アメリカのAMAスーパークロス、プロモトクロスの両シーズンを締めくくるプレーオフとして開催されたスーパーモトクロス(SMX)最終戦のラスベガスで、下田丈(Honda)がライバルのヘイデン・ディーガンとの緊張感ある攻防を乗り切り、SMX250クラスを制した。
2025年9月21日/ラスベガス・モーター・スピードウェイ
●Moto1 --- 主導権を握ったのは下田
タイムドクオリファイで下田は1分30秒687の2番手。流れをそのまま決勝へ持ち込み、Moto1は好発進から序盤で抜け出す。背後にはセス・ハマカー、ライダー・ディフランシスコ、そして4番手からヘイデン・ディーガン。
中盤、ディーガンがディフランシスコとクラッシュ、大きくバイクがはね上がる場面がありながらもリスタートして挽回し、終盤には2番手へ。とはいえ下田のペースは揺らがない。後続との差をキープしながらトップを堅持し、そのままチェッカー。下田がまず一勝、2位ディーガン、3位ハマカー。
●Moto2 --- 揺さぶり合いの末に見えた決着
ポイント計算上はディーガンがMoto2を優勝しても下田がタイトルに届く情勢。ディーガンの立場からすればラフファイトを挑んでアクシデントを誘発するしか手がない状況だった。このMoto2も下田は好スタートを切るが、オープニングラップ第2コーナーでディーガンの幅寄せを受けて失速し、ミドルグループからの立ち上がりに。先頭はハマカー、後方からディーガンがポジションを上げていく。やがてディーガンがトップに立つ一方、下田は確実に順位を積み上げ、表彰台圏内へ。
残り時間が10分を切る頃、前後の間合いが詰まる中、下田はペースを落としたディーガンをパス。背後から執拗に通常見られないレベルの激しいパッシングを続けるディーガン、何度もライン交錯が続く異様な雰囲気の中、下田は接触をいなすように対応して落ち着いてラップを重ねる。終盤、いよいよディーガンは下田を巻きこんでクラッシュ、鎖骨を折ってリタイアとなってしまった。この隙にトップはハマカーにスイッチ。下田は3番手をキープしながらも最後のコーナーでトム・ビアルとの攻防を制し、2位でフィニッシュ。総合成績で下田はハマカーを上回り、日本人初、全米モトクロスカテゴリーのプロタイトルを獲得した。なお、ディーガンのラフファイトは危険走行と見なされ5ポイントの剥奪が発表されている。
下田 丈
「正直、今日は本当にストレスの多い一日でした。特に2本目のレースは、改めて見直すべき点が多いですね。たくさん接触もあったけれど、大きなミスなく最後までプッシュし続けられたのはよかったと思います。
そして、シリーズで優勝した初めての日本人ライダーになれたことは、自分にとってすごく大きな意味があります。ここまで来るまでに支えてくれた人たちに誇りを持って報告できますし、この経験が大きな自信にもなりました」
ヘイデン・ディーガン
「チャンピオンを獲るために、本当に全力を出し切りました。SMXのこの新しいフォーマットは、最終戦をとてもタフで厳しいものにします。僕はいつでも110%、限界まで攻めているけれど、実際にその舞台に立たないと、このプレッシャーは言葉では伝えきれません。
ジョー(下田)は素晴らしい走りをしました。彼に心からリスペクトを送ります。とてもタフな相手で、素晴らしいファイターでした。
僕はプロに上がってから、1戦も休まずに走り続けてきました。でも、昨夜の転倒で鎖骨を骨折してしまい、ついに代償を払うことになった。これから手術を受けて、さらに強くなって戻ってきます」
リザルト
Moto1:1位 下田/2位 ディーガン/3位 ハマカー
Moto2:1位 ハマカー/2位 下田/3位 ビアル