三菱重工マリタイムシステムズは9月11日、岡山県玉野市の本社工場で海上保安庁向け大型巡視船PL「ひろしま」の命名・進水式を実施した。総トン数約3500トンの本船は、2022年度に発注を受けたもので、今後艤装工事を経て2026年度中に海上保安庁へ引き渡される予定である。
ひろしまは、同型の1番船「みやこ」に続く建造で、玉野本社工場では6隻目の3500トン型、通称みやこ型巡視船となる。全長約120.0m、全幅約14.0mの船体を持ち、長期洋上任務に対応できる設計が特徴だ。
この新型巡視船の整備は、2016年12月の関係閣僚会議で決定された「海上保安体制強化に関する方針」に基づくもの。尖閣諸島周辺では2010年代以降、中国公船や漁船の活動が常態化し、日本の領海警備は24時間体制が求められる状況となった。さらに中国は1万トン級の大型巡視船を投入しており、従来の2000トン級巡視船では性能不足との指摘があった。
このため、海上保安庁は3500トン型という新しい規模の船型を導入。より強力な航洋性能と居住性を備え、長期警備や大規模事案への同時対応を可能とした。
従来主力だった2000トン級(やしま型、おきなわ型など)は尖閣警備に多数投入されてきたが、長時間任務では不十分とされていた。新型は、2000トン級の更新と6500トン級(しきしま型、あきつしま型)超大型船との中間を担う存在として位置づけられている。
ネームシップのみやこは2019年10月に三菱重工マリタイムシステムズ(当時は三井E&S造船)玉野工場で進水、2020年2月20日に海上保安庁へ引き渡され、就役した。みやこからひろしままで、6隻の3500トン型巡視船のすべてが玉野工場で進水している。