昨年、日本でもっとも売れたメルセデスベンツが『GLC』だったのだそう。試乗車はそのうちの「GLC 220d 4MATIC クーペ(ISG)」で、AMGラインパッケージ、同・レザーエクスクルーシブパッケージほかのオプションを装備した状態の車両本体価格1160万7000円の個体だった。
【画像】メルセデスベンツ GLC 220d 4MATIC クーペ(ISG)
◆なるほどクーペはスタイリッシュだ

運転していると自分で走る姿は眺められないが、クーペのスタイルは改めて見るとなかなか流麗。同仕様のGLCと較べると、ホイールベース(2890mm)は共通ながら全長(+45mm)と全幅(+30mm)はクーペのほうが大きく、反対に全高は35mm低い。少しずつのボディサイズの差と、リアセクションのボリューム感の違いで、なるほどクーペはスタイリッシュだ。
後席の頭上空間(コブシが1個か2個の違い)とドア開口の上部の低さ、リアウインドゥの天地の視界の小ささ(クーペのそれは、まるでミッドシップカーのよう)は事実として、実用上の弊害はあまり気にならない。

インテリアはここ最近のメルセデスベンツ流のデザインと質感。インパネに配置された計5個の丸型空調吹き出し口は、ジェット機のエンジンや風洞実験の送風機に形を似せただけあり(?!)、各々、向きを調節した方向にしっかりと空気を向けてくる。また、厚さ25mm(筆者実測値)/756ページものコンパクトで分厚いマニュアルブックが付属しているのも今どきとしては親切だ。
◆気持ちに訴えかける味わいの走りっぷり
そして印象的なのが走りっぷりだ。剛性感が高い……といったハードウエア基準の評価というより、ひとクラス上のクルマのように感じる、ズシリと重厚かつ威風堂々とした、気持ちに訴えかける味わいといえばいいか。
メルセデスベンツの主要諸元表はとにかく複雑だから、注意深く読み違えないようにする必要があるが、試乗車が装着していた複数のオプションのひとつに“ドライバーズパッケージ(AMGラインパッケージ同時装着必須)”があり、これに含まれるアイテムはAIRMATICサスペンションとリア・アクスルステアリングの2点。

実際の走行時に選べるモードでは“コンフォート”がもっとも似つかわしいと思ったが、それでもモード名から想像されるようなフワつく印象はまったくなく、あくまでフラットライド。
その上でアシスト量がやや少な目?とさえ感じるステアリングの操舵フィールと足回り、ひいてはクルマ全体の挙動が完全に一体となり、4MATICだけにいかなる場面でも路面を掴んで離さない安定感とともに、快適でありながら何とも心強い走りを実感した。
◆場面を問わず扱いやすいディーゼルターボ

パワートレインは総じてスムースで、動力性能は必要十分以上。4気筒ディーゼルターボ(145kW/440N・m)をベースとしISGを組み合わせたマイルドハイブリッドだが、場面を問わず扱いやすいのがいい。それと車内/車外のいずれでも静かであることも実感したことのひとつだった。
試乗は300km弱、高速道路と一般道(日常使い)がざっと半々といった内容だったが、試乗車返却時の燃費は16.56km/リットルの数字を確認した(WLTCモードのカタログ値:18.2km/リットル)。

別の機会に非クーペの同仕様(のCore)も試乗済みだったが、試乗会の1枠分だけだったせいか、今回じっくりと試せたクーペほどの“濃い目”の印象は抱けなかった。モデルごとのセッティングに違いがあるかどうかは未確認だが……。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。