スズキ「鈴鹿8耐」2年目への挑戦!「優勝を目指さなければ8位以上はない」チームリーダー佐原氏が語る…東京モーターサイクルショー2025

チームスズキCNチャレンジが2年目の鈴鹿8耐参戦を発表(東京モーターサイクルショー2025)
チームスズキCNチャレンジが2年目の鈴鹿8耐参戦を発表(東京モーターサイクルショー2025)全 40 枚

「東京モーターサイクルショー2025」において、『スズキオシフェス』をテーマにしたブースを披露したスズキ。その中でもひと際注目を集めた発表が、「2025 FIM世界耐久選手権“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会」(鈴鹿8耐)への参戦表明だ。

これは2024年から始まった新しい取り組みであり、レースを通じて環境負荷低減と走行性能の向上を図るというもの。実験的な車両が走る「エクスペリメンタルクラス」に、「チームスズキCNチャレンジ」として再びエントリーする。

チーム名の「CN」は、「カーボンニュートラル」を意味し、ベースマシンの『GSX-R1000R』には、下記のサステナブルアイテムを多用。燃料やタイヤ、オイル、カウルといったあらゆるパーツに環境に対する強い意識が見て取れる。

2025 チームスズキCNチャレンジ GSX-R1000R(東京モーターサイクルショー2025)2025 チームスズキCNチャレンジ GSX-R1000R(東京モーターサイクルショー2025)

■参戦車両 2025チームスズキCNチャレンジGSX-R1000R
・燃料:トタルエナジーズ Excellium Racing 100(100%サステナブル※燃料)
・タイヤ:ブリヂストン 再生資源・再生可能資源比率を向上したタイヤ
・オイル:MOTUL バイオ由来ベースオイル
・カウル:JHI 再生カーボン材(プリプレグ材)
・フェンダー他:トラス Bcomp®(天然亜麻繊維複合材料 非漂白品 使用範囲拡大)
・前ブレーキ:サンスター技研 熱処理廃止鉄製ディスク、サンスター技研/東海カーボン ローダストパッド
・バッテリー:エリーパワー 車載LFPバッテリー、ピット電源供給用蓄電池
・マフラー:ヨシムラジャパン 環境配慮型チタンTranTixxii®‐Eco製サイレンサー
・ユニフォーム:アールエスタイチ 100%再生生地のチームポロシャツ

■チーム体制
・チーム名:チームスズキCNチャレンジ
・テストライダー:津田拓也
・プロジェクトリーダー兼チームディレクター:佐原伸一
・テクニカルマネージャー:田村耕二
・クルーチーフ:今野岳

さて、では2025年型のマシンは、昨年の仕様となにが違うのか。そして、ライダーの人選はどうなるのか。そうしたあれこれを、チームのプロジェクトリーダーを務めるスズキの佐原伸一さんに聞いてみた。

◆「将来、24時間耐久を目指すとなれば、まだまだやるべきことがある」

チームスズキCNチャレンジ、プロジェクトリーダー兼チームディレクターの佐原伸一氏チームスズキCNチャレンジ、プロジェクトリーダー兼チームディレクターの佐原伸一氏

----:サステナブルアイテムを採用するパートナー企業は、2024年の参戦時からほぼ継続でしょうか?

佐原:大半がそうですが、燃料が大きく違います。昨年は40%バイオ由来のものでしたが、今年は100%。耐久レースを走る上では、当然新しい課題が出てくるので、その対策を講じています。

----:課題というのは、燃費ですか?

佐原:それもありますし、オイルの希釈(バイオ由来燃料の場合、未燃焼ガスがオイルに混入し、潤滑性能が低下したり、オイル量が増大する問題がある)もそうですね。ただし、環境負荷低減のためにも、どうしても乗り越えていかなければいけない課題だと考えています。

2025 チームスズキCNチャレンジ GSX-R1000R(東京モーターサイクルショー2025)2025 チームスズキCNチャレンジ GSX-R1000R(東京モーターサイクルショー2025)

----:マシン自体は、2024型から発展したものですか?

佐原:ベースは引き続きGSX-R1000Rですが、ヨシムラさん(ヨシムラSERTモチュール)のノウハウにプラスして、スズキ独自の開発度合いを強めています。目に見える、わかりやすい部分だと、形状が大きく変わったウイングレットがそのひとつで、今後もさまざまなトライを続けていくつもりです。

----:昨年の決勝後に話を伺った時、「マシンの状態を分析し、あらゆる観点から検証してみないとレースが終わったとは言えない」とおっしゃっていました。その結果が2025年型に活かされていると想像しますが、実際どうだったのでしょう?

佐原:レース後のエンジンをバラすと、ピストンまわりにノッキングの症状が出ていました。ガソリンの性質上、これは想定していたものですし、決勝8位というリザルトを踏まえると大きなネガではありません。とはいえ、将来的にもっと長丁場のレース、たとえば24時間耐久を目指すとなった場合は、まだまだやるべきことがある。その意味で、昨年のデータが今年のマシン開発に活かされているのは間違いありません。

2025 チームスズキCNチャレンジ GSX-R1000R(東京モーターサイクルショー2025)2025 チームスズキCNチャレンジ GSX-R1000R(東京モーターサイクルショー2025)

◆「津田選手とは互いに行間を読める」

----:開発といえば、昨年は裏方に徹していた印象の津田拓也選手ですが、今年は主軸とも呼べる存在ですね。ライダーとして、どのような部分を評価されていますか?

佐原:ご存じの通り、津田選手はスズキのライダーとしてのキャリアが豊富で、歴代のGSX-Rも、我々のテストコースである竜洋も熟知しています。普通なら見過ごすような変化も敏感に察知してくれるセンサーの持ち主で、彼がなにを求めているのか、それに我々がどう応えるのかも含めて、互いに行間を読めるというか、意思疎通がスムーズに行えることがメリットですね。

----:佐原さんだけでなく、テクニカルマネージャーの田村さん、クルーチーフの今野さんも津田選手との付き合いは長く、MotoGPマシンの開発でも同じ時間を共有していたことも大きいでしょうね。チームスタッフに関してですが、昨年同様、今年も多くは社内公募でしょうか?

チームスズキCNチャレンジ(鈴鹿8耐2024)チームスズキCNチャレンジ(鈴鹿8耐2024)

佐原:核になる部分のスタッフは昨年と同様ですが、総勢30名ほどの体制になる中(ライダー除く)、半分くらいは新たなメンバーで構成しています。昨年の挑戦をきっかけに「ぜひ自分も」と名乗りをあげてくれる人が増え、人選は本当に大変でしたけど。

----:昨年は結構ぎりぎりなタイミングでしたよね?

佐原:鈴鹿8耐への参戦は、対外的にも社内的にも、昨年のこの場(東京モーターサイクルショー2024)まで公にできず、スタッフが固まったのは4月末でしたからね。それを思えば、今回は昨年末に募集を開始して、年明けには人選。そのため、かなり余裕があるつもりでしたが、開発やテストの項目が増えたため、まったく楽じゃないのが実情です。

----:見方を変えると、かなりテストは進んでいる?

佐原:3月にシェイクダウンして、津田選手にはすでに何度かテストをこなしてもらっています。

◆「優勝を目指して取り組まなければ8位より上はあり得ない」

佐原伸一氏(左)と津田拓也選手(中央)佐原伸一氏(左)と津田拓也選手(中央)

----:スズキファンだけでなく、レースファンにとってもライダーの人選は、かなり気になるところです。

佐原:プレスカンファレンスで申し上げた通り、3名体制の前提で準備を進めています。津田選手は最有力候補と思って頂いて間違いなく、昨年エースライダーを務めてもらったエティエンヌ・マッソン選手もそう。

----:あと一人ですね。

佐原:レースですから当然、より上位を目指したい。なので、可能な限り、速いライダーを選定したいと思っています。

----:津田選手とマッソン選手という大ベテランとの組み合わせを考えると、若いライダーということでしょうか。

佐原:そうですね。日本人も、そうじゃないライダーも含めて、広く検討しているところです。6月の鈴鹿テストの前には、なんらかの発表ができるようにしたいと考えています。

チームスズキCNチャレンジ(鈴鹿8耐2024)チームスズキCNチャレンジ(鈴鹿8耐2024)

----:昨年は予選16位、決勝8位、周回数216周というリザルトでした。今年はどのような目標を掲げてらっしゃいますか?

佐原:それはもちろん勝つつもりですし、最低でも表彰台を見据えて挑みます。公式の場では、「昨年の8位を上回る」という言い方になっていますが、この領域になると、優勝を目指して取り組まないチームが8位より上にいけるなんてあり得ない。今年は、我々スズキの強さを見せたいと思っています。

----:ありがとうございます。レース後、またいいお話が聞けることを楽しみにしています。

2025 チームスズキCNチャレンジ GSX-R1000R(東京モーターサイクルショー2025)2025 チームスズキCNチャレンジ GSX-R1000R(東京モーターサイクルショー2025)

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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