クルマ社会が成熟してきた中で、車内での音楽の楽しみ方も時代とともに変化してきた。当連載ではその移り変わりを振り返っている。今回は、2000年代に登場した革命的なミュージックプレーヤーを振り返る。
◆2000年代に入ると、革新的なポータブル音楽プレーヤーが登場し…
さて、当連載の初回で解説したように、レコードで音楽が聴かれていた時代にはクルマの中では主にラジオでしか音楽を楽しめなかったが、カセットテープの出現により車内でのリスニングスタイルが大きく変わった。
そうして70年代の半ばから「カーステレオ」ブームが起こり、90年代になると車内でもCDが聴かれるようになり、今度は「カーオーディオ」ブームが到来する。
なお、ハイエンドカーオーディオの世界では2000年代になっても音楽を持ち運ぶメディアの主体はCDであり続けていたのだが、一般的なドライバーの多くはその頃、車内でもCD以外の方法で音楽を再生し始めた。
なぜなら、世の中に新たなポータブルミュージックプレーヤーが出現し、それが爆発的にヒットしたからだ。その新たなポータブルミュージックプレーヤーとは、『iPod』だ。
◆『iPod』なら、パソコン内の楽曲ライブラリーのすべてを持ち出せた!
iPodは、とにもかくにも革新的なポータブルミュージックプレーヤーだった。革新的である最大のポイントは、「大量の音楽ファイルを持ち出せること」にあった。それまでのポータブル音楽再生機器はCDプレーヤーかMDプレーヤーだったわけだが、持ち運べるメディアの数は限定的に成らざるを得なかった。
しかし、iPodは、家のパソコンに取り込んだ楽曲ライブラリーのすべてを外に持ち出せた。つまり、iPodは、パソコン内の『iTunes』をそっくりそのままコピーできたのだ。
ただし、iPodに楽曲データを収録するにはCDを一旦“リッピング”する必要があり、その作業は手間となる。しかし、CDをMDに録音するのと比べたら圧倒的に楽だった。時間もほとんどかからない。または、楽曲をダウンロードして手に入れるという選択肢も加わった。
◆メインユニットのiPod連携が進み、現在の車内音楽視聴スタイルの原型が形成!
ちなみに、iPodの初代モデルは2001年に登場している。そして、その後、2004年に『iPod mini』が発売された頃には、日本国内でもユーザー数は相当に増えていた。さらに2005年に『iPod shuffle』と『iPod nano』が相次いでリリースされ、利用者が一層増加した。
となると、車内でもこれを使いたいと考えるドライバーが増えていく。これにより、音楽が聴ければ、これまでのように大量のCDをクルマに持ち込む必要がなくなるからだ。また、簡単にプレイリストを作れるので、かつてカセットテープでスペシャルな1本を作っていたようなことも簡単に行える。
結果、カーオーディオメインユニットもこれへの対応が急速に進んだ。外部音声入力端子(AUX端子)の装備が進み、さらにはUSB端子が備えられたモデルも増えていく。そうすることで、iPod連携力が高まるからだ。アートワークの表示が可能となり、曲送り等の基本操作の一部も車載機器側で行えるようになった。
ちなみに現在では、車内でもスマホで音楽を聴くスタイルがスタンダードになっているが、その原型はiPodによって形作られた、というわけだ。
今回は以上だ。次回も2000年代に起きた変化について解説していく。お楽しみに。