【ヤマハ NMAX 試乗】デザインは「超人バロム・1」!? ドイツ車的な重厚さを増した走りの心地よさ…伊丹孝裕

ヤマハ NMAX
ヤマハ NMAX全 47 枚

2016年のデビュー以来、2度目のモデルチェンジを受けたヤマハの125ccスクーター『NMAX』に試乗。元より備えていたスポーツ性と上質さに磨きが掛かり、ライディングも所有欲も満たしてくれる仕上がりになっていた。

ヤマハの125ccスクーターは、豊富なラインナップを持つ。価格の低い順から並べると、『ジョグ125』(26万7300円)、『アクシスZ』(28万3800円)、『シグナス グリファス』(37万4000円)、『NMAX』(38万9000円)、『トリシティ125』(49万5000円)の5機種を数え、それぞれに異なるキャラクターがある。

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この中、NMAXだけの特徴がセンタートンネル構造を有することだ。足を揃えて乗るフラットフロア構造ではなく、一般的なスポーツバイクに近いバッグボーンスタイルのフレームを採用。そのため、乗車時は両足で車体を挟み込むようなライディングポジションとなる。

もちろん、3代目となる2025年モデルでもそれは踏襲され、その上で大小様々な見直しが図られている。静的に分かりやすいのは、前後の灯火機類を中心としたデザイン変更で、精悍さが向上。動的に体感できるのが、サスペンションの改良による乗車感と、熟成が進んで、よりリニアになったエンジン特性だ。

◆「超人バロム・1」的マスクに変身、ライポジの自然さは継承

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まずフロントマスク。切れ長の目を思わせるところはこれまで通りの印象ながら、中央の上下にプロジェクター式のヘッドライトを配し、メカニカルな雰囲気が増した。一方、リアはテールライトとウインカーが切り離され、レイアウトを一新。「超人バロム・1っぽいなぁ」などという、今となっては50代以上でも通じるかどうか甚だあやしい感想を抱きつつ、車体をぐるりと一周。凝縮感のあるスタイリングがアイデンティティのひとつだったが、フロントとリアの顔がさらに叩かれ(=車体中央に向かって圧縮され)、骨太な雰囲気を強めている。

ライディングポジションのナチュラルさ、レバーやスイッチ類の操作性は変わらず良好だ。センタートンネル構造ゆえ、着座には足を上げてまたぐ動作が必要になるが、足首まわりで車体をホールドできる安心感は、それを補って余りあり、気持ちを高めてくれる。シート高は770mmで、身長174cmの筆者だと、両足のかかとが浮く。足つき性は平均的だが、車体幅は狭くないため、降ろした足(特にヒザまわり)とサイドパネルとの接点を邪魔に感じるか、密着感と捉えるかは、体格や好みによる。

着座後に視界に入るLCDメーターは、画面デザインが変更された。専用アプリ「Y-Connect」をインストールしたスマートフォンとの連携機能が追加され、通話・通知のメーター表示の他、車両情報や位置情報をスマホ画面で確認できるお知らせ機能など、コネクティビティの充実が進められている。

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◆シャキッとダイレクトなエンジンとサスペンション

さて、NMAXの真骨頂である走りはどうか。ひと言で言えば、コントローラブルというか、ドライバビリティに優れるというか、もともと備わっていた意のまま感が高まっている。三言、言ってますが。

走り出して最初の好印象は、スロットル開け始めの、極めて微妙な領域における反応で、エンジンそのものの躾もさることながら、CVTとの見事なマッチングによって、タイムラグのない加速を実現している。もちろん、だからといって過敏なわけでもない。ゼロ発進の時もパーシャルから増速する時も右手とリアタイヤがダイレクトにつながった感覚がつぶさで、いかようにも車速をコントロールできる。

今回の改良ポイントを示すリリースには、「熟成を重ねたエンジン」とか「油圧式カムチェーンテンショナー」(を採用したという意味)と愛想無く記載されているだけなのだが、従来のバネ式と比較してフリクションが軽減したことに加えて、VVA(可変バルブ)や各種制御がバランス。駆動力の自由自在感につながっている。

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そしてもうひとつ、動的な質感向上に大きく寄与しているのがサスペンションだ。フロントフォークにオイルロック機構(高負荷が掛かった時の底づきを抑制)が追加され、リアサスペンションはストローク量を5mm延長。狙いとしてはギャップの吸収性と、それに伴う乗り心地の向上だが、体感的な印象は「ふわり」や「ボヨン」といった性質のものではない。

路面追従性が向上したことで、車体の動きが掴みやすく、エンジン同様、こちらもシャキッとダイレクトな反応をみせる。路面の凹凸を拾っても、遊びも余韻も振動もノイズもほとんど伝えることなく、すぐさま収束。その挙動が従来モデルより早まっているため、スポーティさと重厚さがそれぞれ増していて心地いい。

◆スポーティさを忘れない、ヤマハらしさ

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4輪になぞらえるなら、ビシッと硬質なドイツ車のイメージに近い。したがって、ブレーキもそうであって欲しいのだが、ABSの精度には特段進歩が感じられない。つまり、いまひとつだ。

前後ディスクブレーキがもたらす制動力自体に問題はない。ただし、ABSの領域に入ると、ハイドロ系の作動音とレバーに伝わるキックバックに遠慮がなく、事前にそれを知らなければ、驚いて入力を弱めてしまう可能性もある。次の改良では、この部分の上質さの向上も求めたい。

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また、利便性の面ではシート下の収納スペースだ。23リットルの容量が確保されているものの、筆者のジェットヘルメットではシートを閉じることができず(ヘルメットホルダーは2個装備)、その開閉角度も広くはない。ユーティリティ重視のキャラクターではないとはいえ、日本のユーザーの使い方に照らし合わせると重要なポイントだと思う。

もっとも、デザインのスタイリッシュさ、上質な各部仕上げ、一体感の高い走りといった項目では、ライバルを確実にリードしているのは間違いない。どんなモデルでもスポーティさを忘れない、ヤマハらしい仕上がりになっている。

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■5つ星評価
パワーソース ★★★★★
ハンドリング ★★★★★
扱いやすさ ★★★★
快適性 ★★★★
オススメ度 ★★★★

伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト
1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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