今年は夏が暑く、冬の備えには早いというイメージが強いが、季節は確実に進んで冬支度が迫ってきた。そこでスタッドレスタイヤへの履き替えの前に、劣化を防ぐタイヤ保管について知識を蓄えよう。
◆初めての交換ユーザーが悩む「保管」の壁。
降雪地域のユーザーであれば、年中行事としてサマータイヤからスタッドレスタイヤへの履き替えは慣れているだろうが、クルマを買ってからスタッドレスタイヤへの交換が初めてというユーザーや、非降雪地域でスタッドレスタイヤへの交換の経験が少ないユーザーは、タイヤ交換の経験も少なく交換したタイヤの保管をどうすれば良いのかがわからないケースもあるだろう。
中でも注意したいのは、交換したサマータイヤは来春には再び履き替えて使用するので、少しでも良い状態で保管したい点。そこでタイヤに優しい保管方法を実施して、タイヤを長持ちさせるように心がけよう。
◆履き替えの目安と「保管」を意識するタイミング
スタッドレスタイヤへの履き替え時期は、概ね降雪予報の1か月前が目安になっている。カー用品店やタイヤショップなどに行くとスタッドレスタイヤの売り出しが始まるので、冬シーズンの到来を感じさせるだろう。
そこでサマータイヤからスタッドレスタイヤに履き替えた場合、摩耗限界を迎えていて廃棄しない限り、サマータイヤは保管することになる。その保管方法次第でタイヤの状態が変わってくるので、ちょっと気にしてみよう。
◆横積みは要注意!?タイヤの成分流出リスク
スタッドレスタイヤに履き替える場合、タイヤ&ホイールセットで交換する場合も多いだろう。つまり車体から取り外したサマータイヤはタイヤ&ホイールセットで保管することになる。
その時点で、タイヤの保管経験がないユーザーは、タイヤ&ホイールを横にして積み重ねる方法を思いつきがちではないだろうか。これなら保管するための床スペースはタイヤ1本分で済み、省スペースで済ますことができる。
しかし、タイヤ&ホイールを横に積み重ねるのは要注意だ。タイヤはただのゴムではなく、柔軟性などの性能を維持するために油分などの成分が含まれている。これがタイヤを横に積み重ねると、積み重ねたタイヤ&ホイールの重みが下のタイヤに加わり、負担がかかってタイヤ内部の必要な成分が漏れ出してしまうことになりかねないのだ。つまり保管している間に性能が劣化してしまうことになるので要注意だ。
◆ベストは専用ラック! 縦積み/中空ホールドを活用
そこで用意したいのがタイヤを保管するためのラックだ。例えば、4本のタイヤ&ホイールを横に重ねる構造のラックがあり、こちらは各タイヤが接触しないように4本のタイヤ&ホイールを個別にホールドする構造になっている(ホイールにシャフトを貫通させて中空に浮かす構造)。これなら下のタイヤに上のタイヤの重みが加わることがないので安心だ。
またタイヤ単体での保管であれば、縦積み用のラックも用意されている。タイヤのみであればホイールの重みがないため、トレッド面を下にした縦積みでもタイヤへの影響は最小限に抑えられる。このようにタイヤの保管方法を工夫することで、タイヤへの負担を減らして、良い状態をキープしよう。
◆紫外線・湿気・汚れ対策はタイヤカバーで劣化をブロック
一方でタイヤを保管する際には、紫外線やホコリ、雨による影響も見逃せない。そこで、タイヤを直射日光や汚れから守るためにカバーを掛けるのも劣化防止の効果がある。専用のタイヤカバーが販売されているのでこれを利用するのが手軽だろう。
クルマやバイクを保管するときに車体カバーを用いることで各部の劣化が抑えられるのを体感したことがあるユーザーも多いだろう。タイヤもそれと同じ理屈でカバーすることで、保管状態を良くすることができるのだ。しっかりとカバーして保管しておけば、来春にタイヤを取り出して見ると、汚れや劣化などが抑えられているのが目視でもわかるだろう。
◆保管前メンテは洗浄と空気圧を正しく
一方、保管前にタイヤのメンテナンスを実施することもポイントだ。まずは、汚れたまま保管してしまうのは劣化の原因になるので、保管する前にタイヤに付着した泥や大きな汚れはクリーニングしておくと良いだろう。
また保管時は空気圧の調整も忘れずに。車体から取り外した際にはタイヤは指定空気圧が注入されているが、保管時には約半分程度まで空気圧を下げると良いだろう(乗用車であれば1.0 kgf/cm2=100 kPa程度)。こうすることでタイヤへの負担を少しでも軽減できるのだ。
◆数シーズン使うための“保管品質”
タイヤは数シーズン使えるのだが、保管状態が悪いと劣化も早まってしまう。タイヤの性能を最後まで使い切るエコ使いのためには保管時の状態は実は非常に大切。スタッドレスタイヤへの交換までに保管場所や保管方法を決めて準備を進めておくと良いだろう。
土田康弘|ライター
デジタル音声に関わるエンジニアを経験した後に出版社の編集者に転職。バイク雑誌や4WD雑誌の編集部で勤務。独立後はカーオーディオ、クルマ、腕時計、モノ系、インテリア、アウトドア関連などのライティングを手がけ、カーオーディオ雑誌の編集長も請け負い。現在もカーオーディオをはじめとしたライティングを中心に活動中。