乗るほどに納得…319万円が安く思えるノート オーラ AUTECH SPORTS SPECの実力とは?

ノート オーラ AUTECH SPORTS SPEC
ノート オーラ AUTECH SPORTS SPEC全 22 枚

日産『ノートオーラ』には、日産モータースポーツ&カスタマイズが手がけた「AUTECH」という特別なモデルがあり、2024年6月にベース車がマイナーチェンジした際にAUTECHも新しくなった。

◆海と空をイメージするAUTECHに走りの要素が色濃く注入

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ブランド発祥の地である湘南は茅ヶ崎の「海」と「空」をモチーフとしたという内外装は、既存のAUTECHとほぼ共通ながら若干異なり、専用のエンブレムが配されているほか、大型リアスポイラーの装着とともに、わずかながら車高がローダウンされているからか雰囲気がやや違って見える。よく見るとタイヤ銘柄も変更されている。

AUTECH SPORTS SPECは走りについても、パワートレーンから足まわりまで手が加えられている。ノートオーラには同じく日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社が手がけた、よりパフォーマンス志向の「NISMO」というモデルもあるが、そちらとも一部を共有しつつ差別化が図られている。

パワートレインについては、もともと基準車もコンパクトで軽量な車体を不満なく走らせることのできる性能を身につけていたところ、モーターやバッテリーはベース車から変えることなく加速フィールを司るコンピュータを専用仕様とすることでさらにポテンシャルを引き出し、よりリニアで上質な加速フィールを実現している。

◆爽快感ある走りが日々のドライビングに風を吹かせる

ノート オーラ AUTECH SPORTS SPECノート オーラ AUTECH SPORTS SPEC

ドライブモードはノーマルモードがベース車のスポーツモードよりも速くされているとおり、ドライブすると明らかに速い。アクセルレスポンスは俊敏ながら、踏んだ以上に強く加速するようにはなっていないので、速さを味わうことができながらも扱いやすく、意のままに操れる感覚が増している。スポーツモードにすると扱いやすさを損なうことなく、さらにパワフルになる。

足まわりや車体については、熟練のテストドライバーが徹底的に走り込み、上質で爽快なドライブフィールを目指して、車両姿勢やサスペンション仕様、パワーステアリング特性をチューニングしたという。車体への入力を効果的に減衰させるパフォーマンスダンパーや、大型のルーフスポイラーなどの採用もポイントだ。

ドライブすると、まず回頭性のよさが際立つとともに、NISMOと違ってFWDのみの設定ながら、ドライブフィールにはあたかも4WDのような感覚もあることも印象的だった。4輪がふんばって路面を捉える感覚があり、リアの高いグリップがハンドリングにも寄与して、コーナーを小さな舵角を維持したままスムーズに立ち上がっていけることに感心した。

基準車もよくできているが、やや中立の据わりが甘く、ステアリング操作に対して応答遅れが見受けられたところ、AUTECH SPORTS SPECは微舵の領域からリニアに応答してしっかりとした手応えがあり、直進安定性も高まっている。

引き締まった足まわりにより乗り心地はやや硬めながら、振動が瞬時に収束するので不快に感じることもない。意のままに操ることができる上に挙動が乱れにくく、安心感がある。

一連の走りには、手を加えたいろいろなアイテムが効いているに違いないが、リアをモノチューブ式としたのが特徴のショックアブソーバーや大型リアスポイラーは、いずれもNISMOと共通ながら、実はスプリングレートがNISMOよりも高いと知って驚いた。

また、リアエンドに追加したパフォーマンスダンパーの性能を十分に発揮できるよう、ブラケットの剛性や取り付けボルトのサイズにまでこだわったというのは、ファクトリーチューンなればこそに違いない。タイヤはいろいろ試した上で、トータルバランスに優れ、もっとも求めた性能を備えていた「MICHELIN ePRIMACY」を採用したという。このようにノートオーラAUTECH SPORTS SPECは、コンセプトどおり安心感が高いハンドリングと爽快で質感の高い乗り味を実現していた。

あらゆるものが絶妙な味付けで、しっかりと丁寧に作り込まれたことが伝わってくる、まさしく“プレミアムスポーティ”を謳うに相応しい、仕上がりであった。このたたずまいと走りを味わうと、一見割高に感じる319万8800円という価格が非常にリーズナブルに思えてきた。

《岡本幸一郎》

岡本幸一郎

1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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