EVに乗り換えたことで感じたメリットはどこ? EVの良さは所有してみないとわからない

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EVに乗り換えたことで感じたメリットはどこ? EVの良さは所有してみないとわからない全 8 枚

どんな商品、サービスにおいても同様だが、使ってみないと、所有してみないとわからないことは多い。EVはその代表のひとつだと考える。ここでは、オーナー視点で、EV(日産『サクラ』)を所有してみてわかるよかった点、そうでもなかった点を整理してみたい。

◆EVを所有すると日々のランニングコスト低下は実感可能

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EV所有のメリットの筆頭といえるのはランニングコストの低減だろう。ガソリン1Lで走れる距離が22km(国土交通省:平成30年)、ガソリン代を179円(2025年1月18日現在のGogo.gsによる全国平均。資源エネルギー庁1月14日付価格調査では181円)とする。つまり平均的な自動車は1kmあたり8円かかることになる。対してEVの平均電費は6km/kWhという数字がよく用いられる。電気代(kWh単価の目安)の全国平均は31円(全国家庭電気製品公正取引協議会)となっている。こちらは1kmあたり5円で走行可能だ。

電気代は地域差や契約プランごとの単価が大きく変わる。基本料・調整金・使用料の変動も大きい。自分は維持費を計算するときは40円/kWhという単価を使っている。それでも所有するサクラの通年の電費は8km/kWhなので、1kmあたりの単価は5円と全国平均値と変わらない。

1kmあたりの差額を3円として、毎月400~500kmほど走った場合、EVはガソリン車と比べて1200~1500円の節約になる。大した差ではないと思うかもしれないが、乗用車の平均燃費はハイブリッド車も含んだ数字を使っている。ガソリン車の実燃費が10~15km/Lだとすると、EV乗り換えによるランニングコストの低下はさらに増す。

また上記の40円という単価は電力会社の契約基本料を含んでいるが、実際の充電によって増えるのは重量課金の部分だけだ。夜間電力やEVプランを使えば、単価は20~25円に下がる。一晩で20kWh充電(サクラ1台分)したとしても純増するのは400~500円。

実際、サクラ導入で電気代の上昇は毎月1000円くらいだった。エアコンの利用や電気代の価格変動で埋もれる範囲で、電気代が跳ね上がった印象はない。ガソリン代の出費がゼロになっているので、節約効果はでている。

EVの電費で注意したいのは、冬場の電費はカタログ値から3割ほど落ちることがある点だ。条件次第だが、低温時の短距離ほど電費は落ちる(これはガソリン車も同じ)。サクラの場合、冬場の数kmのチョイ乗りだと5~6km/kWhまで落ち込む。

◆構造がシンプルでメンテナンスコストも下がるが注意点も

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電気代(燃料代)はランニングコストの大きな部分を占めるが、通常のメンテナンスにかかる費用もEVは有利だ。エンジンとトランスミッションがないのでオイル類の交換が発生しない。液体で気にするとしたら冷却水とブレーキオイルくらいだろう。

EVは、ブレーキパッド・ブレーキシューの減りが小さいという特徴もある。EVでは減速するときモーターの起電力を使ってバッテリーに充電を行う(回生ブレーキ)。パッドやシューの摩擦だけで減速・停止するわけではないので、ブレーキの消耗が抑えられる。

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EVは重いのでタイヤの減りが激しいというが、実際のオーナーからそのような声はあまり聞かない。初期のテスラにおいて、アクティブサスの制御と動力制御の相性のためか、駆動輪が偏摩耗することがあったようだが、現在のEVではそのようなことはない。重いといっても車重で1.5から2トン。乗用車として特別重いというわけではない。また、現在はEV専用タイヤもでている。

機構部品が少なく、構造もシンプルなEVは、一般論としてメンテナンスコストを下げられる。実際、ディーラーのメンテナンスパックのプランもガソリン車・ハイブリッド車よりも低く設定されていることが多い。

メンテナンスが楽という点はメリットだが、メンテナンスをしなくていいわけではない。この点は注意が必要だ。とくにEVはガソリンスタンドに行くことがない。タイヤのエアチェックや溝の状態。冷却水の状態、補器類バッテリー(12V)のチェックなど、ボンネットを開ける習慣のないドライバーは、これらを確認する機会が減ることになる。EVオーナーはディーラーでの定期点検を必ず受けるようにするか、始業点検の項目は自力できるようにしておいた方がいい。

ただし、最近はガソリンスタンドにもEV充電器を設置するところが増えている。EVもガソリンスタンドに行きやすくなっているので、定期点検以外の相談を兼ねて利用するとよいだろう。

◆乗ってみれば分かる! EVの運転は楽

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EVの良さはその運動性能にもある。バッテリーで重くなる分、運転の取り回しや加速など悪くなるのでは? という疑問もあるだろうが、市販されているEVについて動力性能や運動性能が既存の車より劣るということはない。

俊敏なモータートルクは、街中でもキビキビと走ることが可能だ。EVならば定員乗車の状態でも出足でもたつくことはない。例えば赤信号で右折待ちのときや、高速道路などの合流ランプでは、思ったとおりの加速(アクセルレスポンス)を見せてくれるので、運転が非常に楽だ。登り坂でパワー不足を感じることもない。

サクラは軽自動車だが、高速道路や山道も運転が楽だ。エンジン音もないし振動も少ない。同じ距離を走っても疲れ方が違う。カーオーディオの音楽もよく聞こえるのもうれしい。登り坂でもアクセルに足を乗せる感覚で少し踏み込めばよい。中間加速もよいので、車線変更も楽だ。

ただし、登り坂では電費が落ちるのも事実だ。しかし、EVは下り坂では回生ブレーキによって充電量を回復させることができる。峠を越えるようなとき、登りで電費が落ちるが、下り坂でバッテリーが回復するので、感覚的にはガソリン車での峠越えと変わらない。

筆者のサクラで、下り坂でどれくらい充電量が回復するかを試したことがある。富士吉田から富士スバルライン5合目を往復して計測した。麓のスタート地点でのバッテリー残量は約56%。戻ってきたときは24%。走行距離はスバルライン往復で約50km。32%分の消費で50kmを移動できたことになり、おおまかな区間電費は7.8km/kWhと通常走行の平均電費とあまり変わりがなかった。

なお、計測は流れに乗る形で行ったので、途中で先行車に追いついて後ろを走る状態だった。電費をかせぐためにアクセルを踏まずに(コースティングだけで)降り続けたわけではない。

◆EV拒絶はもったいない!? 食わず嫌いは確実に損する

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細かい点になるが、他にもメリットなる特徴を挙げることができる。

さきほどの富士スバルラインは夏季にはマイカー規制があり一般車は通行禁止となる。しかし、2024年現在、EVはマイカー規制の対象外となる。他にも、乗鞍スカイラインなど一部の観光地で、排ガスを出さないEVを通行可とする道路が存在する(実際の交通規制は年度、次期、場所ごとに細かく変わる。利用前に自治体等への確認は必要)。

排ガスを出さないので、地下駐車場でもエアコンを効かせることができる。通常地下駐車場や閉鎖空間では、アイドリング禁止となるが、デパートなどの地下駐車場で、家族や同伴者を待つ間、アイドリングしながらエアコンを効かせたいことがある。EVならば心配はない。

EVはエンジンという熱源はないが、暖房はむしろすぐに温まる。EVの暖房はPTCヒーターとAC(ヒートポンプ)を利用する。水温が上がるまでヒーターが効かないということがない。多くのEVはアプリでヒーターをリモートでONにすることができる。出かける直前にONにしても、ガレージに移動する間にそこそこ車内は暖かくなっている。

もちろんACをONにすると電費は落ちるが、冬場やACで燃費が落ちるのはどの車も同じだ。いまどきのEVならそれで実用にならないということはない。ガソリン車と比較すると欠点の指摘がたやすいEVだが、EVならではのメリットも存在する。進歩が速く、OTA対応も進んでいるEV(特に輸入車EV)は、乗りながらにして、車の不具合や性能が改善されていく。ADASの制御、コンソールのUI、充放電性能などはアップデートで改善されることは珍しくない。食わず嫌いで選択肢に入れないのはもったいない。

《中尾真二》

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