いすゞのBEV路線バス『エルガEV』---先行するライバルへの対抗策

いすゞエルガEV万博シャトルバス(大阪メトロ)
いすゞエルガEV万博シャトルバス(大阪メトロ)全 14 枚

いすゞ自動車のバッテリーEV(BEV)路線バス『エルガEV』が、4月13日に開幕した大阪・関西万博「2025年日本国際博覧会」のシャトルバスとして、バス事業者3社(Osaka Metro、南海バス、阪急バス)によって運行されている。ライバルから遅れて登場したエルガEV、特徴は何か。


●5%をカーボンニュートラル車両に

エルガEVはジャパンモビリティショー2023で発表され、ショートホイールベースの都市型モデルが2024年5月28日に発売された。国(国土交通省)が定めた省エネ法の目標として、バス保有台数200台以上のバス事業者は、2030年度までに保有台数の5%をカーボンニュートラル車両に更新するとされている。そういった中での登場だ。

いすゞ自動車が「路線バス勉強会」を開催、そこでエルガEVについて説明した。説明したのはいすゞ自動車フリート営業第二部バス営業グループの平野賢治グループリーダー。フルフラットフロア、ブラインドスポットモニターなど安全装置、ディーゼル車とほぼ共通の運転席が特長だと言う。

●フルフラットフロア

エルガEVは車内の安全対策としてフルフラットフロアを採用している。そしてすべての座席は平らな床から腰掛ける構造だ。他社製EVバスは床はフルフラットでも、座席に腰掛ける際に一段段差を上がる必要があり、このことがつまづきによる事故の原因になり得る。この座席レイアウトのために、エルガEVの着席定員は19席と通常の一般バスより7~8席少ないが、安全性を重視した結果だ。

バス特有のニーズとして、乗客の車内事故抑制が求められている。2022年には803件の車内外事故が起き、そのうち246件が車内事故、さらにそのうち発進時が102件、急停止時が59件だった。

●バス直前の横断はやめましょう

エルガEVには「フロントブラインドスポットモニター」を装備した。自車直前の歩行者や自転車を検知してドライバーに通知し、事故を防ぐ安全サポート機能だ。前方注意表示はインパネに表示される。平野グループリーダーは、バス事業者から最近よく聞くケースとして「停留所で止まっている時に、バスの前方を、おばあさんがとことこと歩いていたが、腰が曲がって差が低いので運転手からよく見えず、ひきそうになった」と話す。

また安全装備では「ドライバーステータスモニター」も採用された。ドライバーの居眠りや脇見を検知するとシートのバイブレーターを作動させ、警告する。設定時間内に反応がなければドライバーの異常と判断し、EDSS(ドライバー異常時対応システム)が作動して自動ブレーキをかける。

ただしブレーキの強さについては、路線バスには車内に立ち客もいるため、減速Gを抑え、立っている乗客が倒れない程度の制動に留める仕様だ。平野グループリーダーは「最終的にバスはどこかにぶつかってしまうだろう」と想像するが、おそらく低速になっているので衝突の衝撃は小さいはず。急ブレーキで倒れるより安全との判断だ。

貸切バスでは全員着座を前提としているため、もっと強い制動力を確保している。「非常時システム作動時にはペットボトルが飛ぶ程度のGがかかる」と言う。

●EVとディーゼルで運転席は共通

エルガEVとエルガ・ディーゼル車で、運転席の体裁はほぼ同じだ。異なるのはステアリング左側の回生ブレーキと電動パーキングぐらい。平野グループリーダーは「せっかく電気バスを出すのだから、新しいデザインのコクピットがいいのではないか、という声も上がっていた」と明かす。

しかし同じにしたことで、ドライバーの乗り換え教育が簡便になり、それが安心・安全につながるとバス事業者に好評だという。また路線バスのドライバーは、一日にディーゼル車やEV、中型・大型バスの複数の車種を運転することもあるため、乗り換えた時に操作の不安が少ないことはエルガEVの長所だ。


《高木啓》

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