訊けばこの『カローラクロス』は、国内/グローバルのいずれも、今や『カローラ』シリーズ全体の販売台数のうち、およそ半数を占めるのだそう。確かに街中や路上で見かける頻度の高さからいっても「なるほどね」と納得がいく。そんなカローラクロスの改良版が今回の試乗車(Z・E-Four)。
ちなみに“クロス”がカローラのラインアップに加わったのは2012年9月のことで、その後2023年10月にはパワートレインの刷新(ハイブリッド車の電動モジュールの刷新とガソリン車の2リットル化)を実施している。記録を辿ると筆者は2021年の最初のクルマを取材・試乗していたが(写真中の赤いクルマはその時のもの)、2023年の改良型はスルーしており、従ってカローラクロスの実車に接するのは今回でおよそ3年半ぶりのことになる。

◆さらに進化した“クラスの水準の上をいく”快適な走り
で、東京・水道橋のトヨタ本社で試乗車を受け取り、早速、外堀通りの流れに乗るところからスタートしてみた。すると第一印象は「クラスの水準の上をいく快適な走りっぷりがさらに進化したな!」だった。
もともとカローラクロスは静粛性を高める手当てが各部になされていたが、今回はルーフ部に横に走るリーンフォースへの高減衰マスチック(ボンド)の高減衰化、Aピラーの吸音材の追加、リアタイヤの車内透過音低減といった対策が加えられた。これらの効果はアリで、定量的な計測こそしていないが、クルマが走り始めると車内で感じる音のザワつきが、これまで以上に気にならなくなったのがわかった。

また乗り味、ステアリングフィールにも磨きがかかったのも実感。今回の改良型は豊田市の高岡工場からトヨタ自動車東日本・いわき工場に生産を移管、それを機にサスペンションのボディへの締結トルクを上げ、取り付け剛性を高めるなどしたのだという。その成果はテキメンで、実際に走らせてみるとサスペンションとタイヤ(ミシュラン・プライマシー4=225/50 R18 95V、指定空気圧は前後とも230kPa)が目標値どおりにキチンと性能を発揮しているいい仕事ぶりをみせ、剛性感のある快適で安心感の高い乗り味を作り出している。
◆気負わず扱えるサイズ感が光る
ステアリングフィールについても、切る/戻すの操舵感が自然でしっとりとした手応えをもち、コーナリングでも安心して切り込んでいける……そんな味わい。試乗車はリアモーターが場面により後輪も駆動させるE-Fourで、確認のため、発進やコーナリング時にやや性急なアクセル操作を試しながらマルチインフォメーションディスプレイを見ていると、必要に応じたトルクが後輪にも配分され、クルマの姿勢が常に安定していることを実感した。

それとパワートレインのマナーがさり気なく自然でスムースなのも見落とせない。普通に走らせている限り、街中でも高速道路でも場面を問わず加・減速が思いどおりにでき、駐車場の出し入れを始めとしたモーター走行時の静かさ、快適性の味わえる室内空間の心地よさは相変わらず。
日頃から内外のBEVにも乗り慣れ、モーター特有の高周波の音や擬似音にもすっかり慣れたらしい、乗り心地・NVH評価担当者の我が家のシュン(柴犬・オス・3歳)も、いうまでもなくいつもどおりの面持ちでリアシートに乗っていた。もちろん飼い主(ドライバー)にとっても、全幅1825mmのこのカローラクロスのボディサイズは、気負わず扱える、日本で乗るには妥当なボディサイズだ……とは、いつも実感することのひとつだ。

◆シートヒーター&ベンチレーションの標準化に「おお!」
そいうえば“URBAN PREMIUM”の方向性をより強化したという今回の改良で感心したのは、室内の装備、質感がより高められた点。とくにZグレードにはフロント2座席にシートヒーター&シートベンチレーションが標準というのは「おお!」と感動した次第(次はステアリングヒーターの標準化も希望!)。
運転席界隈ではコンソールまわりが島型の新デザインを採用、スリムなストライプ状のイルミの追加とともに、今どき、かつ上質な空間に仕立てられている。また“シグナルロードプロジェクション”と呼ぶ、方向指示器の作動と点滅に連動して路面に矢印が投影される日本初の機能も興味深い。夜間など(昼間も点いているが、法規に合わせて照度は落としているのだそう)、自車の進行方向を車外の第三者にアピールするのに有効な機能だ。

外観については写真でご覧のとおり。とくにフロント回りのデザインは、赤いボディ色の従来型の写真と見較べると一目瞭然だが、これまでの型モノのグリルと大型ロアーグリルの組み合わせから、センターランプを追加し、ボディに馴染ませた六角形のグリルのパターンとで、よりスマートで今風の表情に進化した……そんな印象だ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。