BYDが2026年にも日本の軽自動車規格のEVを発売するという。しかもBYDはこの発表の前に、PHEV向けに独自開発の水平対向エンジンも公開している。日本OEMのお家芸ともいえる領域に切り込んできた形だ。
すでにBYDジャパンから正式なリリースがでているが、決定に至った経緯と、あらためて業界に与えるインパクトや影響についても考えてみたい。
王会長の「あれはなんだ?」がきっかけだった
筆者は、BYDが軽自動車のEVを日本で販売するという話を上海で聞いた。4月に「上海モーターショー2025」(オート上海)の取材で現地に訪れていたときに情報が入ってきたのだ。現地では、BYDの工場見学ツアーが行われており、同行していたBYDジャパンの担当者に話を聞いて、事実であることを確認した。帰国後に追加でメール取材も行った。
BYDが軽自動車開発を決定した背景のひとつに、BYDグループの王伝福総裁が2023年、ジャパンモビリティショーで来日した際、「あれはなんだ?」と日本の軽自動車の多さを認識したことがある。最終的に軽EV開発がGOになったという。しかも、プロジェクトはあくまで日本向けの車両として動き始めた。
既報のとおり、BYDも開発中の軽規格のEVは、グローバルカーではなく日本専用のプラットフォームが新規開発されている。『シーガル』の流用や既存プラットフォームをデグレードしたものではない。
そして、公式発表ではないが日本発売にあたっては型式指定を取得する方向で準備が進んでいるともいう情報もある。『ドルフィン』投入のときもそうだったが、輸入台数に制限のあるPHP(輸入自動車特別取扱制度)ではなく、量産する市販車両として設計しているということであり、軽なら日本で売れるのでは? などという安易な計画でないことがうかがえる。
気になる「軽規格」の詳細
取材では、筆者がもっとも気になった点も確認した。それは軽自動車の出力自主規制にどう対応するかだ。
現在国内で市販されている軽規格のEVは、エンジン車と同様に64ps(47kW)以下に出力が抑えられている。この規制はあくまで業界の自主規制によるもので、軽自動車の規格はおもにサイズの上限を決めているが、出力制限はなくなっている。