【フェラーリ 12チリンドリ スパイダー 海外試乗】この時代に自然吸気12気筒を味わえる醍醐味…九島辰也

フェラーリ 12チリンドリ スパイダー
フェラーリ 12チリンドリ スパイダー全 34 枚

フェラーリ『12(ドーディチ)チリンドリ スパイダー』をポルトガルで行われた国際試乗会で走らせた。このクルマは昨年クーペで話題となったモデルの“屋根開き版”だ。

【画像全34枚】

クーペが話題となった理由は名前にもなっているV12エンジンで、モーターや過給器のない自然吸気ユニットが搭載されている。同じようなカテゴリーの他社のモデルが続々とモーターを積み始めている中、『812スーパーファスト』や『プロサングエ』に続いて、自然吸気式を採用しているのだから目立つのだ。それはまさにフェラーリ流といったところだろう。

そのオープントップモデルがこのスパイダーで、リトラクタブルハードトップを採用する。ファブリック製のソフトトップでないのはデザイナーの意向で、ハードトップの方がスッキリしてかっこいいと言う判断だそうだ。開閉は約14秒で行われる。45km/h以下であれば走行中も稼働可能。スイッチはセンターコンソールにある。

◆マッサージ機能に温風シートもある「快適フェラーリ」

ではクーペと比べるとどうかだが、開発を同時に行なったと言うだけあり、共通パーツは多い。パワーソースはもちろんのこと、サスペンションのセッティングも同じだ。スパイダーの車重はクーペ+60kgとなるが、ダンパーの減衰圧、バネレートは変わらない。トップの重さは40kg出そうだから、あとの20kgは稼働用モーターや補強パーツと考えられる。

屋根を開けた状態でのキャビンは、思った以上に心地よかった。座面が低く沈み込むように座るので、風の影響は少ない。特に、左右の窓とリアのガラスを上げてしまえば快適そのもの。リアガラスがウインドディフューザーの役目をはたし、後方からの巻き込んだ風をシャットアウトしてくれる。

さらに言えば、見た目にレーシーなバケットシートを取り付けているのだが、実は首元から温かい風を送り出すことができるようになっている。なので、エアコンやシートヒーターと合わせればよほどでない限り冬のオープントップドライブを可能とする。夏にはベンチレーション機能が役立つであろう。

シートに関する操作はセンターディスプレイか助手席目の前の小型モニターで行う。首元の風は三段階で調整可能。さらに言えば、このシートにはマッサージ機能が組み込まれている。マッサージは強さ調整だけでなくシートの部位を選択できる徹底ぶり。プロサングエでも驚いたが、このクルマはよりスポーティなスタイリングだけに衝撃的である。

◆12気筒サウンドが間近に感じられる

そんな快適なキャビンだが、ここに座る醍醐味はやはりこの12気筒エンジンのエキゾーストサウンドを間近で聴けることだろう。屋根を開けていればダイレクトにそれが耳に届く。この12気筒自然吸気ならではの乾いた甲高い音はもはや希少だ。

数年前にジャガーがFタイプのV8サウンドを英国の国立図書館に保存したニュースがあったが、この12気筒エンジン音もまたイタリアの図書館や博物館、もしくは美術館に保存すべきと思う。

と言うのが、ポルトガルでステアリングを握ったフェラーリ 12チリンドリ スパイダーの概要。クーペとはまた一味違うスパイダーならではの魅力と価値を感じたテストドライブであった。

九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。東京・自由が丘出身。

《九島辰也》

九島辰也

九島辰也|モータージャーナリスト 外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。東京・自由が丘出身。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 「妄想が現実になった」トヨタがAE86のエンジン部品を発売へ…「復刻だけじゃない」その内容に驚きの声
  2. 「TWIN TURBOのロゴ懐かしい!」Z32ファン感涙、レトロ感あふれる新型『フェアレディZ』が話題に
  3. 「思ったよりだいぶ安い」トヨタ『GRヤリス』に新登場、エアロパフォーマンスパッケージに絶賛の声
  4. 【ジープ レネゲード eハイブリッド 新型試乗】レネゲード、ここにいよいよ極まれり…島崎七生人
  5. メルセデスベンツ『Cクラス』次期型を予告、光る大型グリル採用…初のEVも設定へ
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  3. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
ランキングをもっと見る