インバウンド増加によるレンタカー業界の現状と課題を共有…全国レンタカー協会第44回通常総会

全国レンタカー協会第44回通常総会
全国レンタカー協会第44回通常総会全 10 枚

一般社団法人全国レンタカー協会(岩崎貞二会長)は6月19日に、東京都千代田区のアルカディア市ヶ谷で「第44回通常総会」を開催した。総会では、2024年度の事業報告(案)ならびに収支計算書(案)のほか、会費の改定や理事及び幹事の選任などが審議された。


また国土交通省による「地域輸送資源活用推進事業」における補助金制度や、急増するインバウンド市場の拡大における、レンタカー事業者の運営リスク増加対策としての「国際免許証有効性確認ツール」などについても情報提供が行われた。

◆右肩上がりの業界の中で協会として取り組むべきこと

総会の冒頭、全国レンタカー協会の岩崎会長が挨拶に登壇し「レンタカー業界は、インバウンド増加の影響などもあり、右肩上がりの産業ですが、同時にその対応も必要で、競争が激化している地域もあります。様々な課題はありますが、業界全体で乗り越えていきたいと思っています」と決意を述べた。また、同協会の会費値下げの議論が進み、目途が立ったことや、マイナンバーカードによる免許証対応、インバウンド対応の進捗などについても触れ、特に国の『地域輸送資源活用推進事業』に関する補助金制度については「国土交通省・観光庁の予算で、インバウンド対応機器の導入補助制度が実現しました。ぜひ来年度も継続してほしいと思います」と要望した。

一般社団法人全国レンタカー協会岩崎貞二会長の挨拶一般社団法人全国レンタカー協会岩崎貞二会長の挨拶

岩崎会長の挨拶に引き続いて、協会の表彰規定に基づき、長年にわたり運営に貢献した役員・委員を表彰、出席会員数の確認、議長の選出、議事録署名人の指名が行われた後、総会は議案の審議および報告に移った。議事に則り第1号議案から第4号議案までの審議が滞りなく行われ、全ての議案が承認可決された。

第1号議案の2024年度の事業報告では、外国人観光客数が過去最高を記録し、レンタカー事業も好調に推移していることと関連し、インバウンド対応として、国際免許証確認に関するQ&Aの改定や警察庁提供のパンフレット配布、国の支援制度(インバウンド対応機器導入補助)の活用などが報告された。また組織の現状についても説明がなされ、第一種会員は減少したものの、保有車両数自体は増加し、全体で109万5000台と過去最高を記録したことが併せて伝えられた。

第3号議案の会費の改定については、単年度収支の均衡を目的に、累積黒字を考慮し会費を下げる方針が説明され、試算条件と結果について詳細に報告がなされた。特に小規模事業者への還元を重視している点が強調され、参加者からの異論はなく、原案通りの可決となった。

第4号議案の理事および監事の選任についても異論は無く、原案通りの可決となり、審議事項の審議は終了。その後、2025年度の事業計画案と収支予算案が示され、国内外の利用者増に対応し、利用促進政策を継続すること、特にインバウンド対応、業界の適正運営と質の向上、地区協会の活性化、青年部活動の活発化、災害時の対応体制整備、国の補助制度活用による事業高度化に注力する旨が発表された。

その後は、理事会による会長、副会長、専務理事の選任の結果が報告され、会長には岩崎貞二氏が再任され、副会長にはニッポンレンタカーサービス株式会社の藤原徳久代表取締役社長執行役員、一般社団法人東京都レンタカー協会の村上秀一会長、一般社団法人新潟県レンタカー協会の岡島義英会長、一般社団法人沖縄県レンタカー協会の白石武博会長、専務理事には高橋芳則氏がそれぞれ選任された。

全国レンタカー協会の新役員体制。左から岩崎会長、藤原副会長、村上副会長、白石副会長 ※岡島副会長は欠席全国レンタカー協会の新役員体制。左から岩崎会長、藤原副会長、村上副会長、白石副会長 ※岡島副会長は欠席

◆国際免許証の有効性確認ツールの状況

その他の情報提供としては、国際免許証の有効性確認ツールについて、トヨタ自動車株式会社国内モビリティサービス事業室事業開発グループの松平信人グループ長が、TOPPAN株式会社が開発を担当し、国交省の補助金を活用している点を説明。インバウンド市場の拡大に伴い、国際免許証・外国免許証の確認に時間がかかり、トラブルが発生している現状を問題提起した上で、現場の負荷軽減、トラブル低減、無免許運転幇助防止のため、国際免許証の有効性を簡単に判定できるツールの必要性を強調した。使用方法は携帯アプリを起動し、国際免許証を読み込むとAIが自動で有効性を判定するシンプルな仕組みとし、年内または年度内の提供開始を目指すことも併せて発表された。

トヨタ自動車国内モビリティサービス事業室事業開発グループの松平信人グループ長による国際免許証の有効性確認ツールの説明トヨタ自動車国内モビリティサービス事業室事業開発グループの松平信人グループ長による国際免許証の有効性確認ツールの説明

◆レンタカー業界に対する各省庁・企業の取り組みと考え

総会の終盤には退任役員への感謝状の贈呈が行われたほか、出席した来賓から祝辞が述べられた。国土交通省の小林太郎大臣官房審議官(公共交通政策、物流・自動車局担当)は、レンタカーサービスが日々の移動、観光、ビジネス、カーシェアリングなど多様な場面で重要な役割を担っていることを評価した上で、国土交通省として、今年度より地域輸送資源活用推進事業を創設し、デジタル技術を活用した業務の省人化・無人化を支援していることを説明。従来の政策的支援にとどまらず、先端デジタル技術を活用し、レンタカーサービスのさらなる発展に取り組むことを表明した。

国土交通省の小林太郎氏大臣官房審議官(公共交通政策、物流・自動車局担当)国土交通省の小林太郎氏大臣官房審議官(公共交通政策、物流・自動車局担当)

観光庁観光地域振興部の長崎敏志部長は、インバウンドの増加が日本経済の活性化に繋がっていることを強調し、地方への観光分散には二次交通の重要性、特にレンタカーが不可欠であると指摘し、空港での受け渡し、言葉の問題、免許確認の問題、高付加価値な車両サービスへのニーズなど、現場の課題に言及した上で、観光庁として、地域支援メニューを通じてレンタカー業界を支援していく意向を示した。

観光庁観光地域振興部の長崎敏志部長観光庁観光地域振興部の長崎敏志部長

警察庁の阿部竜也長官官房審議官は交通警察への理解と協力への感謝を述べた上で、交通事故死者数は減少傾向にあるが、飲酒運転やあおり運転による事故は増加していることを指摘。また外国人による交通事故の増加が大きな課題であり、レンタカー利用時の事故も増加傾向にあることを報告。日本の交通ルール周知の重要性を認識し、警察としても多言語対応の安全運転啓発動画やリーフレット作成などで協力していることを説明した。

警察庁の阿部竜也長官官房審議官警察庁の阿部竜也長官官房審議官

なお、総会のラストにはあいおいニッセイ同和損害保険株式会社の協力のもと制作された訪日外国人向けレンタカー利用時の事故低減に向けた交通安全啓発動画もお披露目された。動画は、一般社団法人全国レンタカー協会監修のもと制作され、日本の旅行のワクワク感を伝えるとともに、分かりやすくコンパクトに構成され、英語、中国語、韓国語の4カ国語字幕に対応している。パソコン、スマートフォン、デジタルサイネージなど様々なデバイスで視聴可能で、各レンタカー事業者の業務オペレーションに合わせて活用できる旨が、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社ディーラー営業開発部営業開発グループの中居雅明グループ長より伝えられた。

訪日外国人向けレンタカー利用時の事故低減に向けた交通安全啓発動画のお披露目訪日外国人向けレンタカー利用時の事故低減に向けた交通安全啓発動画のお披露目動画について説明するあいおいニッセイ同和損害保険ディーラー営業開発部営業開発グループの中居雅明氏グループ長動画について説明するあいおいニッセイ同和損害保険ディーラー営業開発部営業開発グループの中居雅明氏グループ長

動画の放映後に、総会は無事に閉会し、終了後には懇親会が行われ、和やかな雰囲気の中で業界関係者の親交が深められた。

活発な情報交流が行われた懇親会活発な情報交流が行われた懇親会

《松岡大輔@JCR》

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