クルマ社会が発展・成熟していく中で、車載用音響機材はどのように進化してきたのかを振り返る当連載。前回は、2012年に新登場して話題をさらった三菱電機の『ダイヤトーン サウンドナビ』にスポットを当てた。今回は、これが果たした役割について深掘りする。
◆この新機軸は、「カーオーディオ文化」の終焉に待ったをかけた!
さて、車内でもCDが聴かれるようになってきた90年代に「カーオーディオ」がブームとなり、2000年代の前半には「ハイエンドカーオーディオ」を楽しむ人の数が相当に増えた。しかしその影で逆風も吹き始める。純正メインユニットを換えづらい車種が徐々に増え、さらにはAV一体型ナビが普及し、1DINの高性能メインユニットを取り付けづらくなってきたのだ。
こうして2010年代に入るころには、「カーオーディオ文化」の終焉も危惧され始めた……。
しかし、そんな流れに待ったをかける新機軸アイテムが2012年に新登場した。それが三菱電機のダイヤトーン サウンドナビだ。当機は、ナビとハイエンドメインユニットとの融合は不可能とされていた中でその常識を打ち破り、ナビでありながらも高性能なメインユニットとして高いポテンシャルを発揮した。かくしてこれをシステムの核に据えれば、ナビを確保しながらも理想のサウンドを追求できた。こうして当機は、ハイエンド・カーオーディオという文化が終わるかもしれないという危機を救って見せたのだ。

◆独自の機能「マルチウェイ・タイムアライメント」が、敷居を下げる効果も発揮!
またダイヤトーンサウンドナビは、ハイエンドカーオーディオの敷居を下げることにも成功する。
というのも高音質を追求すると資金も手間もかかってしまい、その点でもマニア性が高くなる。しかし当機を使う場合には、ライトに楽しむこともできた。なんと「ナビを換えるだけ」でも、本格サウンドを手にできた。
そのようなことを実践できたのは、三菱電機だけのスペシャル機能「マルチウェイ・タイムアライメント」が搭載されていたからだ。当機能を活用すると、「マルチアンプシステム」を構築せずともマルチウェイスピーカーの各ユニットの個別制御を行えたのだ。
これがどういうことなのかを詳しく説明していこう。まず普通は、ツイーターとミッドウーファーの個別制御を行おうとするときにはマルチアンプシステムの構築がマストとなる。プロセッサーにて信号を帯域分割してそれぞれの信号に対して個別にチューニング機能を適用した後には、それらの信号は別回線にて伝送しなければならず、パワーアンプで信号を増幅する際にも個別のチャンネルにて行わなければならない。

◆ダイヤトーン サウンドナビなら、“ナビを換えただけ”で本格サウンドを満喫可能に!
対してダイヤトーンサウンドナビでは、各スピーカーユニットに対して個別に「タイムアライメント」という機能をかけても、それぞれの信号を1本のケーブルにて伝送できる。そうしてスピーカーの手前に置いたパッシブクロスオーバーネットワークにて信号を帯域分割してやれば、個別に制御されたとおりに各スピーカーを鳴らすことができたのだ。
なのでナビをダイヤトーン サウンドナビへと換える場合には、スピーカーは純正のままで、さらにはスピーカーケーブルも純正配線のままで、純正ツイーターと純正ミッドウーファー(ドアスピーカー)の個別制御を行えた。
つまり、これを導入するだけでハイエンドカーオーディオ的なアプローチで高音質を楽しめる。こうしてダイヤトーンサウンドナビは、カーオーディオ愛好家の人口を増やすことにも大いに力を発揮したのだ。
今回は以上だ。次回は、2010年代に起こった、これとは別の新たな潮流について解説する。乞うご期待。