「最初の一台」ならスズキ『ジクサー250』かヤマハ『MT-25』か!? 最新250ccネイキッド徹底比較

スズキ ジクサー250 & ヤマハ MT-25
スズキ ジクサー250 & ヤマハ MT-25全 39 枚

油冷の単気筒エンジンに味わいがあるスズキ『ジクサー250』と、高い一体感を生み出すハンドリングが魅力のヤマハ『MT-25』。いずれも250ccクラスのネイキッドながら、それぞれ、どんなライダーに向いていて、どんなシチュエーションで楽しめるのだろう。

さて、結論。ジクサー250は、最初の一台をなににするかに迷い、まずはスポーツバイクの世界へ踏み出したいライダーにおすすめ。一方のMT-25は、積極的にスポーツライディングを楽しみつつ、どんどん距離を重ねていきたいライダーにおすすめしたい。街中主体で時々ワインディングの近中距離派ならジクサー250、ワインディング+ツーリングの中長距離派ならMT-25が、それぞれぴったりはまる。

なにかと忙しく、答えだけ求めている人は、ここで離脱してもらっても構わないのだが、せっかくなのでジクサー250とMT-25の間にある、いくつかの違いを記しておきましょう。両モデルのフィーリングに影響する、主要なスペックの差が次の通りだ。

スズキ ジクサー250 & ヤマハ MT-25スズキ ジクサー250 & ヤマハ MT-25

●ジクサー250/MT-25

・車重:154kg/166kg
・軸間距離:1345mm/1380mm
・シート高:800mm/780mm
・エンジン:油冷4ストロークSOHC単気筒/水冷4ストロークDOHC2気筒
・最高出力:26PS/9300rpm/35PS/12000rpm
・最大トルク:2.2kgf・m/7300rpm/2.3kgf・m/10000rpm
・フロントフォーク:正立/倒立
・リアタイヤ:150/60R17/140/70-17

◆「12kgの差」がもたらす真逆の印象

スズキ ジクサー250スズキ ジクサー250ヤマハ MT-25ヤマハ MT-25

誰にでも感じられる、最も大きな違いが、12kg差の車重だ。MT-25の166kgは、それ自体決して重い部類ではないものの、ジクサー250と同一条件下で押し引きすると、プラス1気筒分の手応えがきっちりとある。

また、ジクサー250はハンドルとシート間が近く、ポジションがコンパクトなこともあって、車体を目の前にした時のプレッシャーは皆無。軽く、スリムでホイールベースが短く、アイドリング+αの領域から力強い単気筒エンジンの扱いやすさも手伝って、街中をスイスイと走らせることができる。

ただし、シートはやや高め。またがると腰高になり、幅広のハンドルに覆いかぶさるような上体姿勢になるため、オーソドックスな見た目とは裏腹に、ストリートファイターの要素が濃い。

この点、MT-25は真逆だ。オラついたにらみ顔ながら、ライディングポジションは安楽そのもの。ハンドルとシートの距離にはゆとりがあり、上体は前傾せず、だからといって起き過ぎてもいない、ナチュラルさの手本のような姿勢で乗ることができる。最新モデルはシートやサイドカバーが見直され、足つき性が向上しただけでなく、アシスト&スリッパークラッチを採用。軽快感ならジクサー250、落ち着きならMT-25に分がある。

◆コーナリングでの走りのアプローチ

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ペースを上げ、コーナリングを楽しむシチュエーションでも、両モデルの特徴は基本的にその延長線上にある。ジクサー250は、ヒラリパタリと車体を倒し込め、浅いバンク角でもクルリと旋回。日本のワインディングにありがちな、先の見通しが悪いつづら折れのような道でも緊張感はほとんど強いられない。

MT-25の美点が発揮されるのは、回転数と速度をもう少し引き上げた時だ。バンク角を深めてもスタビリティが崩れず、あるいは増し、狙ったラインをきれいにトレース。車体前後の荷重バランスに優れ、サスペンションやタイヤの動きを感じ取りやすい。

リーン初期が軽やかなジクサー250、旋回時間を長く堪能できるMT-25といった違いもあり、ジクサー250の低いステップ位置(=車体へ入力しやすいがバンク角は浅め)と、MT-25の高いステップ位置(=軽く腰をずらした時に踏ん張りやすく、深いバンク角に対応)もそうした特性にマッチするものだ。コーナリングに対するアプローチが、両モデルでは異なる。

◆装備の質感、アクセサリーの違い

スズキ ジクサー250スズキ ジクサー250

装備やデザインはどうだろう。このクラスのモデルゆえ、特別凝ったものはないが、ジクサー250で目を引くのは、切削加工が施されたホイールの質感の高さ、防振ラバーが配されたステップの快適性、使い勝手がいいグラブバーなどだ。

MT-25は、単なる角パイプではない異形のスイングアーム、USBソケットの装備、スマホとのコネクティビティなどだ。また、控え目ながら気の利いた変更としては、モノクロが反転して視認性が向上したメーター液晶、設置場所の移設で使い勝手がよくなったヘルメットホルダーが挙げられ、細やかにアップデートされている。

ヤマハ MT-25ヤマハ MT-25

冒頭の結論で、「ワインディング+ツーリングの中長距離派ならMT-25」と書いたが、これの根拠になるのが、アクセサリーの充実だ。スクリーンやサイドバッグ、ハンドガード、リアキャリアといった旅アイテムが豊富に用意され、ネイキッドでありながら長距離&高速巡行も想定。これ一台でカバーできる範囲が広い。

◆埋めがたき15万0700円の開き

スズキ ジクサー250 & ヤマハ MT-25スズキ ジクサー250 & ヤマハ MT-25

こうした諸々をかんがみると、直接比較ではMT-25がやや優勢か……と思いきや、それほど単純でもない。そう、車体価格が決定的に違うのだ。ジクサー250は、48万1800円。MT-25は、63万2500円。両モデルの間には、埋めがたき15万700円の開きがある。

やはり冒頭で、ジクサー250を「まずはスポーツバイクの世界へ踏み出したいライダーに」と評したのは、この部分が大きい。リーズナブルだからといって、見過ごせないようなデメリットはなにもなく、むしろ「バイクって楽しいな」と素直に思える要素が散りばめられている。

ジクサー250で2輪の趣味世界の入り口に立つ。MT-25でその先の体験を深める。そのどちらもが、きっと最良の選択になる。

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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