した。創業当時は自動車リース事業が登場したばかりで法人ニーズが高く契約車両は順調に増加したものの、新車のリース車両確保等による資金繰りの負担が大きく困窮する事態に陥った。

このとき出口氏は、金融機関が運営するリース会社が数多く設立される中で、リース車両の整備・メンテナンス作業に苦戦していることを知り、そこに商機があると考えて、法人リース車両の整備・メンテナンスの委託管理に特化したBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービス事業を立ち上げた。これが大きなターニングポイントとなり、数多くの金融機関と業務提携を行って業績を拡大。同事業は2024年12月時点におけるナルネットの全体売上8割を占めるほど成長した。

株式会社ナルネットコミュニケーションズは、愛知県春日井市に本社を構える《画像提供:ナルネットコミュニケーションズ》

また同社は、2000年に現社名の株式会社ナルネットコミュニケーションズへ社名変更。2014年に出口氏が会長となり、当時常務取締役だった鈴木隆志氏が代表取締役社長へ就任。2019年にジャフコグループ株式会社に事業継承を行い、2023年8月に伊藤忠商事グループとの資本提携を経て、2023年12月に東京証券取引所グロース市場へ上場している。

提携整備工場ネットワークの成り立ち

ナルネットの根幹といえる、提携整備工場ネットワークの体制構築は、金融機関の自動車リースBPOサービス開始時期に遡る。技術面・設備面ともに安心感がある自動車メーカー系ディーラーのサービス本部と委託契約を結んでメイン工場とし、細かい作業もカバーできるガソリンスタンドをサブ工場とする2工場体制でスタート。ガソリンスタンドの閉鎖増加に伴って、全国の専業整備工場やカー用品店と委託契約を結び、全国12,123ヶ所(4割ディーラー・6割専業工場とカー用品店)を網羅する提携整備工場ネットワークとなった。

《画像提供:ナルネットコミュニケーションズ》

近年、普及拡大が進む先進運転支援システム(ADAS)搭載車に関わる電子制御装置整備や、今年10月から開始となった車検のOBD検査やOBD確認には特定整備認証の取得が必要で、車両の進化に伴って高度化は続く。このためナルネットは提携整備工場ネットワーク内でWebアンケートを実施するなど情報収集を行い、各整備工場のレベル感を把握するなど役割分担の整理を進めているという。

また、提携整備工場ネットワークとの関係性強化や情報提供などを目的に、2023年8月にオウンドメディア「モビノワ」をオープン。EVや自動運転など新技術・サービス関連ニュースをはじめ、人手不足やエーミング関連のコラム記事、イベント情報、自動車アフターマーケット従事者に役立つ動画のほか、問題提起や課題解決のためのコミュニティとしても展開し、同コミュニティには2024年12月現在で約1,800ユーザーが登録している。

2023年8月にオープンしたオウンドメディア「モビノワ」

マイカーリース事業の実績が協業につながった

ナルネットが、WECARSの顧客車両や、IDOM(ICT)のカーリース・レンタカー車両に対する整備・サービスの協業や業務提携に至った経緯について、鈴木社長は「個人向けマイカーリースのサポート事業を行っていたことが自社の評価につながった」とコメントする。

ナルネットは、法人リース車両の整備・メンテナンス委託事業で成長してきたが、法人リース車両は部品交換の頻度が多いため、仕入れ原価の高騰によるコスト高に加え、整備士の高齢化や人手不足も重なって作業負荷も高いながら利益率は低いという苦しい状況がある。

そこで、近年、軽自動車を中心にマイカーリースの需要拡大の動きに着目。法人リース車両と比べて、マイカーリース車両は走行距離や部品交換頻度が少なく、原価コストや作業負荷の影響を受けにくいと判断して、個人向けマイカーリースのサポート事業に注力するようになったという。この結果、現在は法人リース車両とマイカーリース車両それぞれ50%の割合で、整備・メンテナンス事業を請け負っている。法人リース車両の実績のみだったら、伊藤忠商事グループのWECARSやIDOM(ICT)との協業や業務提携は実現しなかったのではないかと、鈴木社長は見解を述べていた。

B to B to C へビジネス領域を拡大

トヨタ自動車が2025年2月に立ち上げ予定との報道記事が出た「トヨタメンテナンスセンター」運用に関するナルネットの業務提携については、トヨタ自動車から正式な発表が行われていないため、鈴木社長は「コメントする立場にない」との返答だった。

いずれにせよ、ナルネットの急成長のポイントは、法人リース車両に特化したB to Bビジネスから、一歩踏み込んで一般カーオーナーのリース車両も手掛けるB to B to Cへとビジネス領域を拡げた点が重要だったことは明白だろう。今後の自動車アフターマーケット業界において、リース車両の整備・メンテナンス対応を一手に引き受ける中心的な存在として、ナルネットの提携整備工場ネットワークに需要が集中するであろうことが予測される。ナルネットの動きは、自動車アフターマーケット業界の新しい潮流が生まれるキッカケとなる可能性が高く、今後の展開に注目したい。

リース車両の整備・メンテナンス委託管理に特化した“業態変革”がトリガー…「ナルネットコミュニケーションズ」の戦略を鈴木隆志社長に聞く

《カーケアプラス編集部》

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